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【第33話:闇のギルドの刺客?夜行性ギャルを舐めんなし!】

暗闇に乗じて潜入するプロの暗殺者!

しかし、対するギャル女将は渋谷の夜を徹夜で遊び明かした「超・夜行性」。

江戸の暗闇を逆手に取った、ギャル流の防犯トラップが火を噴く頭脳(?)戦です!

丑三つ時。草木も眠る、深い、深い底なしの漆黒の闇が、

宿場町を丸ごと呑み込んでいた。


 現代の東京のように夜を眩しく照らす街灯も、

眠らない渋谷の街を彩るきらびやかな看板の明かりも、

この江戸時代初期の夜には存在しない。


ひとたび部屋の油灯をフッと消してしまえば、

そこにあるのは文字通り一寸先も見えない「ガチの暗闇」である。


窓の外の街道からは、昼間のあの爆発的な大賑わいが

嘘のように人通りが完全に途絶え、

ただ冷たい夜風が建物の隙間をヒューヒューと不気味に鳴らしながら

通り抜けていくだけだった。


昼間の活気が嘘のように静まり返った木造の旅籠は、

まるで巨大な闇の海にぽつんと浮かぶ、

一艘の無力な泥船のようでもあった。


 しん、と不気味に静まり返った旅籠『丸米屋』の、

夜露に濡れた真っ黒な屋根瓦の上を、一つの不吉な黒い影が滑るように動いた。


 漆黒の装束に身を包んだ男の目は、

光を完全に失った闇の中でも怪しく据わっている。


日陰の世界を裏から牛耳る巨大な組織――

いわゆる日陰の総割元が送り込んできた、裏社会最凶と謳われる冷徹な暗殺者だ。


彼の任務は二つ。


裏切り者となって堅気の犬に成り下がった、あの元博徒の頭の抹殺。


そして、この生意気な宿場町を新奇な発想で裏から動かしている元凶――

あのギャル女将の暗殺である。


男は懐に忍ばせた鋭利な刃の冷たい感触を確かめると、

音もなく不敵な笑みを浮かべた。


(フン……。

いくら元の頭や手下どもが粋な着物に身を包み、

用心棒気取りで夜の街道を見回っていようが、

この漆黒の闇のなかでは何の意味もなさぬ。

お上の役人すら恐れるこの夜の暗闇こそが、我が独壇場よ)


 暗殺者は、長年仕込まれた蜘蛛のような身のこなしで、

音もなく天井裏のわずかな隙間から薄暗い廊下へと舞い降りると、

冷酷な笑みをその口元に深く浮かべた。


足音ひとつ立てず、すり足で標的である主人公の寝所へと確実に、

そして一歩ずつ近づいていく。


 一歩、また一歩。


暗い廊下の古びた木板を慎重に踏み締め、

手元で静かに抜き放たれた細身の刃が、

雲の切れ間から覗くわずかな星明かりを吸って冷たく妖しくきらめいた。


熟練の暗殺者にとって、無防備に眠る町娘の首を撥ねるなど、

赤子の手をひねるよりも容易い雑作に過ぎなかった。


 だが、この最凶の暗殺者は、

一つの決定的な事実を完全に見落としていた。


 彼が今まさに命を奪おうと狙っている町娘の魂が、

かつて眠らない街、令和の歌舞伎町や渋谷の夜を、

朝の始発が動くまでガッツリ遊び明かしていた「超・夜行性ギャル」だということを。


 お上の役人や街道の商人が夜盗を恐れて震え上がる真夜中の暗闇など、

彼女にとっては恐怖の対象どころか、

ただの「ちょっと照明の暗い、お洒落な深夜のクラブイベント」と同義だったのである。


 暗殺者が、寝所の襖に細い指をかけ、音もなく横へと滑らせた。

 標的が泥のように眠る寝息を確かめようと、

部屋の敷居へと一歩、確実な足を踏み込んだ――まさに、その刹那だった。


 ガラガラガラッ! チリンチリンチリンッ! バキバキッ!


