帰郷 その1
お久しぶりです! ようやく執筆時間が取れたので、こちらも投稿させていただきます!
本日もよろしくお願いします。
俺たちはあの後必死に雷獅子を探したが、結局見つけることはできなかった。
あくまで奴の住処とされていた山においての話だけどな。乱入野郎に殺されたわけではなく、逃走したわけだから、探せばどこかにいるはず。
「でも、自分より上位の魔物から逃げる為に住処を捨てたんだから、簡単に見つかる場所にいるわけないよな〜。はぁ……」
「それは仕方ないですよ。だってあんなことがあったんだし……」
「まぁ、そうなんだけどさ〜」
俺たちは今ギルドの食堂で食べ物をつまんでいた。一度は様子を見たとはいえ、もしかしたら雷獅子の依頼を達成できたかもしれないのだ。なのにあいつに邪魔されたせいで雷獅子は遥か遠くへ……無気力になるのも仕方ないだろう。
「ま、今回は初の依頼失敗ってことで、良い経験になったんじゃないかい? 寧ろ今までが順調すぎたんだよ」
「まぁ、確かに……」
俺はボドワンさんの言うことに、物凄く納得してしまった。世の中上手くいく時ばかりが続くわけじゃないもんな。絶対に波があるもんだ。で、今回はその中で悪い波が来てしまったってだけの話。
仕方が無い、切り替えよう! そう思った俺は2人に向き直る。
「さてさて皆さん、今後はどうするおつもりで?」
「何だい? 急に」
「今後と言われても……今まで通り依頼をこなしていくんじゃ?」
2人の疑問ももっともだ。今更何を聞いているんだって話。でも俺は思うんだ。たまには冒険家業を休んだって良いじゃないかと。
「というわけですので、皆さん! 僕は一度帰郷します!」
「何だって!?」
「えぇッ!? 何ですかそれ急に!」
「いやぁ、申し訳ない。急に思い立っちゃって。そう言えば、ここしばらく実家に帰って無いなと思って。今年5歳になった弟のことも気になるし」
2人は俺の話を聞いて、物凄く混乱している様子だったが、最終的にはちゃんと話を聞いてくれる姿勢になった。
「なんだかんだで、突発的にパーティ組んじゃったけど、よく考えたら実家に帰ることもあるっていうのを2人に伝え忘れてました。ごめんなさい」
「い、いや別にそんな。僕は気にしないので謝らないでください」
アルは安定で俺の意思を尊重してくれる。彼本当に貴族なのか? と思ってしまう時がある。そしてもう1人ちゃんと了承を得るべき相手がいるわけだが、果たして……
「そうだね。実家に帰るのはとても大事なことだよ。別に反対なんてしないさ。だけど欲を言えば、こういうのはもう少し早めに言ってくれると、僕らも対応しやすいかな」
「そ、そうですよね。すみません」
「ははは、良いんだよ! 行って来なよ。しばらく帰ってなかったんだろ? 僕らは適当に依頼こなしておくか、自由に過ごしてるから」
俺はボドワンさんのその言葉を聞いて、本当に嬉しくなった。良い仲間に恵まれたなって。こんな突然の我儘も笑って許してくれる。アルもそうだ。だけどここで勘違いしちゃいけないのは、これはあくまでも気を遣ってくれてるってことであって、仲間だから何でも許してくれるってわけじゃないってことだ。
そのあたりのことをしっかり肝に銘じておかないとな。いつか自分の下から人がいなくなってしまうだろう。それだけは嫌だ。もう2度と誰にも相手にされない、何のために生きてるのかもわからない人生なんて歩みたくはないからな。
俺は2人に頭を下げると、家族に手紙を出す為に、急いで宿の部屋に戻った。そして手早く手紙を書いた後は、明日にでも出発できるように荷造りを始めた。
「あぁ、それに……。アイツにも会っとこうかな」
別に今は、依頼のために遠い街に移動しているとかでもない。王都にいるのだから、アイツに会いにいくのもありだろう。
というわけで、俺は家族の手紙と合わせて、とある人物にも手紙を書いた。相手は貴族だ。突然のアポなし訪問は迷惑千万だからな。というか不敬に当たる。平民のように急に家に訪ねて、
〜君あ〜そ〜ぼ〜! い〜い〜よ〜! なんていう世界とは訳が違うのだ。
因みに手紙というのは、街と街を移動する商人か、ギルドに出すのが一般的だ。前世のように文通や届け物の専門機関である郵便局なんてものは存在しない。
故に人々はみんな、その二つの機関を利用して手紙を出している。これも余談だが、ギルドに手紙を出す方が安上がりなのだ。商人に出すと少し割高になる。なので、利用人口の割合はギルドの方が多い。
俺は勿論ギルドに出した。冒険者だし慣れてるっていうのもあるし、何より普段からギルドや魔物の素材市場に貢献している冒険者は、福利厚生と言えば良いのか、とにかくそんな制度のおかげで一般人より更に安く、ギルドの手紙配送のサービスを受けられる。
そうして、ギルドで手紙を出してから数時間後、直ぐに宿に返事が来た。
当然、距離的に返事が来たのはあいつが先だ。俺の家族は王都外に住んでいるので、まだまだ届くまでに時間が掛かる。まぁ、そんなわけで一先ずあいつの家に向かうとしよう。
