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【第44話:ネオン和行灯の輝き!これ、マジでエモすぎん?】

夜の帳が下りた宿場町に、ギャル女将が仕掛けた「ネオン和行灯」の

美しい光が灯ります!

真っ暗闇の江戸時代に爆誕したエモすぎるイルミネーションと、

極上のおもてなしに、武士たちの心が溶かされていきます。

とっぷりと日が落ちて、東海道の宿場町に濃密な夜が訪れた、

まさにその瞬間だった。


 木造の旅籠『丸米屋』の周囲を鉄の規律で

幾重にも包囲していた幕府直轄の武士たち、


そして本陣の几案の奥で冷徹に目を光らせていた老中は、

一斉に目の前に広がった光景に言葉を失い、ただ呆然と立ち尽くした。


「な、なんじゃ……これは……っ。

この世の光景か……⁉」


「おい、空を見ろ! 

夜の闇が……夜の闇がどこかへ吹き飛んでおるぞ!」


「あ、あり得ん……! 

妖術か、それとも狐狸の仕業か⁉」


 ガチの漆黒の暗闇に包まれるのが当たり前だった

江戸時代初期の夜の街道が、いま、あり得ないほどの鮮烈な輝きによって、

文字通り真昼のように、いや、真昼よりも遥かに幻想的に

照らし出されていたのだ。


 それは、お咲が現代の色彩感覚を詰め込み、

宿場町の職人たちと極秘裏に作り上げていた無数の色彩和行灯の光の海だった。


 茜色、若草色、瑠璃色、そして鮮やかな藤色。

色鮮やかな和紙を透過した色とりどりの暖かな光が、

夜の灯籠流しや華やかな祭りの夜のように街道の隅々を優しく、

環境を劇的に変えながら、そしてどこまでも美しくライトアップしていく。


「あはは! みんな、マジで良いリアクションじゃん! 

ねえ、これ、マジでエモすぎん?」


 私が旅籠の軒先で腰に手を当て、

パチンとこれ以上ないくらい軽快にウインクを飛ばす。


お咲の手によって仕掛けられたその光の海は、

戦の緊張感に震えていた武士たちの心を、瞬時に未知の感動へと誘っていった。


「う、美しい……。

我が故郷の祭りの灯りなど、比にもならぬ……」


「おい、見てみろ。

あの行灯の光、まるで生きているかのように優しく揺らめいておるぞ」


「槍を構えるのも忘れてしまうな……。

この光の中にいると、なぜだか頑なだった心がじわりと温かくなる」


「刀を抜いて暴れるなど、この光の下では罰が当たりそうだ……」


 進軍の強行軍で疲れ果て、

泥と埃にまみれていた数千人の武士たちの口から、

次々と感嘆の息が漏れる。

だが、お咲のおもてなしは光の演出だけでは終わらなかった。


「はいはーい、お侍さんたち! 

今日はいっぱい歩いてガチで足パンパンでしょ? 


ウチらの街の旅籠も商店も、全員一致団結して、

みんなをお迎えする準備ガッツリ完了してるからさ! 

お腹空かせて寝不足とか、マジで人生損してるって話!」


 私の大号令に合わせるように、丸米屋だけでなく、

宿場町中の旅籠の玄関が一斉にガラガラと大きな音を立てて開け放たれた。


そこには、商売敵だった大旅籠の若旦那や平旅籠のオヤジたちが、

お咲を絶対に死なせないという一つの想いのもと、

驚異的な連携で用意した『特製の癒やし空間』が広がっていた。


「さあさあ、お武家様方! こちらへどうぞ! 

ふっかふかの極上の寝床をご用意しております!」


「旅の疲れを完全に癒やす、

特製の温かい薬湯も今まさに最高の湯加減に沸いておりますぞ!」


「冷えたお身体を、まずは温めてくだされ! 

お侍様方のための湯殿は、今まさに極上の沸き加減でございます!」


「遠慮はいりませぬ! 

