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アルセーヌ昇進!

 俺たちが組合にアルのことで直接話を聞きに行ったあの日から早数日が経った。


 今日は俺らのパーティにとって重要な発表がある。それは、アルの正式な階級が決まりました!


 今回昇進するアルの階級は俺と同じ蒼星級のようだ。まずは1階級ずつ上げていくことにするらしい。しかし今までの功績も加味すると、すぐにでも白星級にまでいく可能性は十分にあるらしい。


 俺もウカウカしてられないな。そう思うと同時に、このパーティって実は結構レベル高いんじゃ無いか?とか思ってしまったりもする。それって裏を返せば、俺も実力者って自分で言ってることになるんだけど、まぁそれはこの際どうでも良い。


 とにかく、今はアルの階級が上がったことを素直に喜び、祝福しよう。


「おい、また階級が上がったやつがいるらしいぞ!」

「え? もう? この間上がったやつがいたばかりじゃないか! もしかして今回もまたセドリックの野郎か?」


 野郎ってなんだよ、野郎ってよ。失礼な"野郎"どもだなおい、どつき回すぞコラ!


 なんて冗談はさておき、もうすぐアルの階級が発表される。


「今回階級が上がったのは、この方です」

 

 おお! という歓声と共に、俺じゃないのか! という言葉も聞こえてくる。まぁ、最近の俺の実績から考慮して、階級上がるイコール俺と考えてくれるのは、悪い気分ではないよ。でも今回は、


「アルセーヌだってよ! そういや赤星級の良い感じの小僧がいたな確か! そうかそうかあいつも階級上がったのか!」

「でも確かコイツって階級が何故か不相応に上がらなかったやつだよな?」

「そうだよ。俺も一緒に討伐依頼に行ったことあったけどよ、結構やるぜコイツ。なのに何故かずっと赤星だったからおかしいなと俺も思ってたんだよ」

「まぁ、なんか事情があったんだろうな。それにしてもめでてぇことじゃねぇか! 俺らもいっちょ頑張るか! 負けてらんねぇぞ!」


 アルセーヌの階級昇格に湧き上がるギルド。俺も自ずとテンションが上がってきたので、早速みんなを引き連れて依頼に行く準備に取り掛かった。



「それで、今回はどんな依頼に行くんだい?」

「はい、今回はちょっと大物の依頼を手に入れたので、それに挑戦してみようかと」

「セドリックさん、依頼の内容は?」

「うん。それはな、雷獅子(らいじし)って魔物を狙おうかと思ってさ」


 俺の言葉に2人はかなり驚いたような顔をした。そりゃそうさ。今回の獲物は蒼星級の中でも最高難易度の依頼。俺やアルがギリギリ受けられるランクの依頼だ。


「雷獅子とは、これまた大きく出たね。分かっているとは思うけど、容易い相手では無いよ? 雷獅子は、奴が出没する地域では、土地神級の強さだ。多分、白星級でも油断すれば……その先は言わなくても分かるだろう」

「承知の上です。着いて来てくれますか?」

「僕としては問題ないよ」

「僕も」


 2人の返事に俺も頷いて応える。互いの意思確認ができたところで、今まで黙っていたジスランさんが話しかけてきた。


「お前ら、こっからは大丈夫そうか?」


 それは、勿論だが雷獅子のことについてではないだろう。アルの件についてだろうな。だがそれは指名依頼をなるべく受けないと言うことで、一旦は話がまとまったのだ。これ以上、彼の手を借りるわけにはいかない。


 そんなわけで、


「はい、大丈夫です。後は僕らでなんとかします」

「そうか。それじゃあ雷獅子、気をつけて狩ってこいよ」

「はい」


 俺がジスランさんにそう返事をすると、今度はアルが口を開いた。


「ジスランさん!」

「ん?」

「本当に、何から何までありがとうございました!」

「良いってことよ。気にするな。また何かあれば、声をかけてくれ」


 アルのお礼にジスランさんはカッコいい返事をして、すぐに踵を返してどこかへ行ってしまった。


 去り際もカッコよすぎだろ……そう思わずにはいられないほどの男前っぷりである。





 さてさて、ジスランさんとも別れて、俺たちもいよいよ行動開始だ。


 せっかくアルの階級も上がって受けられる依頼も増えたんだ。しっかり稼いでいかないとな。


「まず必要なものとか買い揃えましょうか」

「そうだね。一番は避雷の外套だねこれがなければ何も始まらないし、何も出来ずに死ぬだろうね」

「そんなにヤバいんですか?」


 アルのその質問にボドワンさんは、顔をより真剣にしながら答えていく。


「まず第一に雷というのは、鋭く光るので視認することは可能でも、動きを捉えるのはかなり難しい。形を加工して放つような魔法なら話は別だろうけど、ただ雷を放つような魔法なら、ほとんどの場合が広範囲攻撃で、自分も含め周囲一帯に攻撃している場合が多い。そうなってくると自分に飛んでくるかそうでないか、判断がとても難しいんだ」


 俺とアルがゴクリと唾を飲む音が聞こえた。だがボドワンさんはお構いなしに話を続ける。


「その上、一撃は凄まじく重く、破壊力抜群なんだから油断も隙もない。他にも色々あるけど、取り敢えず今まで戦って来たような雑魚魔物とは、訳が違うのは分かったかい?」


 俺もアルもほぼ同じタイミングで首を縦に振った。こういうのはマジで年長者の言うことを聞いとくのが得策だ。俺はかなりの経験を積んできた自負があるが、それでも所詮若造であることには変わりない。


 こういう危険な仕事は焦って勇んでと、ドツボにハマるほど死にやすい。パーティのリーダーは俺ということになってるけど、今回の主な指揮はボドワンさんに頼もう。

 その方が間違いが圧倒的に少ないだろう。


「油断大敵、ですね。分かりました。今回はボドワンさん主導で依頼を進めていただけますか?」


 俺のその言葉に、ボドワンさんはしっかりと頷いた後、


「任せてくれ。しっかりやり遂げてみせるさ。アルもそれで良いかな?」

「僕はお二人が決めたことなら文句ありません」

「別に意見があるなら言ってくれても全然構わないんだよ?」


 アルの返答に些か将来が不安になるものがあったので、俺はそう答えた。だが、返答は思ったよりもまともなものだった。


「いえ、不満があるのを我慢したりとかいう訳ではなく、単純に賛成することしかない意見ばかりなので、お二人に反論する気など起きないということです」

「ああ、そうなの?」

「はい」


 曇りなき眼でそんなこと言われたら、これ以上何かいう気も起きないというものだ。本人が良いなら良いか。


「了解、じゃあこれで行こう。ボドワンさん、お願いします」

「あいよ!」



 


 そうして俺たちは雷獅子がよく目撃される、とある山脈を目指して出発した。



 馬車を飛ばすことおよそ3日。ようやく目的の山脈に辿り着いた。一言で言い表すならば、壮大で荘厳。ちゃんと対策して登山しなければ、確実に死者が出る山である。


 その上で魔物も出てくると言うのだから全く笑えない。でも、俺たちはここに来た。雷獅子を倒すために。


「皆、普段よりも気を抜かないように。山は常に死角が多い。いつどこから魔物が飛び出してくるか分からない。不意打ちを喰らえば確実に終わりだ。しっかりね」

「「はい!」」



 俺とアルが同時に返事をし、ボドワンさんはそれを確認すると、すぐに登山を再開した。


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