↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
32/44

【第32話:最強のイケメン用心棒、爆誕じゃん!】

ヤクザから最強のセキュリティスタッフへ!

ギャルプロデュースでイケメン化した元ヤクザたちが、街の治安を爆アゲする爽快な日常をお届けします。しかし、裏社会のさらなる巨大な闇が迫り……。

「――よし! 

みんな、マジで仕上がり最高なんだけど!」


 爽やかな朝の光が差し込む旅籠『丸米屋』の広々とした土間に、

私の弾んだ声が響き渡った。


 私の目の前には、つい数日前まで泥茶色の薄汚れた羽織をだらしなく着崩し、

街道筋を震え上がらせていた博徒の一団が、

借りてきた猫のように神妙な面持ちで一列に並んでいる。


「あ、姉御……。

本当にこの格好で、間違いごぜ居やせんか? 

なんだか、首のあたりが妙にスースーして

落ち着かねえんですが……」


 元ボスのお兄さんが、

大きな手のひらで自分の頭を気恥ずかしそうに撫でながら、

地を響かせるような低い声で呟いた。


 ボサボサだった無精髭は綺麗に剃り落とされ、

泥まみれだった髪は江戸で今一番流行りの粋な髪型に

ピシッと結い上げられている。


身に纏っているのは、私がプロデュースして新調させた、

深い藍色の清潔感溢れる着物だ。


「何言ってんの! 

めちゃくちゃイケおじじゃん! 

手下のみんなもさ、髪型整えてそのお揃いの着物着たら、

マジで見違えるほど清潔感爆発してるって!」


「へ、へい……。

なんだか、堅気の格好をするだけで、背筋がしゃきっと伸びる気がしやすぜ、お頭……

じゃねえや、兄貴!」


「バカ野郎、これからは『セキュリティのチーフ』とお呼びしな!」


 無精髭の消えた元手下の男たちが、お互いの顔を見合わせながら

照れくさそうに笑い合う。


 彼らの腰元には、あの物騒な匕首(あいくち)の代わりに、

私の旅籠の特製ロゴが入ったお揃いの十手と、

ウサギの彫り物がキラリと光る爱刀が、誇らしげに収められていた。


「そう! 

今日からみんなの役割は、このハッピータウンの『イケメンセキュリティ』ね! 

腕っぷしと強面なビジュアルはそのまま活かして、街のハッピーを全力で守るわけ!」


「せきゅ……? 

よ、用心棒兼スタッフ、というわけでございやすね。

……姉御、しかしただ立っているだけで良いので?」


「ノンノン、大事なのはウチの特製『タレ目接客マニュアル』だよ! 

凄んで脅すのは一茶禁止! 

基本はいつでも、お疲れ様でーすって最高の笑顔でエスコートするの。

オッケー?」


「へい! お疲れ様でーす! 

笑顔でエスコート、ですかい!」


 元ヤクザ一味の野太い発声練習が、

旅籠の青畳をビリビリと震わせる。


 帳場の奥から恐るおそる幾出てきたおじいちゃん主人は、

その光景を見て、顎が外れんばかりに驚愕して腰を抜かしていた。


「ひえぇぇ……! 

ま、まさかあの凶悪な無法者たちが、

こんなに小綺麗になって、丸米屋の最高の仲間になるとは……。

お咲、お前は一体どんな妖術を使ったんだ……っ!」


「妖術じゃないって、ギャルマインドの力だし! 

さあみんな、早速街の見回りに行ってきなよ!」


「へいっ! 行ってまいりやす、姉御!」


 チーフとなったボスを先頭に、

藍色の着物を美しくなびかせた男たちが、

トントンと小気味よい足音を響かせて街道へと繰り出していく。


 ――その日の夕暮れ時。

 大活気の宿場町は、彼らの登場によってこれまでにない大歓声に包まれていた。


「おいコラァ! 

