第2章トリカブト 第1話
一つの旅を終え、魔力に満ちた世界に舞い戻った天才魔法使いがいます。儚くも幼いその少女を知っていますね。そう、〈時の魔術師〉ホタルです。
「ジョンには悪いことをしましたね」
王子からの依頼を受けて13世紀のヨーロッパで旧人類の生態調査をしました。そこに生きた人々は、私の生きる世界とは常識も生活も違いました。
「まあ、あの世界はただのコピー品ですし、あまり気にしても仕方ありませんね。それに、私の夢が叶えば、全ての夢が叶いますし」
そんな独り言を呟き、あの花畑に向かう。私の大好きなあの場所に。
花畑に着きましたが、今回の目的は花を愛でることではありません。今回はこの花畑の最奥に用があるのです。
「空間の精霊よ、私を導け」
おばあちゃんの魔法で目的地まで向かう。本当に便利な魔法で、超級魔法と呼ばれるに相応しいものです。
「お待たせ、やっと夢を持ってこれたよ」
二つの瓶を取り出し、目の前の花に注ぐ。瓶から解き放たれた夢は、粒が形を成し、言葉として花に吸い込まれた。その夢たちは魔力の含まれない純粋な夢で、新人類では感知できないものだ。全ての夢を吸ったその花は、残念なことにまだ小さく、蕾の状態だ。
「あなたが咲けば、世界を変えられる…」
そう、世界を変える花を私は咲かそうとしている。これは叔母さんが残した最後の魔法。それを私は完成させたいのだ。
「こんな世界、私が変えてやる。私から全てを奪ったこんな世界…」
これが咲くのは当分先のことでしょう。なので私は次の世界に向かうことにしました。
花畑から戻ると、そこには男がいました。私に依頼を持ってきた男です。
「何か御用ですか?」
「いや、青薔薇のことだ」
「用意できたんですか!」
「いや、まだだ」
「あら、そうですか」
「お前、この花を何に使うつもりだ?」
「…ただ、花畑に植えて愛でるだけですよ」
「そうか。くれぐれも謀反なんかは考えないことだ。お前の姉のようにな」
「お姉ちゃんは謀反なんて考えていませんよ」
これまでとは違い、強い語気で言い返した。
「あんな魔法を考えるのがダメだ。あれは神級の域を超えている」
「そう…ですね」
「それと、花魔法の神級も作ろうとはするな。王族に目をつけられる」
「随分親切なんですね」
「お前レベルの魔術師なんて王族を含めても歴代に5人もいないだろう。そんな才能を殺されてたまるか」
「…」
「それじゃあ、それだけだ。生態調査、しっかりと頼むぞ」
「ええ、わかっています」
嫌な過去を思い出してブルーな気持ちにされました。それでも、仕事をしなくてはいけません。なんせ、王族様の勅命ですからね。
「時の精霊よ、私の声を聴け」




