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女はみんな俺に惚れている? そう思っているのはあなただけです  作者: 青空一夏


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第9話 話の通じない男

 コルデリアがジークをバクスター公爵邸へ呼びつけたのは、襲撃事件からしばらくしてのことだった。

 いつものお茶会の日ではなかったが、ジークは急な呼び出しを深刻には考えていなかった。コルデリアが自分に夢中だと信じて疑わないジークは、上機嫌でサロンへ入っていった。

「コルデリア、急にどうしたんだ? そんなに俺に会いたかったのか?」

「……」

「まあ、気持ちはわかるけどさ。俺も副騎士団長で忙しいんだから、急な呼び出しはほどほどにしてくれよ」

 あまりにも思い上がった言い方に、コルデリアの眉がぴくりと動いた。

(何なの、この人。わたくしが恋煩いでもしていると思っているの?)

「いいから、そこへお座りなさい」

「なんだよ、機嫌が悪いな」

 ジークは向かいの椅子に腰を下ろしかけ、コルデリアの後ろに控えていたベラに気づいた。

「おっ、ベラじゃないか! もう大丈夫なのか? ずいぶん活躍したそうだな。なあ、コルデリア。こいつは優秀な騎士なんだよ」

 ジークは嬉しそうにベラへ歩み寄ると、包帯が巻かれた肩に腕を回した。ベラは痛みをこらえるように顔をしかめたが、逆らうこともできず、黙って頭を下げた。

「……はい。おかげさまで」

「ジーク様、ベラが痛がっていますから、離してください。彼女の傷は一生残るほどの深いものですのよ」

「ああ、そうなんだ。だが平民のベラが公爵令嬢を守れたんだ。光栄に思ってるさ。それに、肩に傷が残ったって、ベラなら嫁に行けるだろ。なんなら俺が妾にしてやってもいいぞ。はっはっは!」

 ジークは声を上げて笑った。

「……ジーク様はわたくしの婿になる立場。妾を迎えるなど身の程知らずですわね。今日はあなたにお話があります。今後、必要もないのにベラへ近づくのはおやめください」

 コルデリアは冷たい声で告げた。

「ふっ。冗談に決まっているだろう? なんだ、嫉妬か? 前からベラのことを気にしていたもんな。でも安心しろよ。こいつはただの部下だ。騎士団じゃ、このくらいのスキンシップは普通なんだよ」

「ベラは女性よ。普通ではありません。それに、わたくしは嫉妬しているのではなく、ベラが迷惑していると申し上げているのです」

「迷惑? そんなわけないだろ」

 ジークはようやくベラの肩から腕を離した。

「俺は侯爵家の出で、副騎士団長なんだぞ。そんな俺に目をかけてもらえるんだから、嬉しいに決まってるさ。飯だって何度も奢ってやったしな。こいつの家は金に困っているんだから、むしろ感謝してほしいくらいだよ」

 その言葉に、ベラは唇を噛みしめた。

 確かに何度も食事を奢られた。だが、それはベラが望んだことではない。上官であるジークの誘いを断れず、仕方なく付き合っていただけなのだ。

「ベラは喜んでいるのではありません。あなたの誘いを断れないだけですわ」

「嫌なら断ればいいじゃないか。こいつ、一度だって迷惑だなんて言ったことないぞ?」

「言えるわけがないでしょう! あなたは貴族で副騎士団長なのですよ。後ろ盾のない平民騎士が、上官の機嫌を損ねればどうなるか、考えたことはないのですか?」

 コルデリア自身、ベラから事情を聞くまでは理解していなかった。だが、ジークは悪びれる様子もなく肩をすくめた。

「大げさだな。俺がそんなことで怒るわけないだろ。それに、俺とベラは何年も一緒にやってきたんだ。なあ、ベラ?」

 突然話を振られ、ベラの肩がびくりと動いた。

「俺と飯を食うのが、そんなに嫌だったのか?」

「そ、それは……」

 ベラは言葉に詰まった。

 ここで嫌だったとはっきり言えれば、どんなにいいだろう。だが、目の前にいるのは長年逆らえなかった上官だ。コルデリアがそばにいても、そう簡単に恐怖が消えるわけではない。

「ほら、嫌じゃないだろ? むしろ自分の気持ちをうまく言い表せないほど嬉しいんだよ。光栄に思っているんだよな?」

 ジークは得意げに笑った。ベラは困り果て、助けを求めるようにコルデリアを見た。

「ジーク様! その聞き方が問題ですわ。ベラの困った顔を見なさい。どうして喜んでいると思えるのですか!」

「だから、こいつは俺に懐いてるんだって。俺が面倒を見てやったから、ここまでやってこられたんだ。ほかの団員がこいつに手を出さないのだって、俺のお気に入りだからさ」

 その言葉に、ベラは悔しそうにうつむいた。

 実際には、ジークに気に入られているせいで、ほかの騎士たちから嫌がらせを受けることも多かった。それなのに、本人は自分がベラを守っていると信じているのだ。

 コルデリアは、もはや呆れて言葉も出ない。これほど自分に都合よく物事を解釈する人だったとは。しかも、ベラがどれほど嫌がっているか、少しも理解しようとしないのだ。

「……もう結構です。とにかく今後、ベラに必要以上に近づかないでくださいませ」

「だから、それはコルデリアの焼きもちだろ? そんなに心配しなくても、俺の婚約者はおまえなんだからさ」

「焼きもちとか嫉妬とか、そういうことではありません!」

 鋭い声がサロンに響いた。

「やれやれ。婚約者様はよほど俺に惚れているのだな。安心しろよ。ベラが俺をどんなに慕っていようと、俺はコルデリア一筋だからさ」

 コルデリアは目の前の婚約者を見つめ、すっかり愛想が尽きてしまった。

(……この人、思っていた以上に話が通じないわ。どうしてこんな人が、わたくしの婚約者なのかしら)

 そもそも、これほど傲慢で思い込みの強い男など、自分にはふさわしくない。

 それに、ベラをこれ以上ジークの側に置いておくわけにもいかない。

(……そうよ。ベラを騎士団へ戻さなければいいんだわ。こんな男の部下でいさせてはいけない)

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いますよねー!女性が同性を性加害から守ろうとすると「シットすんなよwww」と歪曲する男。
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