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第十一話 共犯

引き抜いた自爆用の黒い結晶…解析前に霧散する。

素性を掴ませないために、とことん手が込んでいる。

しばらくして、男が俺に向けて口を開く。

「なぜ…なぜ、助けた?」

「聞きたいことがある。」

「…本当に…それだけか?」

男は俺を見る。

「殺す必要がないなら、殺したくはなかった。」

目を見開いたあと、男は鼻で笑う。

「その甘さ、いつか痛い目を見るぞ。」

「…よく言われる。」

いつかの転生の時に、騙されて奴隷になったり、暗殺されたりもした。

それでも…今の俺は…人に優しくありたい。

母や、村人、村長…優しくしてくれた皆のようにありたい。

「それで…そろそろ話してくれないか。」

「誰に俺を連れてくるよう命令された?」

「……………。」

男は再び黙り込んだ。

だが、尋問官の俺は微細な変化を見逃さない。

「目線が右上…この男には迷いが生まれている。」

「それに呼吸が以前より浅い。」

…ここは、更に押すべきか?

「いや待て、自分から話すまで待つんだ。」

「沈黙も使い方次第で尋問に使える。」

俺は黙って真っ直ぐに、男を見つめる。

十…二十…長い沈黙。

男は開きかけた口を閉じ、奥歯を噛む。

葛藤の末、男が口を開いた。

「名前は…知らん。」

「顔は見ていないのか?」

「ああ、そうだ。」

「俺たちは雇われただけ、胴元は知らない。」

簡単に尻尾を掴ませるような相手ではないらしい。

「依頼内容は?」

「アルト・フェルナーを王都到着前に確保しろ。」

「生きていれば状態は問わない。」

「…他には?」

「ターゲットは王都からの書状を持っている。」

「検問を設置し、通行人をあらためろ。」

「書状を持っていることを知っていた…?」

「そうだ。」

嫌な予感が当たりそうだ…。

「やはり、中枢に入り込んでいるらしい。」

「断定は早い、情報が漏れた可能性もある。」

「せめて魔力が解析できれば。」

ざわめく頭の中の俺達。

「最後に一つ聞きたい。」

細やかな仕草を見逃さないよう、改めて男を見る。

「…黒いローブを着た男に覚えはないか?」

その瞬間、ほんの僅かに目が揺れた。

「…知ってるな?」

男はしばらく黙っていた、葛藤が見える。

長い沈黙のあと、小さく息を吐いた。

「俺から言えるのは一つだけ。」

「王都の壁内で、そいつを探すな。」

「どういう意味だ?」

「そいつを嗅ぎ回ると、消される。」

「調べに出した仲間も、戻ってこない。」

「必ず仲間は取り戻す、殺されたなら必ず落とし前はつけさせる。」

「だが…所在も正体もわからない。」

男の拳を握る手に力が入る。

「俺の知っていることは、これで全部だ。」

男は立ち上がろうとするも、足元がおぼつかない。

咄嗟に俺が肩を貸そうとするが…。

「触るな。」

男は気合で持ち直す。

「お前には、命を助けられた。」

「借りたものは、必ず返す。」

「それで、お前は俺たちを突き出すのか?」

話しているうちに残りの4人も起き上がる。

加減がうまくいったらしく、命に別条はなさそうだ。

斬りかかってくる素振りはないが、身を引きずって俺と男の前に入ろうとする。

その様子を見た頭の中の俺たちは口々に話し出す。

「…ただの変装した野盗ではなさそうだ。」

「この忠義は、本物。」

「誰一人見捨てて逃げないとは、見上げた根性だ。」

「こいつらは、義理と人情がある。」

「筋肉を見れば、いいやつか分かる!」

…筋肉はまぁ別にして…、アルトは男に尋ねる。

「…何か事情があるのか?」

「王都は魔獣を根絶するという名目で、討伐隊を編成しているのは知っているか?」

「神聖騎士団というらしいな。」

取り巻き1人が、耐えられずに口を挟む。

「何が神聖だ、組織を維持するために俺達に重税を…。」

「やめろ、みっともない。」

「…お前たちは…?」 

「俺たちは、ただの雇われだ。」

「でも、ガイルさん!俺たち何日も食ってねぇ!家族も…みんな…。」

「黙れ!」

怒鳴ったガイルの拳が震えている。

「見ろ。」

尋問官の俺が語りかけてくる。

「自分だけならどうなってもいい。」

「だが、部下とその家族は違う、そんな顔だ。」

俺は、少しだけ笑う。

「なぁ、ガイル。」

「なんだ、何がおかしい。」

「さっき、借りは必ず返すって言ったよな。」

「ああ。」

「じゃあ…。」

俺は地面へ手を置き、魔力を流す。

「もう一つ、借りてくれ。」

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