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魔法と夢と花。  作者: 無糖
第2章 トリカブト
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第4話 セーラー服と騎士

 セーラー服に身を包まれたクラスのマドンナとも呼べる少女が信号を待っています。儚くも幼いその少女を知っていますね。そう、〈時の魔術師〉ホタルです。


 朝は翼が作り置きをしていた朝食を食べました。翼のお母様はどうやら家にはいないようです。昨日から帰ってきていないのか、それとも朝早くからお仕事に行ったのかは定かではありません。


「家にいてもやることがないですし、出かけましょうかね」


旧人類の生態調査も残されています。本当に面倒な依頼です。


「旧人類なんて、もういないのに」


部屋に戻ると、翼が置手紙を残していました。こういうところはマメでポイントが高いです。



ホタルへ

朝食を食べた後に出かけたくなったらこのセーラー服を着て行ってください。ホタルの恰好では目立つので。うちにはこれ以外の女性服は母さんのものしかなくて、そっちは貸せないから、これで我慢してくれ。

P.S. 美少女のセーラー服は最高だぜ!



何やら気持ちの悪いことが書いているような気はしますが、旧人類に擬態した方が調査が捗ると思ったので、翼の提案に乗ることにしました。セーラー服と言うのは軍服のような感じで、宮廷魔術師の制服と似ているなと思いました。


 そうして街をぶらつきました。その世界は13世紀のヨーロッパとは違い、タイヤのついた車や、テレビ、スマホと呼ばれるものが当たり前のように使用されていました。


「私たちの時代ではもう存在しないものがこんなにも」


5080年ではほとんどが魔法で再現されています。車には人を乗せるスペースだけであり、タイヤはなく、魔力で動かしますし、スマホのような連絡手段は電気ではなく魔力で動き、その外郭は存在しません。唱えれば魔力でスクリーンが形作られ、表示されるのです。


「魔力でそのほとんどが再現されましたが、それらを作る技術は失われましたし、旧

人類の知恵は流石ですね」


魔力と魔法だけが人の評価基準である現代では、こういった知恵は何の価値もないのです。少なくとも私はそう思いませんが。


「あれは」


どうやら昔に本で読んだコンビニにたむろするヤンキーが目の前に現れました。


「ああいう変な髪型ってフィクションじゃないんだ!」


所謂リーゼントと呼ばれる不思議な髪型をしていました。そんな初めての出会いに感動していると、タバコ臭い彼らが近づいてきました。


「ねーねーそこのかーのじょ!可愛いね~これから俺ん家来ない?」


酷い悪臭です。口だけでなく体の臭いもきつかったです。先ほど、旧人類の知性を褒めましたが、香水の適量すらわからないこの人間はそれを全くと言っていいほど感じられませんでした。


「すみません。臭いので近寄らないでもらってもいいですか?」

「はあ?ちょっと状況わかってる?この状況でそんな大口叩けるって逆に凄いは」


私の周囲に群がる有象無象たち。一つ文句を言うならば、汗とタバコの臭いがやはり不快です。


「気の強い女は好きだけどよ、口の利き方は知らねーとなぁ」


私に対して顔を近づけてきて気持ちが悪かったので、その場の連中を魔法で蹴散らそうとした時、声がしました。


「ホタル!」

「あら、翼。今は学校では?」

「窓からお前が絡まれてるの見えて、走ってここまできたんだよ」

「あ?翼じゃねえか。この女と知り合いなら俺たちのこと紹介してやってくれよ。優しい連中だから家について行っても大丈夫だって」


ケラケラと笑う周りの連中には品性の欠片もないようです。私の想像していたヤンキーとはかけ離れており、がっかりしました。


「お前ら、ホタルに何かしたら許さないぞ」


実に頼もしいですね。これがトリカブトの効果でしょうか。


「あ?」


しかし、相手は翼のカッコつけた発言が気に食わないようです。


「おいおい、いじめられっ子でなーんにもできない翼くんよお」


リーゼントの男が翼に近寄り、彼の頬を殴りました。しかし、ダメージを負ったのは翼ではないようです。


「いっでぇぇぇ!!」


リーゼントの男はその場で倒れ込み、自身の拳を固く握っています。


「これってどういうこと?」


周りにいた仲間たちもその異質さ故か、感情のまま翼に殴りかかります。私は翼に木の棒を投げ渡しました。


「翼、これを使ってください」

「え、ああ」


そこからは一瞬でした。木の棒を手にした翼は周りの小者たちを華麗な棒捌きで倒してしまったのです。


「え?は、体が勝手に。どういうこと?」


翼本人も何が起きたかわかっていないようなので、親切な私は彼に教えてあげました。


「トリカブトの花栞は翼に騎士道を授けた。それはあなたを縛るものですが、同時に騎士としての強さも授けます」

「 ? ホタル、もう少しわかりやすく言ってくれ」

「簡単に言えば、騎士道という思想に染まってしまう代わりに、彼らの身に着けていたプレートアーマーの防御力と、剣技を得たのです」

「ま、まじかよ」

「はい、なので一般的な人間にはもう負けないと思いますよ」

「でもよ、俺の体昨日と変わらず軽いままだぜ。そんな鎧を着ているようには感じないけど」

「それは魔法なので。鎧の重さまで反映させる魔法なんて欠陥品もいいところですし、そんなの淘汰されて使われませんよ」

「そ、そういうもんか」

「はい。弱いものが淘汰されて強いものだけが生き残るのが世の常ですから」


そんな会話をしていると、そこら辺で見ていた有象無象達の姿が見えません。どこかに行ってしまったようです。


「す、すげえ。俺をいじめてたあいつらがこんなあっさり」

「所詮は弱いものを集団でいたぶる弱者です。逃げ足は速いのでしょう」

翼の方を振り返ると、彼は涙を流していました。

「なぜ泣いているのですか?」

「いや、ほんと…あそこで死ななくてよかったなって」

「そうですか」

「ありがとうな、ホタル」

「はい、どういたしまして」

「これだけ助けてもらったんだ。ホタルは俺の恩人だ」

「ええ、まあ、そうとも言えますね」

「だから、今度は僕がホタルを助けたい。何か俺にできることはないか?」


これは私にとってはとても都合のいい提案でした。情けは人の為ならずということわざは本当だったようです。


「それでは」


私は本心からの言葉を口にする。私の背中を押してくれたあの言葉だ。


「翼、あなたの夢はなんですか?」

「え、夢?」

「はい、私にあなたの夢の応援をさせてください」


夢集めの始まりだ。ああ、とても良い夢であることを願います。


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