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殺害予告

「大剣に炭酸……」

「全っ然…!抜け…!無い、な!」


 アルアが大剣を引き抜こうとして尻もちをつく。

 おいおい。抜いちゃったら傷が開いちゃうだろ。


「重すぎる…。なんの材質で作ったんだあいつは…」


 彼女は虚空を睨みながらある意味恨み節とも取れる言葉を発する。

 

「見た感じ、ただの鉄塊…に見えますが」

「どう考えたって違うよなぁ…」


 セノの言葉の続きを紡ぎつつ、ぶっ刺さってしまった剣を見つめる。

 残念ながらここから剣とのあまあまラブストリーなんていうものは始まるはずも無い。ぼくはかなしい。


「うーん。私の母国にもなかった材質だ」

「そうそう、アルアの母国ってどこなんだ?」

「気になりますね」

「む?話してなかったか?」


 アルアは驚いた顔をして、自分の故郷のことを話し始める。


「私の母国は、東の端に位置していてな。なかなかに珍しい国だと思う」

「東の端…ですか」

「ああ。山を隔てたその向こう…」

「ということはビグボール共和国のことですか?」

「いや違う。さらにその向こう。なんなら地続きですらない」

「そんな遠くに」


 女性2人の対話が続くがこの世界に来て日の浅い俺がその言葉の応酬についていけるはずもなく、ただ空気になるばかりだ。

 勉強、しようかな。


「私の母国は周りの国との国交も積極的に取っている方ではない。だからこそ、自国の文化は中々に独特で美しいものだと感じているぞ」

「話を聞いていると、いい国みたいですね。行ってみたいです」

「そうだな。是非あなたたちには1度訪れてみて欲しい。その時は私が案内してやろう」


 微笑みを浮かべ、アルアは言った。その顔はまるで可憐な花のようで可愛かった。



「よーし。今日の任務は?」

「お花の採取ですね」


 今日も元気にセノへ任務内容を聞く。

 今日も今日とて平和な任務だ。このまま何もない日が続いて欲しいが.....。

 実は任務がある日のほうが珍しかったりする...らしい。俺は働き者だから、そんな任務がない日なんてものに遭遇したことはないからよくわからない。

 

「私もついていくのか?」

「ええ。一応」

「わかった」

「場所は?」

「マデルの森です」

「あそこかぁ....」

「前の異変は収まっているのでしょうか。そのへんも一応見ておきましょう」

「なんだ。危険なのか?」

「すっげー危ないぜ。俺なんか死にかけたからな」


 黒い鎧の魔物....。未だ忘れることないあの戦闘はトラウマに成るほどでもないが、どうしてか気になり頭の中に今も残り続けている。

 まあ2日前とかそこら辺の記憶だからすぐに忘れてしまっちゃ健康面を気にすることになるわけだけども。


「君はいつもボロボロだな」

「無理はしない方がいいですよ」


 彼女らは口々にそう言った。

 

「とりあえず、装備は入念に揃えておきましょう。ここ最近はなんだか変な感じがするので」

「こいつはどうすんだ?」


 大剣を指差す。未だ不動に鎮座する迷惑ブレード。誰も抜けない以上放置しかないと思うんだけど。


「…誰も抜けないなら放置じゃないか?」

 

 ほら、アルアもそう言ってる。


「筋肉ムキムキマッチョメンならワンチャン…」

「ふむ…そういうことでしたらアテがあります」

「マッチョメンに?」

「ええ」

「ええ…」


 セノの謎の交友関係に困惑を覚える。

 俺にだってマッチョメンの友達はいないのに。


「街の通りの『パスタ勘六』にいきましょう。きっとそこにアルベルトさんがいるはずです」

「わかった。行こう」


 事態は即決してなんぼだ。すぐに行こう。



 照りつける太陽は俺たちにちょうどいい温度を提供し、住み良い環境をつくる。自然のサービスはやはり心地よく、慌ただしいはずの日常がなぜか穏やかな風景として見えてくる。


