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魔法と夢と花。  作者: 無糖
第1章 グリーンカーネーション
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第1話 13世紀、ヨーロッパ

 13世紀、ヨーロッパ、この世界に一人の女神が降り立ちました。儚くも幼いその少女を知っていますよね。そう、〈時の魔術師〉ホタルです。


「わあ、辺り一面牧草だらけ!」


5080年ではあまり見ることのできない景色に感動しました。そこは、おとぎ話や小説の世界のように空が澄んでおり、野鳥が空を飛んでいるのです。


「やっぱり過去に来ると心が躍るな~ほんとに素敵」


そんな感動に浸っていた私に大声で話しかける不届き者がいました。


「@:!”#$%&’」


見た目は10代前半と思われる少年でした。背は私より少し高く、瞳は青かったです。私には及びませんが、綺麗な瞳でした。しかし、困ったことに何と言っているか何もわかりません。時代も国も違うので当たり前ですが、これでは大変です。仕方なく、私はとあるマジックアイテムを使うことにしました。それは、どんな時代の言葉もわかる〈言霊のイヤリング〉です。とても高価で、魔力コストが高いのであまり使いたくはないですが背に腹は代えられません。


「あんた!」

「はい、どうかしましたか?」

「どうもこうもないよ!ここで何してたんだ!まさかうちの牛を盗もうとしてんのか!?」

「いえいえ、たまたま転移先がここだっただけです」

「てんい?何言ってんだお前。それより、早く出て行ってくれ」


こんなにも美しい女性を前にしてこの態度を取れるとは、中々肝の据わった少年ですね。


「どこかに良い宿はありませんか?」

「宿?こんな田舎にそんなものないよ」

「ないんですか?」

「ああ、ないよ」

「では、あなたの家に泊めてください」

「は?何言ってんだあんた」

「家がないので」

「バカかよ!見ず知らずのやつを泊めるわけないだろ!」

「では、私はどうすればいいですか?」

「知るかよ。そこら辺の道にでも寝ればいいんじゃないか?」


この子は一体何に驚いているのでしょうか?こんな美女が道端で寝ていたら、きっと汚い男共に襲われてしまいます。旧人類の子どもはしっかりとした教育を受けていないのでしょうか?


「おーいジョン!何してるのー?」

「げっ!ルナ」


どうやら同い年くらいの女の子が走ってきました。茶色で肩まで伸びた髪で、白く透き通った肌は私に少し似ています。髪色は全然違いますが。あ、私の髪色が気になりますか?気になりますよね。私の髪色は少し黒みがかった銀髪と、白みがかった銀髪が混ざったレイヤーカラーなのです。叔母さんが花魔法の応用で綺麗に染めてくれた自慢の髪です。


「てか、この女の人誰?」

「俺も知らね。急にここに来て家に泊めてくれーって言ってるんだよ」

「お姉さん、家ないの?」

「ここの近くにないだけで家はありますよ」

「じゃあ大変だ!ジョン、あんた泊めてあげなよ!」

「はあ!?なんで俺何だよ!」

「だってジョンの家ここら辺だったら一番広いじゃん!」

「あのー泊めてもらう立場で申し訳ないんですけど」

「まだ泊めるって決めたわけじゃ!」


男の子が何か言っているけれど、私は私のことが一番大切なので無視して話を進めることにしました。

「できればお風呂、最低でも水浴びができる家がいいのですが」

この時に見せた二人の表情はまるで化け物を見たかのように驚いていました。




「風呂はここだから。週に一回だけだけど」


結局私はジョンという少年の家に泊めてもらうことになりました。彼の家はこの時代では珍しくお風呂があり、私の実家よりも良いものでした。


「良いお屋敷に住んでいるんですね」

「俺の屋敷じゃないよ。それに俺はただの庶民だからな。ここはここら辺を統べる領主様のものだよ」

「先ほどの方が領主様ですか?」

「ああ、そうだ。ジェニト様には無礼な態度は取るなよ」


どうやら領主の名前はジェニト=クレイと言うそうです。あまり興味はなかったのでえすが、端正な顔立ちにすらりと高い背、心地の良い低い声に一瞬ときめきました。


「とてもイケメンな方でしたね。ジョンとジェニト様はどういった関係なんですか?」

「ただの領主と農民だよ。俺はたまたまあの人に気に入られたからここに住まわせてもらってるだけ」

「そうなんですね」


どうやらジョンは気づいていないようですね。それとも目を背けているのかはわかりませんが。まあ、この旅は退屈しなさそうです。


「では、私はお風呂に入ってきますね」

「ああ」


部屋を出てお風呂に入った。そこは豪勢に作られており、華やかでした。


「こういうお風呂もいいですが、私はやっぱり露天風呂がいいな」


露天風呂から見える月を眺めていたあの日々。お母さんとおばあちゃんと共に過ごしたあの日々は、蛍の光のように明るく、儚いものでした。


「ちゃんと仕事をして、ついでにみんなの夢も集めないとな」


実はこの仕事を引き受けたのは王子の依頼だけでなく夢集めをするためでした。夢集めとは何か気になるようですね。それはその時になったら話ます。言えることがあるとすれば、ある花の養分に旧人類の夢が必要なのです。


「ほんと、王族からの依頼以外での過去転移禁止とかおかしい~私の才能を殺すな~」


私の魔法はほぼ禁術で、おばあちゃんとお母さんが代々王族に仕えてきたおかげで何とか私の処刑は免れました。


「ほんとに、狂った世界だよ…」

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