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全力激闘

「レスキュー開始!!!」


 叫びは置くまで響き、逃すところなく希望を送る。


「その姿は....?」

「さあな。だが、負ける気がしねえ!!」


 少女の問に答えつつ、力のみなぎりを実感する。


「どんな姿になったところで!」


 怪人が地を蹴り音だけ残し肉薄する。

 繰り出される拳は素早く力強い。だが。


「なに...!?」


 受け止めることなど容易い。


「はあっ!」


 拳を手のひらで受け止め、拳を突き出す。風を切る音がし、怪人の胴へと直撃する。

 炎に見違えるほどの魔力が腕を伝い拳に繋がる。みなぎる力をそのままに、怪人を殴り飛ばす。

 

 次は足に魔力が伝わった。地を蹴り、よろける敵へと直行。


「セイッ!」


 炎を纏う回し蹴りは、紅の軌跡を残し、怪人を刈り取るように命中する。


『バキバキ!』

 

 すかさずレバーを操作し、剣に力を貯める。小さく赤い魔力がほとばしり、刃に魔力が溜まっていることを表している。


「いくぜ...!」


 トリガーを引き魔力を開放。刃は炎を纏い、烈火と成る。


「はぁっ!!」


 一閃。

 炎は黒に直撃し、焼き尽くすように切る。


「ぐぁぁっ!」


 地面を転がる黒い怪人は、立ち上がり、負け惜しみのように口を開く。


「はははっ。君がここで僕を倒そうが、すでにカードはばら撒かれたんだ。じきに怪人は世に溢れ出す…!。君を倒せないのはほんっとうに残念だが、我々の目的を違えちゃいない。君は負けたんだ!僕じゃなくて、僕たちにね!!」


 狂気を孕んだその言霊は、空気を震わせよく響いた。


「それがどうした。俺は救急団だ。ヒーローだ。何があろうと誰かが助けを求める限り、俺は戦い続ける!」

「ほざけぇっ!!!」


 怪人が土埃を舞わせ爆風で駆けるように距離を詰めてきた。黒い墨汁の魔力を纏う拳は、ただ真っ直ぐに突き刺さるように接近する。


 バシッ。重音ながらも軽さを感じる音が響き、迫っていた拳が動きを止める。

 正拳突きを蹴りで受け止めたのだ。

 弧を描き空を切るように回し蹴りが炸裂した。

 

 この距離ではずすわけもなく、回し蹴りは命中した。

 怪人は奥まで吹っ飛ばされ、怪人はよろめいた。


「これで終わらせる!」


『バキバキ!超・バキバキバキ!!超・超・バキバキバキバキ!!!』


 レバーを限界まで引き上げチャージを完全状態へ。紅蓮がほとばしり、紅の刀身がより赤くなる。


 レバーを一気に引き下げ、魔力を拳に伝える。それと同時にはガラスが集まり、ガントレットを生成していた。

 

「熱血沸騰.....!!」


 剣を腰の鞘に納める。

 それがトリガーとなり、ガントレットに包まれた腕は炎に包まれ烈火と成る。紅蓮の腕はただ眼の前へ。


 手のひらに拳を打ち付けた。

 炎が舞う。紅蓮が溢れる。幻想的とは到底言えない熱く激しい烈火が放たれる。


『ブレイブインパクト・フィーバー!!!!!』

「はぁぁぁぁっ!セイヤァァァァッ!!!!!」


 紅蓮の拳は火柱を描き一直線に怪人へと打ち込まれる。紅の軌跡だけがその場に残り、怪人は彼方へと吹き飛ばされた。

 

 爆発音とともに、敵のカードが砕け散る。

 