「アルベルトさんはいらっしゃいますか?」


 セノが総声を掛けると、立派な筋肉と小麦色の肌を輝かせた男が出てきた。

 まさに筋肉モリモリマッチョメンだ。


「hey!兄弟!俺を呼んでどうしたんだ?」


 キラリと光る白い歯も欠かせない。

 

「アルベルトさん。あなたにお願いしたいことがありまして.....」

「HAHAHA!なに、みなまで言うな兄弟!言いたいことはわかってる。なんて言ったって俺達は!」


 ムキッと筋肉が膨張し、肉体がより輝きを増す。


「ソウル・ブラザーズだからな!!」

「なあゲントク、この人ちょっと.....」

「すげえ....。かっこいい.....」

「お前もか.....」


 ここまでの肉体美、いや筋肉美に圧倒されない男がいるものか。やはり筋肉。筋肉はすべてを解決するのだ。


「おお!君もこの良さがわかるか!!」

「ああ!わかるさ!ブラザー!!」

「さすがだ!ブラザー!!」


 ガシッと握手を交わし、笑顔を向け合う。この時点で俺達はブラザーだ。魂の兄弟。すなわちソウル・ブラザーだ。


「ああ...。ゲントクまであっちがわに....」

「.....少し嫉妬してしまいそうですね」

「ええ.....」


 すごい筋肉だ。そばにいるだけで力強さがひしひしと伝わる。

 憧れてしまうな。こんな筋肉。


「良い筋肉だろう?俺の自慢なんだ!」

「ああ。最高の筋肉だ」

「こほん」


 セノが咳払いする。とても可愛らしい音だった。


「ああ。すまない」

「いえ、お構いなく」

「で、要件というのは?」

「あるものを引き抜いてもらいたいのです。」

「引き抜く....。俺の筋肉が...」

「ええ」

「わかった。俺の!筋肉が!引き抜いて見せる!!!」

「いい心意気です。では、案内しますね」


 セノは踵を返し、来た道を戻ってゆく。俺達もそれについて行った。



「この剣を引き抜く...ということだな?」

「ええ」

「OK!任せろ!!」


 威勢の良い声とともにアルベルトが柄に手を添え力を込める。

 それはまさに神話級。彼が込める力だけで周りの空気は歪み、みしみしと床まで音を立て始める。


「す、すげえ膂力だ...」

「彼の二つ名は「ピザ屋の息子にあらず(ヒズ・ノー・ピッザ)....。商店街で力仕事を任せるとするならばとの議題が上がるとき、必ずと行ってもいいほど彼の噂話(えいゆうたん)が語られるほどの人物....!」


 しかしそれでもびくともせず、依然かの剣は突き刺さったままピクリとも動かない。


「HAHAHA!!!!やるなぁ!ならば俺も本気を出そう......!。ふん!!!」


 その瞬間、弾けた。

 与えられたストレスが一気に開放され、例えるならば縛り付けていたものがなくなり解き放たれるように。

 彼の身にまとうすべてが、弾けた。

 見たこともないほどに隆起したその筋肉は滲む畔とともにぬら光り。力強さを存分に見せつける。

 もはや神々しいとも言えるその光景は、異様な光景であるという事実さえ歪め、美しい光景となる。


「服が……!」

「破けた…!?」

「私はもうついていけないかもしれない」


 剣が聳え立つ床の傷がメキメキと広がり、刃が動く。柄は少しづつ動き、ついに鋒が見えるようになってきた。


「うおおおおお!!!」


 雄々しい叫びと共に、ついに大剣が引き抜かれる。


「なあ、この剣どこに振り下ろすべきなんだ?」

「え?」


 アルアの純粋な問いに誰もが首を傾げる。

 どうしたもんか。


 上を見上げると、大剣の鋒が俺めがけてやってくるところだった。


「うおおおお!?」


 アルベルトと同じような雄叫びをあげるが残念ながらこっちの方が情けない。

 

