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魔法と夢と花。  作者: 無糖
第2章 トリカブト
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第2話 21世紀、日本 

 21世紀、日本。そこに一人の可憐な少女が降り立ちまあした。儚くも幼いその少女を知っていますね。そう、〈時の魔術師〉ホタルです。


 その場所は所謂、学校というところなのでしょう。その屋上に私は転移しました。


「13世紀のヨーロッパとは違って鉄筋やコンクリートの建物なのですね」


そんな21世紀に感動していると、茶々を入れてくる男子がいました。


「あ、あのう。どいてもらってもいいですか?」


この私にどけとは中々の度胸ですね。必殺、心臓破壊パンチでも打ち込んでやろうかと思いましたが、何やら私が手を加えなくてもよいようです。


「死ぬんですか?」

「はい、死にますよ。そんな時なのに、急に目の前に変な人が現れてびっくりしています」

「ちなみになんで死ぬんですか?」

「理由を聞いても死ぬことは変わりませんよ?止めたいなら、もっと他のアプローチをした方がいいですよ」


なるほど、彼は色々と勘違いしているようです。全てを伝えるのは大変なので、ひとまずは最もおかしい部分を訂正しようと思います。


「いえ、あなたの生死に興味はないです。なんで死ぬかの理由だけ教えてください。自ら死ぬなんておかしなことをする人は珍しいので」

「え?」

「私、何か変なこと言いましたか?」


しっかりと勘違いしている部分を丁寧に教えてあげたのに、まるで頭のおかしい人間を見るような表情をするのはやめてほしいです。


「あ、あの、普通自殺しようとしてる人が目の前にいたら止めませんか?」

「それがあなた達の普通なんですか?」

「え、はい。そうだと思います」


どうやら旧人類は見ず知らずの人間相手でも、死ぬのは嫌なようです。私たちの時代では、優秀な者ほど死と隣合わせなので、身内や自身の命以外はかなり軽視しています。これは新人類と旧人類の大きな違いですね。


「…」

「…」


沈黙が流れました。いつになったら死ぬ理由を教えてくれるのでしょうか?私はずっとそれを待っているのに。


「あの?いつになったら話してくれますか?」

「すみません。やっぱり死ぬのやめます」

「どうしてですか?」

「あなたが魅力的すぎるんです」


あまりに当たり前のことを言われたので、逆にびっくりしてしまいました。


「わかりませんか!?急に目の前に美少女が現れたと思えば、その人には常識が通用しないんですよ!」

「いえ、私が魅力的なのが当たり前ですし、変なことを言うなと驚いていただけです」

「ぶっ…あはははは!本当に最高の人だ!」

「ええ、そうです。それで、なんで死のうとしていたんですか?」

「ここまできたらもう全部話すしかないですね」


そう言い、このおかしな眼鏡の少年は語り始めました。あまり長い話は苦手なので、端的に教えてくれるだけで良かったのですが…


「僕、実は同級生にいじめられているんです。殴られたり、靴に画びょうを入れられたり、ほら、ここなんて煙草を押し付けられた火傷痕なんかも」


そう言っておでこにある焼き痕を見せてくれました。それは一つではなく、いくつもの丸い痕が重なり、アートのような美しさと、純粋な不快感を持ち合わせていました。


「何度も死のうって思っていたけれど、シングルマザーでずっと頑張ってくれてる母さんに申し訳なくて死ねなかった。母さん、俺とは血の繋がりのないってのに…」

「じゃあなんで今日は死のうとしたんですか?」

「いじめっ子たちが、俺が死なないなら母さんにも手を出すぞって脅してきてさ。母さんまだ若くて20代なんだ。だから、酷い目にあってほしくなくて、死のうかなって」

「でもやめるんですよね?」

「ああ、君みたいに面白い人に出会って死ねるわけないよ」

「でも、あなたが死なないと、お母様が大変なのでは?」

「絶対何とかしてみせる。僕が母さんを守ってみせる」

「なら、いいものがありますよ」

「え?」

「きっとあなたの役に立ちます」

「そんなものがあるのか?」

「その代わりに交換条件として、私に数日間の寝床と食事を提供してください」

「あ、ああ、何とかする!それであいつらから母さんを守れるなら!」

「わかりました」


そう言い私は一本の花を取り出しました。


「なんだその花?」

「トリカブトです。毒性があるので気をつけてくださいね」

「まさかそれをいじめっ子にでも飲ませるのか?」

「そんなことしませんよ。これはこう使うのです」


私の魔力によって周囲が吹き荒れる。目の前の眼鏡の男子はあまりの神々しさに腰を抜かしてしまったようです。


「い、一体何が」

「花よ、その形を捨て、言葉となりて、私たちに権能を授けよ」


トリカブトの花弁は私の周りをひらひらと回り、その速度を速めていきました。そして、紫のヴェールのように私の美しさをより一層引き出したに違いありません。


「集まりて、作られし意味として、もう一度咲きほこれ」


そして、花弁は光の粒となり、私の手元に集約されました。その粒たちは形を変え、一枚の花栞として、世界に顕現したのです。


「これが、あなたを救う魔法の栞ですよ」

「す、すごい」

「さあ、歩みましょう。あなたの騎士道を」

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