てめえ、俺の足を踏みやがったな!」


「何だと、てめえからぶつかってきやがったんだろうが!」


 煮売茶屋の店先で、酒に酔った若い旅人たちが互いの胸ぐらを掴み、

今にも殴り合いが始まろうとした、まさにその刹那。


「――そこまでにしときな。

お疲れ様でーす」


 背後から、地を這うような圧倒的な重低音が響いた。


 喧嘩をしていた男たちがビクッと肩を震わせて振り返ると、

そこには山のように巨大な体躯をそびえ立たせ、

額に深い刀傷を持つボスの姿があった。


「ひっ……⁉」


「お互い、美味い酒を飲んで楽しく旅をする身だろ。

ほら、その固めた拳は、次のお団子を持つために取っておきな。……な?」


 ボスは私のマニュアル通り、いかつい顔をこれでもかと無理やり歪ませて、

にっかりと『最高の笑顔』を作ってみせた。


 元日陰の世界のトップから放たれる、

凄まじい眼光と無理やりな笑顔の強烈なギャップ。


その圧倒的なオーラに気圧され、酔っ払いたちは一瞬にして

酔いが完全に醒めた様子で、ガチャガチャと手を離した。


「せ、秒で仲裁しちまった……」


「あのお兄さん、顔はガチで怖いのに、

言ってることめちゃくちゃ優しくて頼りになるんだけど……!」


 野次馬の中から、そんなひそひそ話が漏れ聞こえる。

 さらに街道の向こうでは、重い米俵を両手に抱えて困り果てていたお婆さんの元へ、

元手下の男たちが爽やかに駆け寄っていた。


「お婆さん、それ、ウチらが丸米屋まで笑顔でお運びしやすぜ! 

ほら、カモン!」


「まぁ! 

なんて親切な用心棒のお兄さんたちかしら! 

着物もキリッとしていて、マジでイケメンで最高だわ!」


 宿場町の女性たちから、次々と黄色い大歓声が沸き起こる。


 ただの乱暴者だった無宿人たちは、お咲のプロデュースによって、

驚くほど親切で頼りになるボディーガードへと完全な変貌を遂げていた。


 夜の見回りも徹底され、泥棒や喧嘩の件数は一気にゼロへ。

ハッピータウンの治安は爆発的に向上し、さらに安全で誰もが快適に過ごせる、

文字通りの理想郷へと進化を遂げていったのだった。


「ふふん、ウチのセキュリティチーム、マジで神クオリティっしょ!」


 旅籠の縁側に腰掛け、夕日を浴びながら冷たいお茶を飲む私は、

アゲアゲな街のバイブス感じて最高の気分に浸っていた。


 ――しかし、そんな平和に湧き立つ街の影で。


 大活気の宿場町から遠く離れた、不気味な暗雲が立ち込める闇の世界の深淵。

 蝋燭の仄暗い炎だけが揺れる殺風景な大広間の奥で、

数人の影が、禍々しいバイブスを放ちながら密やかに囁き合っていた。


「……聞いたか。

あの東海道の宿場町を仕切っていた無宿人の頭が、

堅気の小娘に牙を抜かれ、旅籠の犬に成り下がったそうだ」


「ふん、裏切り者の身の程知らずめ。

公儀の御法度を恐れぬ我ら裏の元締め……

『闇のギルド』を敵に回して、ただで済むと思っているのか」


 彼らは、街道筋の利権を裏で牛耳り、

莫大な富を貪り続けてきた日陰の世界の、

さらに巨大な真の元締めたちだった。


 儲かり続けるハッピータウンを完全に圧殺し、

その利権を丸ごと奪い取るため、彼らは冷酷な眼光を闇の中でぎらつかせた。


「あの街のハッピーとやらを、根本から木っ端微塵に粉砕してやれ。

……おい、奴を呼べ」


「へへっ、ついにあのお方を動かすのですか。

……あの、闇の世界最凶と謳われる、血も涙もない冷徹な刺客を」


 闇の中から、不気味に抜かれた一本の刃が、

冷たい鉄の光を放って妖しくきらめいた。


 ギャルマインドによってもたらされた未だかつてない平和な街に、

今、闇の世界最大の巨大な脅威が、最凶の刺客と共にじわじわと忍び寄ろうとしていたのだった。

街の治安は完璧になりましたが、裏社会の「闇のギルド」が激怒。

次回、旅籠の売上と裏切り者のボスを消し去るため、夜の暗闇に乗じて「プロの暗殺者」が旅籠に潜入してきます!女将大ピンチ⁉

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。