「すまない!ブラザー!!」

「クナル!」


 白銀の刃がぬらりと光り、俺と接触するかと思われた寸前、目の前でふっと消えた。


「間一髪です…」

「収納魔法か」


 あるあの解説により原因が解明した。どうやらセノが収納魔法で収納してくれたらしい。

 便利だな。


「すまない、ブラザー。ケガは?」

「大丈夫」


 グッと親指を立て、無事をアルベルトに示す。

 サムズアップは笑顔の証。



「ありがとうございました」

「いいってことよ!なんてったって、俺たちは!」

「魂で繋がった!」

「「ソウルブラザー!!」」


 アルベルトと声が重なる。

 

 アルベルトは手を振り家へ帰っていった。


「では、我々も出発しましょう」


 そう言ってセノは収納魔法で収納していた剣を救生車の上部に落とす。

 がごんという鈍い音がなり、大剣は無事着地した。

 音的には無事とは言い難いと思うけど。


「だ、大丈夫なのか?あの大剣、すっごく重いんだぞ?」

「まあ大丈夫でしょう。この車、頑丈さについては折り紙付きですし」


 アルアの慌てた声に凛とすました様子で答えるセノ。

 けどどうみたって救生車の上部へしゃげてるんだよな……。彼女が大丈夫っていうなら大丈夫だろう。

 能天気に行こう。


「しかし…やはり重かったのですね。収納時とは比べ物にならないほど今は体が軽いです」

「なに?収納魔法ってそんなリュックみたいに中のものの重さが加算される仕組みなの?」

「なにはともあれ、出発しましょう」

「わかった....」

「了解した」


 全員が車に乗り込み、低くエンジンが唸る。中世ヨーロッパ風味なこの世界には似合わない鉄の塊が動き出す。



 車は緑を進んでいく。

 ナチュラルに行われていく豪快な森林破壊は道を作っていく。


「この間事が起こったのは....。この辺ですね」


 派手なドリフトとともに野原に停止する。後部座席のスライド式のドアが空き、中の空気が外の空気と混ざり合う。


「ここが例の.....」

「ああ。と言っても何ら異常は....」

「ないですね」


 野原の姿は依然と変わりなくのどかで優雅で軽やかだ。まさに平和という言葉が似合う草原に生える植物は風になびき牧歌を象徴するように揺れる。

 戦闘の痕跡すらなく、ここで起きたことが全てなかったことにされてるような印象さえ受ける。


「聞いてた話とはなんというか....その....」

「すげー激戦だったんだぜ?ほんとに死ぬかと思った....」

「あ、いや、疑ってるわけじゃないんだ」


「しかし、不思議なくらいに平和ですね。嵐の前の静けさというか....」

「たしかにな....」

「全然わからない....。俺は雰囲気でここにたっている」


 ざわり。風に包まれ和やかな静寂に包まれたこの土地に、一つの異質な音が入り込む。

 それが自然の音であることに変わりはないが、これまでの平和な時間に属さないという感覚がする。


「あれは...」

「スライム...ですね」


 この森にはいないはずですが、とセノが呟く。

 透明感のあるか体にスイカ一玉分くらいの大きさ、目も、口すらもどこにあるのかわからないそんな不思議な生物は、こちらを見つめるように佇んでいる。

 目がどこにあるかわかんないけど。


「刺激しなければ安全ですよ。稀に人の衣服を溶かして”悪戯”する個体もいるようですが.....」


 目がランランと輝いてるように見える。そして俺の本能が告げる。これ、俺以外の貞操が危ないと。

 しかし、その警戒アラートに気づくのは遅すぎた。


「あっ」


 ガバっとスライムは飛び出し、アルアに飛びついた。



 眼の前にあるのは一匹のスライム。

 私の故郷の読み物ではよく女性に性的な悪戯をしていたような魔物だ。

 要するに、捕まったは最後、 服を溶かされあられもない姿をさらすことになってしまう恐怖の魔物だった。

 無論、あのときダンジョンでひどい目にあったから、耐性はあると思う....あるとは思うが、それとこれとは話が別だ。

 なにより、ここにはゲントク(あいつ)がいる。そんなとこでそんな姿を見せるわけには......。


「あっ」


 ゲントクの拍子抜けしたような声。ふと我に返り、意識を外に向けると、半透明の青い物体...すなわちスライムが私に飛びかかっていた。

 

 「ふぐっ」


 なすすべなくぶよぶよべたべたぷるぷるした本体に塗れる。

 いや、なすすべなくというの少し語弊があるか。あのとき、よけようと思えば避けられた。

 だが、体が動かなかったのだ。

 彼の前で、恩人の前で服を溶かされ官能的なことをされる。それを考えただけで、腹の奥が溶けるように熱くなる。

 い、いやそんなことはない。私はそんな変態的な趣味を持ち合わせていない!断じて!


