第五話 門出
黒ローブの男が感情を出す。
「おぉ、これが議決権、円卓の力!」
その声には、探し物を見つけたような歓喜が混じっていた。
議決によって与えられた白銀の光は、どんな武器にも等しく宿る。
それぞれの研鑽、それぞれの人生が乗った信頼できる武具たち。
それがどんなに戦闘に向いていなくとも、議決で指向性がまとまれば、それは武器として戦闘で十全に振るわれる。
三千の己の人生たち、今まで生きた意味たちが白銀の光となって星々のように瞬く。
世界から見れば、無名のまま終えた人生もあった。
だが、精一杯生きた、その輝きのようだった。
戦闘中だが、息を呑み、それを美しいと感じていた。
だが、黒ローブの男は失望の色を見せる。
「こんなものか。」
その瞬間、男は右手を振り下ろした。
その動作と同時に黒い亀裂が静かに閉じ始める。
「逃げるのか?」
三千十三番が問う。
「いいや、収穫の時ではないからだ。」
「実が青いままとっても渋い、それだけだ。」
そしてローブのしたから覗く眼光が俺を捉える。
「もう少ししたら、また…。」
その眼光は、この世のものではなかった。
身がすくみ動けない…。
黒いローブを翻し、男の姿は溶けるように消えていった。
同時に、はじめから無かったかのように、消えた。
腕も、裂け目も、全て。
無音、耳の鳴るような沈黙が訪れる。
三千人が一斉に武器を下ろす。
緊張の糸が切れた俺は、その場に膝からへたり込んだ。
「終わった、やっと。」
三千十三番は首を振る。
「ここから、始まる。」
その言葉と同時に、この世界が崩れ始める。
俺は慌てて叫ぶ。
「あの黒いローブのやつはなんなんだ!」
「何が目的なんだ!」
三千十三番が肩越しに視線を寄越す。
「今生でもっと強くなれ。」
「今のままでは足りない。知っても意味がない。」
「だから、世界を巡れ、今を生きろ。」
その言葉を最後に、俺は上か下かも分からない方向へ落ちていった。




