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【第43話:一晩だけのガチンコ勝負!ウチらの伝説、見せてあげる】

宿場町の存亡を賭けた、一晩限りの「おもてなしガチンコ勝負」が始まります!

これまでに女将が繋いできた全ての絆が一つになり、

老中の軍勢をアゲるための大準備が始まります。全員がカッコいい回です!

静まり返った街道の真ん中で、

数千の槍先が朝日にきらめいていた。


 丸腰のまま立ちはだかる私の言葉を受け、

格式高い漆黒の網代駕籠の奥に座る老中は、


眉間の皺を限界まで深く刻み込みながら、

静かに、しかし地を走る地鳴りのような重々しい語気で口を開いた。


「……一晩、だと? 

たった一晩の饗応で、この俺が、

公儀が定めた天下の規律を曲げるとでも思うてか。


この国を統べる法度を、そこな町娘の戯れ言で揺るがせるなどと、

断じてあってはならぬ不敬。

お前の命など、俺の一言で一瞬にして吹き飛ぶのだぞ」


「曲げるとかじゃなくてさ! 

ウチらのもてなしを体感して、それでもこの街がダサいって思うなら、

大人しくお縄でも縛り首にでもなってあげるって言ってんの! 


どう? お国のお偉い老中様が、町娘一人の提案にも乗れないくらい

肝が小っちゃいわけないよね? 

売られた勝負、まさかビビってスルーするとかナシだよ?」


「貴様……っ! 言葉を慎め! 

老中様に対し、どこまで無礼を働く気だ!」


 周囲を取り囲む旗本武士たちが刀をガチガチと鳴らして激昂するが、

私はそれをひらりと手で制して老中だけを見据えた。


老中の顔が屈辱と政治家としてのプライドで微かに引き攣り、

やがて彼はフンと鼻で冷酷に笑うと、

几案の上に置かれた扇子をパチンと激しく叩きつけた。


「……面白い。

そこまで大言壮語を吐くならば、お前たちの浅知恵など、

我が法と規律の前には無力だと証明してやろう。一晩だけだ。


明日のお天道様が昇る刻限までに俺を納得させられねば、

その首、即座に撥ねて宿場を灰塵に帰す。……者ども、収めよ!」


「老中様ッ⁉ このような不届き者を生かしておくなど……!」


「構わぬ、収めよと言っておるのだ。

一晩で何ができるか、その目で確かめてやろうではないか」


 老中の厳命が下った瞬間、構えられていた数千の槍が一斉に引かれ、

鉄砲隊も火縄の筒先を静かに下ろし、

カチャカチャと甲冑や金属音を立てて整然と列を戻していった。


 一晩だけの滞在許可。首の皮一枚で繋がった究極の猶予。

 勝負が決まったその劇的な瞬間、

私は街道の後ろで生きた心地がせずに待っていた宿場町のみんなへと、

勢いよく振り返った。


「よっしゃ、ウチらのガチンコ勝負開始! 

全員のバイブス合わせて、あのお硬いおじさんたちに

一生忘れられない最高の夜を見せてあげよ!」


 私の大号令が朝の青空へと突き抜けるように響き渡った瞬間、

それまで恐怖に震えていた宿場町の人々の瞳に、一斉にアツい火が灯った。


彼らの表情からは怯えが一瞬にして消え去り、

驚異的な速さで戦闘モード――

いや、これまでにない究極の『おもてなしモード』へと切り替わったのだ。


「――お咲ちゃんの首を、この街を、絶対に死なせはせんぞ! 

みんな,それぞれの持ち場へ急げ! 

丸米屋の底力をお上に見せつけるのじゃ!」


「へいっ! 

旅籠を隅々まで磨き上げやす! 


埃ひとつ残しちゃあ、丸米屋の、姉御の名折れだ! 

床板を鏡代わりにして、お侍さんたちの面を映してやるぜ!」


「佐助、アンタは客室の畳を叩きなさい! 

私は湯殿の床を徹底的に磨き上げるわ! 

お咲ちゃんを絶対に死なせやしないんだから!」


「がってんでお決まりです、きよさん! 

この佐助、箒が折れるまで埃を叩き出してご覧に入れますぞ!」


 おじいちゃん主人の力強い檄が飛び、

きよや佐助をはじめとする従業員たちが、

一斉に雑巾やバケツを手にして旅籠の奥へと走り出す。


廊下を、客室を、湯殿の床を、

まるで鏡のようにピカピカになるまで、命を懸けて磨き上げ始めた。


「おい、野郎ども! 

