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【第39話:毎日がお祭り騒ぎ!でも、江戸の超エラい人が見てる⁉】

ついに最終章である第4部が開幕です!

裏社会すらホワイト化し、お祭り騒ぎのハッピータウン。

しかし、その圧倒的な繁盛っぷりが、

ついに江戸幕府の最高権力者「老中」の目に留まってしまい……⁉

丑三つ時の濃密な暗闇を激しく裂いた、

あの最凶の刺客との死闘。


そして、東海道筋の裏街道を恐怖で牛耳っていた

闇の一味との息詰まる対峙。


それらすべての修羅場を無敵のギャルバイブスで乗り越え、

悪党たちを誰一人傷つけることなく完璧に更生させてみせた旅籠『丸米屋』。


 現代からタイムスリップしてきた私――お咲の放った、

斬新でどこまでもポジティブなギャルマインドの思いつきによって、

宿場町の景色は一変していた。


かつては密売人の隠れ路や、

人殺しの逃げ道としてコソコソ隠れて使われていた

日陰の世界の秘密の流通網は、

今や日本全国の美味いものをどこよりも早く一手に引き受ける

『仕入れ爆速ルート』へと、劇的な表稼業への大転換を遂げていたのだ。


「おい、そこの荷枠を降ろすのを手伝いな! 

大坂の港から今朝一番の早舟と快速の馬背で届いたばかりの、

ピチピチの鯛だぞ! 

目玉がまだ生きてやがる!」


「こっちには京の都から届いたばかりの

上質な白味噌があるわよ! 


風味が落ちないうちに、

早く厨房のきよさんのところへ運んでちょうだい!」


「へいへい、合点だ! 

これだけ上等な食材が毎日揃うとなりゃあ、

厨房の包丁捌きにも気合が入るってなもんだぜ!」


「もたもたするなよ! 

街道の向こうからも、

さらに三頭の馬が青物を積んで走ってきてるんだ。

今のうちに荷床を空けておきな!」


 うっすらと朝靄の立ち込める東海道の街道筋には、

まだお天道様が昇りきらないうちから、

威勢の良い売り子や元博徒の用心棒たちの

太い声が気持ちよく飛び交っていた。


荷枠を背負った馬が何頭も行き交い、

青物や新鮮な海の幸といった色とりどりの極上食材が、

丸米屋の前に山のように積み上げられていく。


 驚くべきことに、そこには江戸時代初期という、

重苦しい身分制度が国を支配していたはずの時代において、

絶対にあり得ない光景が広がっていた。


お上の定めた四民の掟をすっかり忘れ、

武士も商人も農民も、

誰もが同じお座敷で対等に笑顔で並んでいた。


そして、丸米屋の料理人たちが

腕によりをかけた極上の出汁が香る特製御膳を囲み、

身分の垣根を越えて楽しげに歌い踊っているのだ。


「おいおい、お侍さん、そっちの煮物もガッツリいきなよ! 

大坂の美味い出汁が染み込んでて最高だぜ!」


「おお、これは美味い! 

町人と同じ膳を囲むなど最初は戸惑ったが、

この美味い飯と美味い酒の前では、

そんな硬いことはどうでもよくなってしまうな!」


「がはは! 

そうだろ? 

身分がどうとか、お上の言うことを気にしてたら、

美味い飯の味が落ちちまうって話よ!」


 お上の定めた重苦しい身分の掟や、

日陰の暗い法度がまるで嘘のような、毎日がお祭り騒ぎのユートピア。


それこそが、名実ともに天下無双の進化を遂げた、

お咲たちの愛する宿場町の、最高にハッピーな日常だった。


「お疲れ様でーす! 

みんなマジで神がかったいい動きじゃん! 


はい、そこの荷物を運んでくれたお兄さんも、

景気よくハイタッチ!」


「へいっ! 

姉御、お疲れ様でごぜ居やす! 


今日もウチらの仕入れは爆速、

街道のバイブスも朝から最高潮でさぁ!」


 私は、深い藍色の粋なお揃いの着物を

ピシッと着こなしたチーフのボスや、

元博徒の用心棒の男たちと

次々にパチン、パチンと笑顔で元気に手を打ち鳴らした。


「それにしてもさ、

マジでこの街、今一番アガってるっしょ! 


旅人さんもみんなニコニコだし、

バイブス最高すぎなんだけど!」


「本当にお咲ちゃんの言う通りじゃ。

この丸米屋の帳場に座っておるだけで、

毎日がまるでお天道様の祭りの真ん中にいるかのように

心が躍るわい。

長生きはしてみるものじゃな」


「おじいちゃんが毎日笑っててくれるのが、

ウチにとっても一番の喜びだし! 


きよさんも佐助も、給仕のスピードガチで神がかってない?」


「もう、お咲ちゃんったら人使いが荒いんだから! 

