【第41話:女将は俺たちが守る!みんなのバイブスに大感動】
今回は涙なしには読めない熱い絆の回です!
女将を守るために結集した宿場町全員の覚悟に大感動。
しかし、ギャル女将は仲間を危険に晒さないため、一人で前に進み出ます。
女将の座長マインドをご覧あれ!
宿場町を地響きとともに埋め尽くした、
押し寄せる何千もの幕府の軍勢。
朝日を浴びてギラギラと冷酷に研ぎ澄まされた無数の槍先が、
冷たい朝風の中で妖しく光っている。
最高権力者である老中の
「天下泰平の掟を乱す不届きな宿場を成敗せよ、すべてを更地にせよ」という
非情な大号令が街道に重々しく響き渡り、
土埃を踏み締める武士たちの足音が、
じわじわ、じわじわと、丸米屋のすぐ目の前まで迫っていた。
宿場の空気は一瞬にして凍りつき、
誰の目にも終わりが迫っているように見えた。
「おい、そこを退けっ!
公儀の進軍の邪魔をする者は、いかなる理由があろうとも、
誰であれ容赦なく切り捨てるぞ!」
最前列の屈強な武士が鋭い声を張り上げ、
容赦なく鋭利な槍先を突き出す。
だが、その張り詰めた最前線へ、
武器も持たずに丸腰のまま一人で歩み出そうとした私の前に、
突如として激しい足音と共に、
いくつもの人影が猛烈な勢いで飛び込んできた。
「――待ちなっ!
これ以上、お咲ちゃんに一歩でも近づくことは、
この私が絶対に許さないわ!」
「お嬢様の前を汚す不届き者どもめ、
この佐助が、命に代えてもお通しいたしません!」
私のすぐ目の前に両手を大きく広げて立ちはだかったのは、
かつて死んだような目をして、
ただ日々の義務だけで無気力に働いていた
旅籠の従業員たち――きよと佐助だった。
きよの手には厨房から慌てて持ち出した大きな木製の麺棒が、
佐助の手には使い古した竹箒が、
折れんばかりの力で固く握りしめられている。
武士が構える本物の刀や鋭い槍の前には
あまりにも無力な、ただの日常の道具。
それでも、必死に私を背中で庇う二人の目には、
お上を恐れる怯えなど微塵も浮かんでいなかった。
「お前たち……どうして……っ⁉
危ないから下がって!」
「お咲ちゃん、あなたが私たちに教えてくれたんでしょう?
義務だけで生きるんじゃなく、
誰かのために笑って生きることの素晴らしさを。
今度は、私たちがあなたを守る番よ!」
「ハッ、その通りだぜ、姉御ォ!
俺たちのこの命、とっくに姉御に拾われたも同然なんだ!
公儀の軍勢が何ぼのもんじゃい!
姉御に指一本触れさせるくらいなら、
ここで肉ごと木っ端微塵の蜂の巣になってやらぁ!」
ドタバタと大きな足音を立てて
きよたちの横に並んだのは、
深い藍色の粋な着物を着こなしたチーフのボスと、
お咲のハッピーマインドによって更生した
元博徒の用心棒たちだった。
彼らは旅籠のロゴが誇らしげに入った
特製の十手を強く握りしめ、
数千の槍を前にして、
まるで飢えた狼のような
鋭い牙を剥き出しにして吼えている。
地獄の修羅場をくぐってきた彼らの気迫が、
最前線の空気を激しく揺るがした。
「き、貴様ら……っ!
お上の軍勢を前にして、正気を失い、狂ったか……っ!」
進軍を阻まれた公儀の武士たちが、
その異常なまでの身を賭した気迫に圧倒され、
一瞬だけじりと足を踏み外した。
だが、ハッピータウンの底力は
それだけでは終わらなかった。
街道の左右、家々の隙間から、
さらに多くの足音が怒涛の勢いで押し寄せてきたのだ。
「おのれ、
お上の権力を笠に着て、我らのハッピータウンを潰そうなどと、
言語道断であるっ!
この街の新しい法度は、公儀の押し付けではなく、
お咲殿の温かい笑顔によって守られているのだ!」
「はあ?