と言っても、あいつの家の場所はわからないので、向かいようが無い。なので、迎えに来てくれるみたいだ。というわけでここからは、俺のすることは特に無い。迎えの馬車が来るまでひたすら待機だ。
そうして宿で待機すること十数分。俺の部屋の扉を誰かがノックした。
「は〜い」
俺は返事をしてからすぐにドアを開けた。するとそこには、凄く身なりが良く、佇まいにも気品がある人物が立っていた。
「こんばんは。私、アラン様の専属執事のカジミールと申します。アラン様から、お話は伺っております。お迎えにあがりました。どうぞ宜しくお願いします」
「あ、こんばんは。僕はセドリックです。よろしくお願いします」
「はい。よろしくお願いしますね。それでは早速ですが、ご準備は既にお出来になっておられますか?」
「はい、お返事をいただいてから直ぐに準備しましたので、いつでも出発可能です」
「左様でございましたか。でしたら直ぐにでも参りましょう。アラン様が久しぶりのご友人との再会を待ちきれないご様子でしたので」
その言葉を聞いて俺は思わず笑ってしまった。そんなに急かさなくても、ちゃんと行くのにと思ってしまったからだ。そう、今回訪問するのは勿論、アランの家だ。せっかく今は遠征の仕事も無く、王都にいるんだから会っておこうと思ったのだ
「ははは、だとすると早く行かなければいけないですね」
「えぇ、できればそうしていただけると助かります。それでは、こちらへ」
俺はカジミールさんの案内で、宿の外に待たせてあるという馬車にまで向かった。そしてその馬車を走らせること約15分。ついにアランの家に到着した。
「到着でございます、セドリック殿」
「ありがとうございます」
カジミールさんに開けてもらった扉を潜り、馬車を降りると、騎士爵家にしてはデカい屋敷が目に入った。少し失礼な感想を抱きつつ、カジミールさんの後ろについて歩きながら、屋敷に案内してもらう。
そして屋敷に入り、中を歩くこと数分。
「セドリック殿、アラン様のお部屋に到着いたしました」
どうやら目的の場所にいよいよ到着したようだ。
コンコンコンッ
カジミールさんが入室許可を求めるノックをする。そして数秒後に、
「は〜い、どうぞ〜」
あれから少し声変わりしたのか、記憶にあるアランの声より数段低い声が聞こえて来た。とても時間の流れを感じる。
そんなことを考えているうちに、カジミールさんが"失礼します!" と声をかけてから扉を開いたので、それに続いて俺も入室する。
するとそこには俺よりも頭半個分くらい背が大きくなり、肉付きも良くなった懐かしの友人が居た。
「やぁ、セドリック! 一年と少しぶり、かな?」
「えぇ、そうですね。アラン様もお元気そうで何よりです」
「?」
俺が突然、改まったような言い方で挨拶を返したのでアランは困惑の表情だ。だが忘れてはいけない、ここはもう権力の影響力が及ばない学園内でも無いし、俺の斜め後方にはカジミールさんが控えている。
公の場での対応をするのは普通だろう。俺のそんな考えが伝わったのか、納得した表情になったアランは、カジミールさんに声をかける。
「カジミール、すまないけど席を外してくれるかな? 2人で色々と話したいこともあるし」
「承知いたしました。では何かご用がございましたら、いつでもお呼びください」
「うん、ありがとう」
「それでは、失礼致します」
こうして第三者の目がなくなったところで、俺たちは昔の態度に戻った。
「ビックリしたよ。まさか、セドからいきなりあんな冷たい態度を取られるとは思ってもみなかったからさ」
「ははは、それはお前、時と場合ってヤツだよ」
「だよね! 確かにそうだ。さっきのは僕の配慮が足りなかったね。来てもらった時点でカジミールを下げるべきだった」
「良いんだよ。最終的には、こうして2人でゆっくり話せてるんだから」
「そうだね」
そこまで話すと、不意にアランが黙って俺のことを見つめる。数秒見つめた後、
「ははは、相変わらずだな〜。少し見ないうちにまた強くなったね、セド。背も大分伸びたし、身体つきも良くなってる。何より佇まいから、今までの冒険者生活で凄まじい経験を積み重ねて来たんだろうことは直ぐわかったよ」
「ははは、そう言ってもらえると嬉しいよ。でも、それはお前にも言えることだろ? 見りゃ分かるよ、お前相当強くなったろ? どんな訓練すりゃそうなんだよ、ははは」
「まぁ、お互い様ってヤツだね。それよりさ、立ち話もなんだし座ってよ。あとで両親にも紹介したいし」
「先に挨拶に行かなくて良いのか?」
俺は優先順位に違和感を覚えたので、聞いてみた。すると、
「あぁ、大丈夫。既に父上と母上には、今回の件を伝えてあるんだけど、ゆっくり再会を楽しんでから、少し顔を出してくれたら良いって言われてるんだ。父上に関しては、そもそも僕より忙しいからあまり時間は取れないしね」
「そうか、じゃあお言葉に甘えようかな」
「是非是非」
そうしてなんの心配も無くなった俺は安心して友との再会を楽しんだ。




