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魔物の異変

お久しぶりでございます。大変長い間更新をお休みしてしまい、申し訳ありません。代表作の方も完結しましたので、こちらの更新もゆっくりではあるかもしれませんが再開させていただきます。今後とも、宜しくお願いいたします!

 俺たちが雷獅子を狩るために山に入ってから約2時間、ターゲットがいると言われる山頂を目指して歩き続けている。そして当然だが、その間にも魔物に襲われることはある。


 今の所、襲撃があったのは3回。どれも大したことはなかった。しかし気になるのが、


「ボドワンさん、今までの3回の襲撃……」


 俺がボドワンさんにそう話しかけると、向こうも同じことを思っていたらしく、頷きが返ってきた。


「そうだね、強さがどんどん上がっていた」


 やっぱりな。そんな感じがしたんだよな。今のところはまだ青銅星級くらいの弱い魔物がメインなんだが、何体か強めの個体もいた。



「勿論上に行くほど環境が過酷になるから、敵が強くなるのは自然なことだけど、それでも僕達がいるのはまだ山の中腹程度……そんなに強い魔物は出て来ないはず。しかしさっきの襲撃で、確実に赤星級に足を踏み入れてる魔物が何体かいた。何かが起きているのか……?」

「分かりません。でも警戒すべき、ということだけははっきりと分かります」

「僕もそう思います」


 俺の言葉にアルも賛成の意を示した。それに対してボドワンさんも頷くことで返事とする。


「さぁ、2人とも。今日の冒険はまだ始まったばかりだ! 気を引き締めながら、楽しんでいこう!」


 ボドワンさんが俺たちのパーティがモットーにしている言葉を口にした。結成時に決めていたんだ。


 冒険者というのは仕事ではあるけど、あくまで目的は"未知の発見" それは魔物に関してもそうだし、お宝や遺跡などの歴史的発見もそう。そういったロマンを追い求めるのが冒険者。


 だから俺たちのパーティのモットーは "真剣に楽しむ"

ということだ。


 そんなわけで俺たちが決めたモットー。聞いただけでワクワクしてくるだけでなく、やる気も漲ってくる。俺とアルはボドワンさんのセリフにこれでもかというくらいに元気よく返事をした。


「「はい!!」」




 その後も順調に探索を進めた。やはりというかなんというか、強い個体もさっきより多くで始めた。しかしパーティ全体のレベルが高いので、結構対処できている。良い感じだ。

率直な意見としてそう思う。



 そうこうしているうちに昼になった。昼食を食べる為に適当な場所を見つけ、俺たちはそこで体を休めた。


「それにしても、今回は何事も無くアルが昇格できて良かったですよね」


 俺がボドワンさんにそう声をかけると、頷きが返ってきた。


「そうだね。ひとまず伯爵が組合に圧力を掛け、裏から操ってるっていう一番最悪の事態にはならなかったわけだしね。初めは危険だとか他人の家の事情に首を突っ込みすぎたとか、色々考えたけど、結果的に動いたことによって状況が良い方向に向いてくれたよね」


 俺とボドワンさんの会話にアルは申し訳なさそうな顔をして、謝罪してきた。


「すみません、色々とご迷惑をおかけしてしまって……」

「いやいや、別にアルは何も悪くないって! むしろこの話題を出してしまってごめんな。もう考えたくないだろうに……」

 

 別に謝らせたかったわけでは無いので、慌ててフォローする。


「いえ! それこそセドさんは悪く無いですよ。セドさんもボドワンさんも僕のために動いてくれたわけですから。感謝こそすれ、悪く思ったりなんてしませんよ」

「そ、そっか。そう言ってくれると嬉しいよ」

「僕もだね。みんなで頑張った甲斐があったってもんだ」



 そこまで話している中で、今回本当にボドワンさんと話したかったことを思い出した。


「そう言えば、俺が話したかったことは今の話とは別のことなんですけど、良いですか? いや、まぁ完全に関係ないかと言えばありますけど」

「うん、言ってみてくれ」


 アルは今回の階級のいざこざはさっさと忘れたいだろうけど、我慢してもらう。


「俺、実は今回のアルの階級のことで、もし最悪の場合の想定が当たっていた場合、下手すると組合側の人たちの家族や知り合いが狙われているかもしれないという可能性も考えてたんです」


 俺がそう言うと、ボドワンさんもアルも真剣な顔をして俺の話を聞き始めた。


「確かに、組合だって小さな組織じゃない。むしろ大きい組織だ。そんな組合にもし圧力を掛けられるとしたら、やはり効果的なのは "人質" だろうね」


 俺はボドワンさんの言葉に頷く。そうなのだ、これこそが俺が一番心配していたことなのだ。だけどまぁ、今回はあっさりと組合の人たちも情報を喋ってくれたし、おそらくだがそういう枷も無かったのだろう。


