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第十七話 聞かれたくない質問

「アルト君?」

ゆっくり振り返る。

セラフィスは笑っていた。

さっきまでと、何一つ変わらない顔で。

「どうしたのかな?」

頭の中で、三千人が黙った。

「錬金術……ですか?」

「ええ、そうです。」

「村で使う程度なら、多少…。」

「おぉ、なるほど。」

セラフィスは興味深そうに頷いた。

「薬草から成分を取り出したり、魔物の素材を加工したり…生活につかう程度です。」

嘘は言っていない。

言ってないことがあるだけだ。

「なるほど。」

セラフィスは何度か小さく頷く。

これで終わりか。

ようやく面接から解放された。

あぁ、終わったら王都観光でも…

「では。」

では…?

まだあるのかよ。

「人に近いものを作った経験は?」

くそっ、いつもそうだ!

帰れると思った瞬間に、重い嫌なタスクが降ってくる。

「おい、落ち着け。」

「今日の夕飯のことでも考えろ!」

「人を作るのは、不可能ですよ。」

「あぁ、すまない、人そのものという意味ではなかったんだ。」

セラフィスは穏やかに続ける。

「たとえば…人形のようなものだ。」

「あるいは、腕や脚だけでも構わない。」

「…なぜ、そんなものを?」

役者だった俺が言う。

「君のその、本当に焦っている顔、使えるよ。」

こっちは本気で焦ってるんだ、全然嬉しくない。

…いや、そうか!

「錬金術で人体に近いものが、作れるのですか?」

王都にそんな錬金術師がいるなら、本当に驚きだ。 

「少なくとも、私は聞いたことがないよ。」

「理論上は不可能ではないのかもしれないがね。」

「そうですか…。」

「変なことを聞いてすまなかったね。」

「いえ。」

「最近、変わった錬成物に関する報告があったものでね。」

「どんなものなんです?」

「詳細は機密事項だ。」

セラフィスは口元に指を当て笑う。

「神聖騎士になれば読めるよ。」

諜報員だった俺が感心する。

「こちらが欲しいものを分かってる。」

「お前が欲しい情報、バレているのかもな。」

「まぁ何にしろ、何も分からん。」

「今日は…ここまでにしようか。」

セラフィスが席を立つ。

「明日の返事を楽しみにしている。」

「はい。」

俺は頭を下げ、今度こそ部屋を出る。

廊下を少し歩いて、執務室が遠く後ろになった頃。

「あぁ…疲れた…。」

誰に聞かせるでもない独り言が漏れる。

「徹夜でメンタルは鍛えられなかったか。」

「早くこいつを強くしなくては。」

「ちょっと厳しすぎない?」

「ナリは若いが三千回生きてるだろ。」

「今生は大して鍛えてない十七歳だ!」 

「…独り言ですか?」

前を歩いていた副団長のレイヴァンが怪訝そうに振り返る。

「ええ…。」

「今日は騎士団の宿舎を用意しています。」

「ありがとうございます。」

「夕食も準備させましょう。」

ありがたい、ここから宿を手配しなくて良くなったのは非常に助かる。

今日は体力よりも精神的に疲れた、今すぐにでも休みたい。

だが、俺にはやらなければならないことがある。

「その前に、少し王都を歩いてきてもいいですか?」

「ええ、もちろん。」

レイヴァンは特に止めなかった。

「王都は道が入り組んでいます。迷わないようお気をつけください。」

「分かりました。」

「裏路地にも近づかないほうがいいでしょう。身ぐるみ剥がされた、なんて話も珍しくありません。」

「そんなに治安悪いんですか?」

「場所によります。」

レイヴァンは再び歩き出し…ふと思い出したように振り返った。

「ああ、それと。」

「独り言は、村にいる時より控えたほうがよろしいかと。」

「ぐっ…。」

「王都では、目立ちますから。」

「気をつけます…。」

レイヴァンが再び歩き出す。

明日、俺はセラフィスに答えなければならない。

「ならやることは一つだ。」

商人だった俺が言った。

「商品を買う前に、評判を調べるだろ?」

「組織は商品じゃないぞ。」

「会社だって売り買いできる世界がある、組織だって似たようなもんさ。」

「そういうもんか。」

騎士団の中も少し見た。

なら次は…外から見た神聖騎士団を知りたい。

王都の人間は、この白銀の騎士たちをどう見ている?

それを知らずに決めるのは、まだ早い。


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