でも、お客さんたちがこんなに嬉しそうに食べてくれるなら、

いくらでも走り回れちゃうわね!」


「拙者も、この賑わいを守るためなら、

いくらでも膳を運びますぞ。

お咲殿の笑顔が、この宿場の何よりの宝ですから!」


 おじいちゃん主人も白髪の頭を嬉しそうに何度も撫でながら、

目を細めてシワだらけの顔で笑う。


きよも佐助も、楽しそうなお客たちの給仕に走り回りながら、

その顔には充実した笑顔が弾けていた。


 しかし――その眩しすぎるほどの活気と、

当時の厳しい身分秩序を完全に無視した

自由すぎる宿場町の「不穏な噂」は、ウチらの知らないところで、

ついに江戸幕府の最高中枢にまで届いてしまっていたのだ。


 宿場町から遥か離れた地。

 重厚な石垣と巨木に囲まれた、巨大な江戸城の奥深く。

 一切の日の光を拒絶するかのような薄暗いお座敷の中で、


眉間に深い、深い皺を寄せた頭の固い老老中が、

冷酷な目で一通の報告書を睨みつけていた。


部屋を照らす蝋燭の炎が、彼の冷徹な横顔を不気味に浮かび上がらせる。


「……東海道の小宿にて、民が群れて身分を忘れ、

日々浮かれ騒いでおるだと?」


 老中の低く冷え切った声が、

静まり返った御殿の床板を細かく震わせる。


彼の前には、隠密の忍びが件の宿場町に潜入して

事細かに書き記した、

丸米屋の異常なまでの繁盛ぶりを伝える巻物が広げられていた。


「はっ。

旅籠の女将を名乗る正体不明の小娘が先頭に立ち、

元博徒の無宿人どもを用心棒として従え、

独自の規律で民を惑わしているとのことにございます。


武士が町人と肩を並べて酒を酌み交わし、

農民がお上を恐れることなく笑い転げる……

そのような奇妙な風情が、日増しに膨れ上がっておる模様。

誰もがその小娘を『姉御』と呼び、慕っております」


「独自の規律だと? 

笑わせるな。

天下の法度を差し置いて、一介の町娘が民を従えるなど、

あってはならぬこと」


「さらに、

その小娘は時折、聞いたこともない異国の妖術の言葉を使い、

民の心を完全に掌握している様子。


このまま放置すれば、

東海道の秩序そのものが根底から揺らぎかねませぬ」


 影の中から這い出てきた隠密の男が、

平伏したまま微かに声を震わせて報告を続ける。


老中は報告書を冷酷に丸めると、

御机の上へと乱暴に叩きつけた。


「不届き千万。

お上の定めた四民の身分秩序を乱し、

天下の法度を軽んじる宿場など、

公儀の威信にかけて断じて許容できぬ。


そのような風紀の乱れ、

せっかく始まった徳川の天下泰平の世には、

害悪以外の何物でもないわ」


「……では、直ちに手入れを?」


「うむ。

民がこれ以上、その偽りのユートピアとやらに惑わされ、

お国を足蹴にする前に、根こそぎ叩き潰さねばならん。


公儀の軍勢を差し向け、

そのギャル女将とやらを捕らえて江戸へ連行せよ。


逆らう者は誰であれ容赦なく切り捨て、宿場ごと更地にせよ」


 老中は冷酷にそう呟くと、

鋭い視線を闇の向こうへと向けた。


ハッピータウンの存在そのものを根底から揺るがす、

これまでにない国家規模の巨大な危機が、

いま、静かに幕を開けようとしていた。


 その頃、何も知らない私は、

おじいちゃんたちの前でこれからの街の計画を楽しそうに語っていた。


「ねえねえ、

次はさ、宿場町全体に

『年中無休のナイトプール付き露天風呂』とか作っちゃう? 

そしたらもっとみんなアガると思うんだけど!」


「ない、とぷーる……? 

またお咲ちゃんが新しい妖術の言葉を使い始めたぞ。


それは一体、いかなる建物じゃ? 

夜に泳ぐ風呂など、聞いたこともないわい」


「妖術じゃないってば! 

夜でもお洒落な灯りをいっぱい灯してさ、

お国(幕府)のエラい人たちも、仕事のストレス忘れて

みんなでハッピーになれちゃうような最高の癒やしの場所にするの! 


毎日お仕事頑張って顔が怖くなってるおじさんたちを、

ウチらのバイブスでおもてなしするんだから!」


「がはっ! 

姉御、そりゃあ最高だ! 


お国のお偉いお奉行様や老中様が来たら、

俺たちの特製の十手でおもてなししてやりやしょう! 


極上の湯加減で、

お上の頑固な頭もふにゃふにゃにしてやるってなもんですかい!」


「そうそう、チーフ分かってるじゃん! 

お堅いおじさんたちこそ、

そういうハッピーな場所が必要なんだって!」


 チーフのボスが太い胸をドンと叩いて豪快に笑う。

おじいちゃん主人も呆れながらも楽しそうに頷いていた。


 だが、ウチらのその最強のハッピーマインドが、

江戸城の頭の固いおじさんたちの

冷徹な怒りと真っ正面から激突する日は、

すぐ目の前まで迫っていたのだった。

お読みいただき感謝です!

毎日ハッピーな街に、国家権力の影が迫ります。

次回、老中が「街を更地にせよ」と、

ガチの武士の軍勢を引き連れて大弾圧にやってくる、最大のピンチが訪れます!

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