 俺としてもアルの家族がそんなことに手を出していなくて正直ホッとしている。アルに酷いことをした奴らだけど、それでも実の家族なんだから……


「ごめんな、アル。こんなキツイ話を聞かせてしまって……」

「はい……大丈夫です」


 うん、大丈夫じゃないな。あからさまに気にしてる。そりゃそうだよな。本来ならこんな話、あるに聞かせる必要ないもんな。そういう話はボドワンさんと2人で話せば良い。


 だけど今回アルにも話したのにはちゃんと理由がある。何も意地悪でこんな話を聞かせているわけじゃない。


「アル、人というのは追い詰められると何するかわからないだろ? 普段ならそんなこと絶対しない! っていう人でも、冷静で無くなると思わぬ行動に出たりすることもある。だからさ、今回は特に何も起こらなかったけど、あくまでそれは一時凌ぎだ。今後もしかしたら君のお父さんが道を本格的に踏み外す可能性が無いとも言い切れない」


 俺がそのように言うと、アルは"ですよね……"といった顔になった。うぅ〜、大事なことを伝えようとしているだけなのになぜか罪悪感が募っていく……ホントにごめんよアル。


「だからさアル」


 俺が再度声をかけると、アルは俺をまっすぐ見据えた。


「その時はみんなで止めてあげよう」


 俺のその言葉にアルは目を見開き、驚いたような顔をする。


「良いんですか? 今回だってものすごく助けてもらったのに……」


 あぁ、アルの驚きポイントはそこなのね。でもそんなの決まってんじゃん。


「俺たちパーティだろ?」


 俺がそう言うと、ボドワンさんは微笑みながら頷き、同意を示してくれた。そしてアルも先ほどよりも顔色が良くなった。


「よし! そうと決まれば、この話は一旦おしまい! 取り敢えず今は目の前の依頼に集中していきましょうか」


 俺がそう宣言すると2人とも力強く頷いた。これでアルも少しは気が楽になっただろうか。いくら俺たちが気にしないで良いと言っても自分のために他の人が苦労してたらそりゃ申し訳なくなるもんだ。


 でもそこでいっそのこと、今後も助けるから一緒に頑張ろうぜ! と言われた方が仲間意識も生まれて気が楽になるんではないだろうか。頼っても良いんだと思うことで、少しでもアルが変な気を使わずに済めば良い。




 というわけでまぁ、今回の話はこのくらいにしておいて、依頼の目標が住むエリアまではまだ時間がかかりそうなので、そろそろ休憩も終わりにして登山を再開しようとした、


 まさにその時……



 ドゴゴゴゴゴッ!! ゴロゴロゴロゴロッ! バシーッ、バシバシバシバシッ!!



 突然目の前に蒼白(あおじろ)い閃光が走り、目が眩んだ。そして、


 ドゴーンッ!!


 何か重くて大きな物体が着地したような音が鳴り響いた。俺は何事かと思って砂埃が目に入らない程度に目を薄く開くと、そこには思わず息を呑む光景が広がっていた。


「ガルルルルッ……」


 薄い黄色の肌とバキバキの筋肉に覆われた力強い印象を受ける胴体に、額から2本の大きな角が生え、後頭部から背中にかけて、蒼白い雲のような形のふわふわとした鬣が生えている。ただしふわふわに見えるその鬣は、決して触れてはいけないものであることは俺にだって分かる。


 何故ならその鬣は蒼い稲妻がバシバシと音を立てながら(ほとばし)っているのだから。


 見た瞬間にわかった……つまりコイツは、


「いきなりお出ましのようですよ! ボドワンさん!」

「あぁ、そのようだね! 何故こんな山の中腹で出くわすのかとか、僕が狩ったことのある個体より明らかにデカくない? とか、色々突っ込みたいところはたくさんあるけど、とにかく獲物が自分から出てきてくれたんだ! 好都合だよ」

「こんな予想外が好都合なんですか!?」


 俺もボドワンさんもアルも、ひとまず後ろに飛び退きながら今の会話を交わす。そしてボドワンさんの言ったことは俺も思った。まず、魔物の資料に目を通して得た情報より数段デカいこと、そしてコイツは本来ならば、山の頂上に住処を作る魔物のはずなのに何故かこんな場所で出会したこと。


 色々疑問はあるが、まず今は依頼目標であるコイツを倒すことに集中しよう。

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