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【第34話:やられたら倍返しっしょ!闇のアジトへガチ殴り込み】

今回は第3部の怒涛のクライマックスへ向けて、ギャル女将が闇の組織の本拠地へガチの殴り込み!

元ヤクザの用心棒たちを従えて大門を蹴り開ける、最高に男前(?)な女将の姿をご覧ください!

「――おい。これで全部だな? 

まだ隠していることがあれば、次こそ容赦はしねえぞ」


 旅籠『丸米屋』の片隅に佇む、

薄暗く埃っぽい物置小屋のなかで、

地を這うようなボスの低い声が低く重々しく響き渡った。


 冷たい板間の床に転がされ、

頑丈な麻縄で身動きが取れぬようぐるぐる巻きにされた漆黒の暗殺者は、

額に脂汗をびっしりと浮かべながら、

完全に観念したように小さく首を縦に振った。


そのすぐ目の前には、ウチの可愛い従業員たちや、

せっかくハッピータウンとして盛り上がり始めた大切な宿場町を

暴力で脅かそうとした卑劣な敵に対し、

かつてないほどガチで激怒している私が、腕組みをして仁王立ちで立っていた。


「……森の奥、街道を外れた先にある……、古びた大寂寺。

そこが、我ら日陰の者を裏で一手に束ねる総割元

――闇の元締めの本拠にございます。

俺のような刺客は、すべてあの場所から差図を受けて動いておるのです」


「よし、綺麗に吐いたね。

お疲れ様でーす」


 私は腰に両手を当てて、ふんと満足げに鼻を鳴らした。


「お咲ちゃん! 

頼むから、頼むからもう一度だけ頭を冷やして考え直しておくれ! 

相手はこの東海道の裏に潜む日陰の利権をすべて牛耳る、

本物の恐ろしい巨大な悪党の一味なんじゃ! 

そこへこちらから無防備に赴くなど、

それこそ公儀の御法度をも恐れぬ無法の極み、命がいくつあっても絶対に足りんわ!」


 帳場の奥から生きた心地がしないといった様子で

大慌てで飛び出してきたおじいちゃん主人が、

涙目で私の着物の袖をちぎれんばかりに引っ張りながら、必死の形相で引き止めてくる。


その背後では、きよも佐助も、完全に顔を真っ青にしながら

「お嬢様、さすがにそれは無茶です……」

「相手は人殺しの集まりですよ……」

と、歯の根をガタガタと激しく鳴らし続けていた。


「何言ってんのおじいちゃん! 

ウチの可愛い従業員や、

毎日遠くからわざわざウチの宿に泊まりに来て頑張ってくれてる大事な旅人さんたちに

手を出そうとする奴とか、


マジで絶対に許さないんだけど! 

ウチのシマでコソコソ悪さしてんじゃねーよって話!」


「お、お咲ちゃん……っ」


「やられたら倍返し、

いや、ウチらの言葉で言えば『アゲ返し』っしょ! 

あっちが闇のなかからネズミみたいに

コソコソ汚く仕掛けてくるって言うならさ、


ウチらの最強のポジティブバイブスを、

その本拠地へ直接ガチで殴り込みにいって叩き込みにいくよ! 

みんな、準備はいい⁉」


 私が物置小屋の天井に向けて拳を力強く突き上げて

そう宣言した瞬間、淀んでいた小屋の空気が一変した。


 私の背後にずらりと影のように控えていた、

深い藍色の粋なお揃いの着物に身を包んだセキュリティ集団

――元博徒の男たちの目に、かつて街道筋を恐怖と暴力だけで支配していた頃の、

鋭くぎらついた狼のような牙が鮮烈に蘇ったのだ。


彼らの胸の中にある「男の面目」が、

ギャルの放つ圧倒的な熱量によって完全に引火した瞬間だった。


「……ハッ、最高だ。

姉御の仰る通りでごぜ居やす。


売られた喧嘩を黙って買って、

ここで引き下がるようじゃあ、野道の男の面目が完全に立ちやせん!」


 セキュリティチームのチーフとなったボスが、

真鍮の鍔に施されたウサギの細工をキラリと妖しく光らせながら、

愛刀の柄をがっしりと握りしめ、不敵に口元を歪めた。


「お頭! 

いや、チーフ! 

俺たちもいつでも行けやすぜ! 

刀の錆にしてやりやしょう!」


「あの温い温泉を汚そうとした薄汚い闇の元締めどもに、

丸米屋の、いや、姉御の本当の恐ろしさを

骨の髄まで植え付けてやりやしょう!」


「バカ野郎、お前たち! 

お前らのその命はな、すでに姉御に拾われたも同然なんだよ! 