お国のお偉いお侍様たちのご案内だ! 

一寸の不手際も許さねえぞ! 


背筋を伸ばして、完璧な警護と案内を担当しやがれ! 

ウチらの洗練された身のこなしを、お上の旗本どもに見せつけてやれ!」


「へいっ! お侍さんたち、こちらの宿へどうぞ! 

お荷物、お持ちいたしやすぜ!」



「ふむ……無宿人上がりの分際で、

いささかの滞りもない見事な采配だな。刀の構えにも隙がない」


「当たり前でさぁ、ウチらの女将さんのためなら、

お上だろうが何だろうが最高の笑顔でもてなすって決めてるんでね!」


 深い藍色の粋な着物をビシッと着こなしたチーフのボスが、

太い声を張り上げて吼える。


更生した元博徒の用心棒たちは、

かつて街道の裏世界で培った鋭い目配りと隙のない迅速な身のこなしを


フルに活かし、数千の軍勢の武士たちを、

一糸乱れぬ完璧なお案内と手引きで各宿へと誘導していく。


「……フン、俺の出番だな。あのお嬢さんを死なせるわけにはいかん。

我が日陰の抜け路を総動員し、日本中の極上の食材を今すぐここへ集めるのだ! 

お上を唸らせる美味いもんを、爆速で揃えろ!」


「頭、大坂からの早舟が今ちょうど川港に着きやした! 

最高の鯛と海の幸が届いてやす!」


「よし、そのまま丸米屋の厨房へ叩き込め! 

京の白味噌も、加賀の珍味も、一刻も遅れることは許さん!」


 さらに、先日降伏したばかりの闇の元締めおじさんも、

負けじと不敵な笑みを浮かべて立ち上がった。


彼の差図ひとつで、全国に張り巡らされた秘密の物流網がフル稼働する。

極上の食材が、信じられないスピードで

次々と丸米屋の厨房へと運び込まれていった。


「お咲、アンタだけの宿場町だと思ったら大間違いなんだからね! 

ウチ派の大旅籠の底力、今ここで見せてあげるわ! 

布団も膳も、一番上等なものを惜しみなく貸し出してあげる!」


「そうだ! 平旅籠のオヤジたちの意地を見せてやる! 

最高のものを全部丸米屋に集めろ! 


この街の女将に、これ以上大きな顔はさせねえが、

お上に潰されるのはもっと御免だ!」


「若旦那、こっちの布団も運ぶかい⁉」


「当たり前だろ! 出し惜しみすんな、全部丸米屋へ回せ!」


 かつてはライバルだった大旅籠の若旦那や、

宿場町中の平旅籠のオヤジたちまでもが、

商売敵としての損得の垣根を完全に越えて一致団結していた。


 身分の違いも、過去の因縁や商売敵としての確執も、

今のこの瞬間には何の意味も持たなかった。


ただ一つ、「自分たちを救ってくれた最高のギャル女将を

絶対に死なせない、このハッピータウンを絶対に守り抜く」という、

あまりにもアツく固い想い。


その一つの願いのもと、宿場町全体がこれまでにない

完璧な息の合った連繋を発揮し、

最高権力者である老中とその軍勢を迎えるための、

前代未聞の「奇跡の夜」を作り上げていく。


「ヤバっ……みんな、マジで神クオリティすぎなんだけど! 

バイブス最高潮じゃん!」


 それぞれの持ち場で必死に、

かつ生き生きと動くみんなの背中を見つめながら、

私は胸の奥を熱く震わせ、拳をぎゅっと握りしめた。


どんなにお硬いお上の法度だろうが、数千の槍だろうが、

この街全員のハッピーが合わさった団結力に勝てるわけがない。


宿場町全体を包み込む圧倒的なおもてなしの熱量が、

冷徹に構えていた公儀の軍勢の殺気へを、

みるみるうちに華やかで温かい空気へと塗り替えていく。


老中おじさんの眉間のシワを完璧にほぐしてアゲアゲにする、

一晩だけのガチンコ勝負の幕が、

いま、最高潮の熱量で切って落とされるのだった。

街が一丸となって動く姿はまさに感動的。

次回、ついに老中とその軍勢のために用意された、

江戸時代初期の常識を遥かに超越した「極上の宴と夜」の幕が上がります。

ハッピータウンの本気をどうぞ!

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