「おい!大丈夫....か...?」


 彼の声がしりすぼみになっていく。

 すでに触手とかしたスライムが服を溶かし尽くし、今の私は裸も同然。それにスライムが私の足を持ち上げ、混たを開くような形にさせているのだ。

 

「い、いやぁっ。だめっ」


 私の意思に関係なく、嬌声が漏れる。

 私のオープンになってしまった秘部を公開するように撫で回す。触手が動くたびに感じる稲妻にも似た甘美な刺激が私の気分を高ぶらせる。

 く、屈辱....。


「見ないであげましょう」

「い、いや!んっ、見てくれ!」

「え?」

「あ、いや違うんだ!あんっ」


 どうしてだ。屈辱のはずなのに、見られているというだけで、彼に見られているというだけで....。


「あんっ♡。らめぇっ♡」


 気分が高ぶって、どんどん、気持ちよく.....。


「流石にまずいんじゃないか?」

「ええ。ですがああいったスライムは自らが満足するまで決して離さないと聞きます」

「じゃあ燃やすか」

「彼女も燃えますよ」

「殴る」

「はるか彼方まで行きますよ。いいんですか?彼女の痴態を街中に知らしめても」

「うーん....」


 触手が私の小さい胸にまで到達する。敏感なところをすべてなぶられ、痴態を見られ、恥ずかしいはずなのに、その恥ずかしいという感情自体が彼に見られることによって快楽に変換されいく。

 

「よし!もう燃やすしかねえ!!」

「....加減はしてくださいね?」


 しごきが激しくなる。股のこすれはより早くよりダイナミックに変わり、愛液が媚薬のように刺激をより一層つよくする。

 ああ。彼が近づいてくる。

 至近距離で見られている。もっと見て。もっとよく。もっと、もっと。

 意識が薄れてゆく。

 彼の前で絶頂ってしまう。彼が見てる前で...、彼が私に意識を向けてるときに....!。


「あっ♡、いやっ♡、らめぇっ♡!」

「殴って燃やす!ちょっと名残惜しい気もするけど、まあいいや!」

「お”ほぉ”っ♡」


 お腹の奥から快楽が押し寄せ頭が熱くなる。

 

「だめっ♡もうむりっ♡絶頂っちゃうっ♡」

「爆裂....!!!!」

「お”お”お”っ♡」

「プレスオブワイルド!!!!」

「絶頂ぅーっ♡お”お”お”お”お”~っ♡」


 奥の波が溢れ出し、それと同時にスライムが弾け飛ぶ。

 私の裸体はスライムという覆いもなくなり、ゲントクの前に放り出された。

 絶頂しながら。


「だ、大丈夫か....?」

「あへぇ....」



「嫌な事件だったな」

「惜しい人をなくしました」

「もう....見ないでくれ....」


 隅っこで赤くなり縮まってしまったアルア。まあ、仕方ないか。

 

「よく倒せましたね」

「生物である以上熱が効かないわけがないからな」

「ゴリ押しですね」

「そうともいう」

「そうとしかいいませんよ」


 その刹那。銀色が殺気をたぎらせ俺に振りかざされる。

 

「っ!?」


 間一髪。ガラスでなんとかなったが、一体何がなんだか....。


「筋はいいみたいだな」


 低く、だが青年を感じさせる声が響く。


「だが...。それだけじゃだめだ」


 赤い髪の大剣を担いだ男は冷酷に告げた。


「トニザキ・ゲントク。お前は今日で解雇だ。金輪際、僕達には近づくな」

「.....団長」


 セノが彼を団長と呼ぶ。

 まさかとは思うが、彼が.....。

 その答えはセノの表情が物語っていた。


「これが守れないというのなら....殺す」


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