「レスキュー完了....!」



 皮を切らせ骨を断つ。

 水際の際まで来た背水の陣はこれでもかというほどに押されていた。


「さすがに....!。骨が折れるな!」


 迫りくるモンスターの群れにこれでもかというほどの銃弾を撃ち込みその場を駆け巡る俺....ことティドは流石の大群に少々押され気味でいた。


 もちろん、今はまだ少々の余裕がある。ミスをしなけりゃ死ぬことはないだろうが、そんなもの当たり前だが時間とともに変わっていくもので、このままだとどっちが先に事切れるかの持久戦になりそうだという半分事実の予感がする。

 もっとも、先に事切れるのは俺になりそうだけどね。


『ーッ!!」


 叫び声とともに銃弾に撃ち抜かれ散ってゆく魔物たち。今回は魔石などを悪忍している場合ではない。生き残ることしか考えるな。


「大丈夫ですか!?」

「もちろん。と言いたいところだけどかなりギリギリさ」


 まあでも。


「ゲントクの彼女さんにはいいとこ見せないとね!!」


 身体強化を発動。体の底から力が湧き上がる。やはり何回使えど慣れないな、この感覚。

 地を蹴り大地を離れる。

 砂埃は捲り上げられ一時的に大地を包んだ。


「書庫起動…古代魔法第一巻第10項『アンファンス』!!」


 脳内で魔法の詠唱とも取れる起動プロセスを言葉にして読み上げ銃に力を込める。激鉄が下がり撃ち出された弾丸は、放射状のビームとなり敵を射抜いていった。


「はぁ…はぁ…」


 流石に息も荒くなる。俺が使うのは普通の魔法じゃない。古代魔法だ。

 古代…、特に神話世代のね。

 強力すぎる魔法が跋扈した世代。そんなものを今の脆弱な人間が使えば当たり前だが、体には甚大な負荷がかかる。

 一応自分が直で使わないでいいように、自作魔道具「マジマグナム」でフカは怪訝しているんだが…。身体強化はどうしても直接体にかけることになる。

 負荷は計り知れないってわけだ。


「大丈夫ですか?」

「ああ。問題ないよ」

「今聴くことじゃないかもしれないですけど…。今の魔法は?」

「古代魔法。俺が神話世代の魔法書を読み、俺が復元した安心安全には遠く及ばない超強力魔法さ」


 といいながらも、額から血が出ているようだ。彼女は慣れているようで、その日隊からの血を見ても顔色ひとつ変えることはなかったが、治療しますと言って聞かなかった。


「治療は後回しだ…!」


 流れる赤い液体をぬぐい立ち上がる。

 地響きが轟き地震のように大地が揺れる。

 生物的な動きのそれは、ダンジョンの探索に慣れた俺ならすぐに何かわかる前兆だ。


「これは一体…?」

「ビートダウン」

「ビートダウン?」

「魔物が押し寄せるってことだよ」


 想像した通り、奥からは数十体の超強力魔物たちがわんさか押し寄せている。

 こんな行列全く嬉しくないが…。

 一体一体処理してたら時間が足りないね…。

 

「もうそろそろダンジョンが崩れる。すぐに出発できるよう準備をお願い」

「じゃあ、この魔物は一体どうするんです…?」

「吹き飛ばすよ」


 マジマグナムを構え、一言、そこから先は前へ出ないでとセナさんに注意する。

 

「全書庫起動。全巻持ち出し。全ページ完全読破…!1!」


 高速でプロセスを紡ぎ魔法を完成と向かわせる。魔法と魔法が重なり合い、さらなる魔法を吸い寄せる。

 神秘と神秘が織りなす光は、糸のように紡がれ紋章を空に刻む。


「さあ…完成だ。超重奏魔法『バババレット』!!!」


 それは大地を揺るがす圧倒的な力。緑の光が帯となり、向かってくる魔物を容赦なく叩きのめす。

 地響きを塗り替えるほどの豪快な騒音は鳴り止み、大きなクレーターと引き換えに姿を消した。


「さすがに消し飛んだ…か」


 ふらつき倒れそうになるのを堪えながら、次が来ないように願う。

 