「な、何奴っ……⁉」


 静寂をズタズタに引き裂く、

尋常ではない大音量の破裂音と金属音が、薄暗い部屋の隅々から爆発した。


 驚愕した暗殺者が慌てて足を引こうとするが、すでに遅い。

彼の足元には、昼間のうちに私が現代の防犯知識をフル活用して仕掛けておいた、

歩くと派手な音が鳴る『特製デコ鈴と竹のブービートラップ』が

網の目のように張り巡らされていたのだ。


仕掛けに引っかかった竹が跳ね、

天井に吊るされた無数の鈴が狂ったように激しい音を立てて鳴り響く。


「うわっ、マジでかかったじゃん! 超ウケるんだけど!」


暗闇の中で、パッと火打ち石の火花が激しく散り、

枕元の油灯にパッと明かりが灯った。


そこに寝間着姿のまま、

布団の上にどっかりと胡坐をかいて不敵に笑う私がいた。


眠気など微塵もない、らんらんとした視線が暗殺者を真っ正面から捉える。


「き、貴様……起きていたのか……っ⁉ 

この丑三つ時の暗闇の中で……!」


暗殺者は激しく体勢を崩したまま、

信じられないというように目を剥いた。


これまで数々の修羅場をくぐり、

どんな標的も眠っている間に始末してきた男にとって、

丑三つの夜更けにこれほど目がバキバキに冴え渡っている町娘など、

想像の範疇を完全に超えていた。


「あたり前じゃん! 

ウチを誰だと思ってんの? 

こちとら夜行性ギャル舐めんなし! 

夜の本番はこれからなんですけど!」


「ええい、口賢しい小娘が! 

死ねぃ!」


暗殺者は驚愕を怒りに変え、

鋭い刃を突き出して私を仕留めようと地を蹴った。


だが、その刃が私の喉元に届くより早く、

部屋の襖が凄まじい音を立てて外側へと跳ね開けられた。


「――そこまでにしときな、ネズミ野郎」


地を傷つけるような圧倒的な重低音。

部屋に飛び込んできたのは、藍色の粋な着物に身を包んだ、

額に深い刀傷を持つあのセキュリティのチーフ――元ボスのお兄さんだった。


その手には、ウサギの細工が施された愛刀がすでに鋭く引き抜かれ、

鈍い光を放っている。


「お、お頭……っ⁉ なぜ、この場所が分かった……っ!」


「ハッ、ウチの姉御が仕掛けたトラップの音が、

宿中はおろか街道まで響き渡ってんだよ! 

おい、野郎ども! 姉御の寝所に不届き者が侵入したぞ! 

全員集まれ!」


チーフの一喝に応えるように、廊下の向こうから「お疲れ様でーす!」と

野太い声を上げながら、お揃いの藍色の着物を着た元手下の男たちが、

十手をがちゃつかせながらドタバタと大挙して押し寄せてきた。


狭い部屋の入り口があっという間にゴツい男たちの壁で埋め尽くされていく。


「な、なんだこの数は……! 

堅気の旅籠の動きではないぞ……っ!」


さすがの最凶の暗殺者も、

お揃いの着物を着たゴツすぎる用心棒たちに完全に包囲され、

その圧倒的な数の暴力の前にジリジリと後退するしかなかった。


窓から逃げようにも、

庭にはすでに他の手下たちが十手を構えて待ち構えている。


「ほらほら、暗闇だからって調子乗ってんじゃねーよ、お兄さん! 

夜のハッピータウンは、ウチらの完全なホームグラウンドだからさ!」


私は布団の上に立ち上がり、親指を立ててパチンとウインクを飛ばした。


漆黒の闇を利用して完璧な暗殺を成し遂げるはずだった刺客は、

現代の夜行性ギャルマインドと、

完全に更生した頼れるセキュリティチームの連携プレイによって、

逆に秒で返り討ちに遭ってしまうのだった。

夜行性ギャルの前にはプロの暗殺者も形無しです(笑)。

トラップに引っかかった暗殺者を、イケメン用心棒たちが一網打尽に!

次回、怒れる女将がヤクザのボスたちを率いて、闇の元締めの本拠地へガチ殴り込みです!

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