今夜ばかりは槍を置いて、ゆったりとお寛ぎくだされ!」


 おじいちゃん主人やきよ、佐助、

指示を出すチーフのボスが率いる元博徒の用心棒たちが、

数千人の武士たちを、抜かりない差配で次々と館内へとお案内していく。


一歩足を踏み入れた武士たちは、その信じられないほどの快適さに、

瞬く間に骨抜きにされていった。


「おお……、この布団、雲の上にいるかのように軽いぞ……っ。

我が家の煎べい布団とは格が違う!」


「この温かい薬湯……。

じんわりと身体の芯まで染み渡るようだ。

槍を握る手の強張りが、みるみるうちに溶けていく……」


「あのごつごつした用心棒たちが、

これほど細やかに立ち回るとは。

まるで極楽浄土へ招かれた気分だ」


「極楽とは、きっとこのような場所を言うのだな……。

戦うのが馬鹿らしくなってくるぞ」


 さっきまで殺気立って刀や槍を構えていた屈強な武士たちの顔から、

次々と険しさが消え、

うっとりとした、まるで夢見心地のような表情へと変わっていく。


お咲のハッピーバイブスは、国家の軍勢という巨大な暴力を、

内側から完璧に無力化していったのだ。


「ええい、お前たち、何を腑抜けた顔をしておるか……っ!」


 本陣の駕籠の中から、冷徹にその様子を見つめていた老中の男が、

忌々しそうに声を荒らげた。


「敵の謀略かもしれんのだぞ! 

これほど妖しげな光に惑わされおって! 

公儀の旗本たる者が、情けない姿を晒すな!」


「老中様……

しかし、この宿場全体の気配、戦を仕掛けるものとは到底思えませぬ。

まずは中へお入りになり、その目でお確かめを……」


「黙れ! 俺がそのような町娘の誘いに乗る訳が――」


 お付きの武士に強く促され、老中もまた、

お咲に半分引っ張られるようにして誘われるまま丸米屋の館内へと

一歩足を踏み入れた。


その瞬間、内側から強固なプライドが激しく揺らぎ始めるのを、

確かに感じていた。


(な……何だ、この清々しさは……っ⁉)


 老中は、愕然として目を見開いた。

幾千もの人間が出入りしているはずの旅籠の床板は、

埃一つなく、まるで鏡のようにつややかに磨き上げられている。


さらに、鼻腔をくすぐるのは、お硬い公儀の儀式で使われる

重苦しい香の匂いではない。

どこか甘く、それでいて驚くほどに心がふっと軽くなるような、

心地よい特製の香の香りが、優しく館内を満たしていたのだ。


「おじさん、そんなに肩肘張って緊張してたらさ、

美味いご飯も味しなくなっちゃうよ? 


ウチらの本気のおもてなし、まだまだここからなんだから。

じっくり腰据えて体感しなよ!」


「……お前という娘は、本当に公儀の威光を何とも思っておらぬようだな。

この香りといい、床の磨き込みといい、どれほどの準備を重ねてきた?」


「ウチらはお客さんをアゲるためなら、

命がけで最高の仕事するからね! 


ほら、おじさんのための特別席、

あっちにガッツリ用意してあるから!」


「ふん、どこまでも無礼な……。

だが、お前たちのその『おもてなし』とやらの底、しかと見届けてやるわ」


 私は、戸惑う老中おじさんの顔を覗き込み、不敵にニカッと笑ってみせた。

天下の法と規律を絶対と信じ、お上の威信のためにハッピータウンを

更地にしようとしていた最高権力者。


その冷酷な心が、現代の夜行性ギャルが仕掛けた「エモすぎる奇跡の夜」の前に、

早くもじわじわと、音を立てて崩壊の淵へと

追い詰められようとしていたのだった。

光の演出は大成功!武士たちの緊張は完全にほぐれました。

次回、おもてなしのトドメを刺すため、全国の最高級食材を使った

「アゲアゲ宿場飯」による、最大の宴会がスタートします!

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