 だが、その願いは通じなかったようで、何かが近寄る気配がした。


「ティドがぶっ倒れてる!」


 だが、その心配も杞憂に終わる。何せ聞こえたその声は、たった1日で仲良くなった親友の声だったのだから。



 金髪の少女を抱え俺は一目散に前へ向かって走る続ける。

 最後の辛抱。いつぶっ倒れてもおかしくない状態なのだが、そこは根気で補うのだ。

 がんばれ俺。


「すまない。私はここでいい。降ろしてくれ」

「そういいながら腰砕けて立ち上がれそうですらないだろあんたは」


 事実だったのか、少女は顔を赤らめながら黙った。

 まあそれ事実じゃなかったとしても、セノの応急処置が必要なくらいには彼女はボロボロだ。とても歩けるようには見えない。


「あなたの名前は?」


 唐突に俺の名を聞く声がする。その声の主は間違いなく金髪の少女だ。


「戸外崎ゲントク。ゲントクが名前な」

「珍しい名前だな」

「そういうあんたはなんて名前だ?」

「名乗るほどのものでは…」

「ダウト。俺に名を名乗らせておいて自分は名を名乗らないなど言語道断だ」

「…アルア。アルア・アヅマ」


 彼女はアルアと名乗る。アヅマという名字は俺も聞いたことがある。具体的には同級生に一人いた気がする。


「いい名前だな」

「…ありがとう」


 光が見える。どうやらティドたちの所へ戻ってきていたようだ。

 これで一安心だ。

 と思ったら


「ティドが死んでる!!」


 友達がぶっ倒れてた。



「頼むから勝手に殺さないでくれよ…」

「死体がしゃべった」

「お前もその仲間に入れやろうか?」


 ティドはフラフラと立ち上がり力なく握り拳を作ってみせる。


「で、どうしたんだ?」

「魔法を使いすぎた。俺も鍛錬が足りなかったってことだよ」


 微笑みながら彼は言った。

 その辺に真核と呼ばれる魔物の討伐証明のアイテムみたいなのは落ちていなかったが、そこらじゅうにできているクレーターを見るに、激闘だったことは確かだろう。


「おかえりなさい。ゲントク」


 セノが挨拶をしてくれる。若干の顔色の悪さは俺への心配か、治療のしすぎか。

 きっと後者なのだろうが、俺としては前者の方が嬉しいな。

 

「その方は…?」

「奥で嬲られてた。すぐに治療が必要だ」

「了解しました」


 アルアをセノに引き渡し、俺も救生車に乗り込む。

 

「運転は......」

「俺がする」

「お願いします」


 セノと運転を変わり、エンジンをかける。


「やばいな......もうそろそろ崩落するぜ?」

「それって......」

「はやく出発するしかない。アクセル全開で頼む」

「了解!」


 アクセルを踏み込み突き抜けてきた穴を通って地上へ進む。

 圧倒的な圧でハンドルは重いが操作をする必要は無い。


「どうせ崩落するなら今更ぶっ壊しても文句ねえよな!!」

「スピード出しすぎんなよ?バカ」


 全速力で岩を突き破り、地上へと到達した。



「と、いうことがあったわけさ」


 ダンジョン崩壊と同日、ギルドの職員室内にて、俺たちはギルド長に状況を報告していた。

 

「ダンジョンの崩壊を人為的に狙ったやつがいる…か」


 ダンディな掘りの深い顔と、深く低い声を唸らせギルド長は思い悩んでいる。

 

「で?そいつらはなんと名乗ったんだ?」

「エリクサー」

「万能薬ってことか?」


 ギルド長が組織の名前に触れる。


「世界の破壊を目論む奴らが万能薬名乗って救急団に喧嘩売るとはいい度胸だ」


 世界を壊して作り直す。病を患者ごと0に戻して別物に作りかえる。そんなことが万能薬だとでもいうのか。

 そんなことが罷り通り、誰かが涙を流すというのなら、俺は万能薬(エリクサー)という病原体を必ずぶっ倒す。

 

 そんな誓いのもと、帰路に着くのだった

 



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