役人のくせに何熱くなってんのよ、アンタ。
……でも、まぁ、お咲。
勘違いしないでよね。
別にアンタを助けるわけじゃないんだから。
私はただ、私の愛するこの賑やかで
アゲアゲな宿場町を、
頭の固いおじさんたちに
壊されたくないだけなんだからね!」
驚いたことに、そこにはかつて私を
法度で厳しく取り締まろうとしていた、
あのツンデレな宿場役人の男や、
ライバル関係だった大旅籠の若旦那の姿まであった。
彼らは宿場の重い帳簿や大算盤を
まるで武器のように高く掲げ、
堂々と誇らしげに武士たちの前に立ち塞がっている。
「……ククク。
日陰の王であったこの俺が、
まさかお上の軍勢と真っ正面から対峙する日が来るとはな。
だが、お前たちの言う通りだ。あのお嬢さんの放つ光を消させはせん。
我が全国の物流網を総動員してでも、
このハッピータウンを潰させはしない!」
さらにその背後からは、
先日お咲のバイブスに完全降伏して仲間になったばかりの、
あの闇の元締めおじさんまでが、
大勢の配下の無宿人たちを引き連れて、
不敵で哀愁のある笑みを浮かべながら合流してきたのだ。
「みんな……っ!」
武士も、町人も、かつて悪党だった者も、
身分の垣根を完全に越えて。
従来の重苦しい身分の掟やしきたりを完全に無視して。
この宿場町の全員が、
ただ一人の現代人である私のために、
命を懸けて、一致団結して大きな盾になろうとしてくれている。
かつて孤独に、
眠らない街の夜をたった一人でサバイブしていた私にとって、
これほどまでに真っ直ぐな、
自分のために命を投げ出すほどの愛を向けられることなんて、
人生で一度だってなかった。
胸の奥がガチで熱くなり、
視界がみるみるうちに熱い涙で滲んでいく。
「ヤバっ……みんな、マジで最高の家族じゃん……っ!」
大感動の大きな波が、私の心を激しく激しく揺さぶる。
みんなの身体から放たれる、圧倒的にアツいハッピーのバイブスが、
宿場町全体を包み込み、
幕府の軍勢の放つ冷徹な殺気すらもじわじわと力強く押し返し始めていた。
だが――だからこそ、私は彼らを絶対に傷つけさせない。
私は深く息を吸い込むと、
目から溢れそうになる涙をグッと堪え、
ニカッといつもの無敵の笑顔を咲かせた。
そして、きよやチーフ、元締めたちの前に、
自ら凛とした足取りで一歩進み出た。
笑顔で両手を大きく広げ、愛する仲間たちを優しく、
だが断固とした強い態度で制してみせる。
「ちょっとみんな、そこまで!
ストップストップ!」
「ええっ⁉
あ、姉御、なんで止めるんですかい!
ウチらが盾になれば、お上だっておいそれとは……!」
「みんなの気持ち、マジで超嬉しい!
本当に心の底から感動した!
……でもさ、ウチの大事なマブダチを、
あんな頭の固いおじさんたちの槍で傷つけさせるわけないじゃん。
そんなの、ウチのプライドが許さないから」
お咲の突き抜けるように明るい声が、
張り詰めていた街道の重苦しい空気を
パッと華やかに塗り替える。
彼女は振り返り、数千の軍勢の遥か奥、
格式高い漆黒の駕籠の中で冷酷にこちらを睨みつけている
最高権力者・老中に向かって、まっすぐに鋭い視線を定めた。
「ここはウチの現場だからさ。
ウチが責任持って、あのお硬いおじさんたちを
全員アゲアゲにして戻ってくるわ!」
「お、お咲ちゃん……!
一人で行くなんて、いくらなんでも無茶よ!」
「無茶じゃないって!
ウチのギャルバイブス、舐めんなし!
じゃあ、ちょっと行ってくるね!」
お咲は大きな前髪をバッと力強く跳ね上げると、
引き留めるみんなの声を背中で軽快に聞き流しながら、
武器一つ持たない丸腰のまま、
ゆっくりと、しかし確実な足取りで、
最高権力者の老中が待つ軍勢の真っ只中へと
一人で歩み出ていくのだった。
数千の鉄の筒先と槍先が、一斉に彼女一人へと向けられる。
ハッピータウンの未来をかけた、過去最大の無敵の交渉(?)劇が、
ついにここに、大きな火蓋を切って落とされるのだった。
みんなの絆が熱すぎます……!
丸腰で老中の前に向かったギャル女将、次回はついに最大にして最後の試練。
冷酷な天下の最高権力者に向けて、伝説の「ウインク」とあの一言を放ちます!