姉御のためなら、この命、

旅籠の湯殿にポイして捨てる覚悟でとことん一致団結しやがれ!」


 かつての汚らしい無精髭がきれいに消えた元手下の男たちが、

今や物言わぬドスの代わりに、

私の旅籠の特製ロゴが金箔で入ったお揃いの十手を強く握りしめ、

野太い声を揃えて腹の底から吼えた。


日陰の世界でしか生きられなかった本物の無法者たちが、

現代の無敵のギャルマインドによって

『姉御を守る最強のボディーガード』として完全に覚醒し、

生まれ変わったのだ。


「おっ、みんなマジでアツいじゃん! 

そのバイブス、最高にアガるわ! 

ウチらの団結力マジ無敵だから! 

よし、全員カモン!」


 私は大きな前髪をバッと力強く跳ね上げると、

おじいちゃんたちの制止の声を背中で聞き流しながら、

夜の街道へと堂々と一歩を踏み出した。


 丑三つ時の漆黒の闇に包まれた不気味な街道を、

深い藍色の粋な衣装を身に纏った最強のセキュリティ集団が、

小気味よい木履の音を夜の静寂に響かせながら、

まるでお祭りの華やかな行列のように威風堂々と突き進んでいく。


恐怖で身をすくめていたはずの宿場町の夜の冷気が、

ウチらの放つ圧倒的なポジティブエネルギーによって、

みるみるうちにアゲアゲな空気に塗り替えられていった。


 しばらく夜の街道を力強く歩き、生い茂る深い森の奥へと分け入った。


 うっそうとした木々の隙間から見えてきたのは、

物々しい不気味な暗雲が立ち込め、

幾重もの松明が赤黒く妖しく揺れる闇の元締めの巨大な本拠地

――古びた大寂寺だった。


その重苦しい門前には、

抜き身の匕首(あいくち)を手に目を光らせている、

凶悪な門番の無宿人たちが、

こちらの不審な大足音に気づいてぎらついた視線を鋭く向けてくる。


「何奴だてめえら! 

ここは日陰の総割元の御用達だぞ、堅気の者が立ち入る場所ではねえ! 

命が惜しくば今すぐ失せろ!」


「――お疲れ様でーす。

ちょっとそこ、邪魔だから退きな。

ウチら、これから中のボスに用事あるからさ」


 私の言葉が終わるか終わらないかの瞬間、

チーフとなったボスの丸太のように太い右腕が、

夜風を切るような爆速の勢いで門番の胸元へと突き出された。


「がはっ⁉」


 凄まじい肉体と肉体が衝突する破裂音と共に、

大男の門番たちが一瞬にして宙を舞い、

地面へと叩きつけられて白目を剥いた。


間髪入れずに、

元手下たちの十手が他の無法者たちの手首を

パカパカと容赦なく叩き落とし、

完全に武器を無力化して、秒で路頭へと転がしていく。

その流れるような無駄のない連携は、まさに最強の戦闘集団そのものだった。


「よし、ウチのセキュリティ、マジで神クオリティ! 

期待を裏切らないね! 

じゃあ、挨拶代わりにいくよ!」


 私は本拠の、これでもかと頑丈に閉ざされた

巨大な木製の大門の真っ正面に立つと、

腰にぐっと力を込め、お膳を運ぶときのようにしっかりと体幹を意識して、

右足にすべてのパワーを込めてドカンと大門を蹴り開けた。


 バリィィィンっ!! ズドォォォンっ!!


 凄まじい破壊音と地響きと共に、

分厚い木製の間木戸と門扉が、内側へと豪快に粉々に吹き飛んだ。


 静まり返っていた大広間に響き渡る圧倒的な轟音のなか、

真っ白な土煙を全身に浴びながら、

私は両手を腰に当てて、奥の豪華な脇息にふんぞり返っている闇の元締めの老人たちを

真っ直ぐに力強く指さした。


「おい! 

闇の元締め、とっとと出てきなよ! 

挨拶代わりにウチらの最高のハッピーバイブス、持ってきてあげたからさ!」


 蝋燭の火が激しく揺れる暗い大広間に、

私の突き抜けるように明るいギャル語が手厳しく響き渡る。


 日陰の世界を支配してきた巨大な一味の老人たちは、

突如として頑丈な大門を素足同然で蹴り破って現れた謎の町娘と、

その背後に控える圧倒的にキリッとした深い藍色の最強の用心棒たちの姿を前に、

あまりの想定外の事態に完全に言葉を失って、

ただただ呆然と石のように硬直するしかなかった。

大門をブチ破って突入した女将一行。

待ち受けていたのは、無数の銃や刃物を構えた闇のギルドの悪党たちと、冷酷な「闇の元締め」でした。

次回、絶体絶命の包囲網の中で、女将のブチギレ一喝が響き渡ります!

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