演武
お待たせしました! 最近更新が遅くなってしまい申し訳ありません。
俺とアニエス、アラン及びその他の一年生メンバーは観客席で四年生や三年生が披露する演武を見てはずっと感心させられていた。
(なるほどな、ただ闇雲に自分の実力を見せれば良いってわけでもないんだな。美しさ、流麗さ、細かな技術とかも評価対象なんだな)
そしてそこで気づいたことがある。それは、この四年生や三年生から競技が始まる制度は一年生やまだ若干不慣れな二年生に先輩がお手本を見せるためのものではないのかということ。
俺たちはどんな競技が行われるのかは伝えられているが、その具体的な立ち回り方は教えられていないし、教えられても訓練期間がなかったので意味はない。
なのであえて先輩たちのやっていることを見せて、どんなふうに取り組めば良いのかを教えるためなのかも。
(まあ、効率がいいとは言えないけどな)
取り敢えず、今やるべきなのはこの種目を無事乗り越え、最下位やより下位の順位に落ちないことだ。
今俺たちの国は5位だからな。
各国の順位は大体こんな感じ。1位・雷の帝国 2位・闇の魔導王朝 3位・光の聖王国 4位・風の連邦帝国
5位・俺たち 6位・炎の王国 7位・氷の王国
8位・大地の皇国
俺たち一年生は比較的順調なんだけど、三年生と二年生の相手が強すぎて中々勝ち上がれていない。
ホームの国で下から順位を数えた方が早いっていうのはかなり屈辱的だ。
何とかこの状況を挽回しないと。今の状態は決して戦力が弱っている水の王国にしては頑張ってるじゃん、と安心できないものだ。いつ各国の代表たちがこの国での生活や雰囲気、風習に慣れてきて本領を発揮し出すかわからないからな。
それに聞いた話では大地の皇国や炎の王国は武の面で弱いわけではない。氷の王国もそうだが、これらの国は比較的他国への野心が少ないので、こういう示威行為的なイベントでは本気を出さないようだ。
なんせこのイベントは各国の生徒が自分の国で勉強と訓練をしっかりと研鑽してきたことをアピールする場でもあるが、それと同時に他の国に対してウチの国はこれだけ次世代教育も充実しているんだぞと見せつけるためでもあるようだからな。
この事実は貴族の一員であるアランやオーレリアンから聞いたものだ。
(大変だね〜、お国のお偉いさんたちも)
俺はそう思う他ない。
そんなわけで、いつ何かの拍子に自分達よりも下位の国が本気を出し始めるかわからない。そして自分達よりも上の国にこれ以上差をつけられてはいけない。
(もっと気を引き締めていかないとな)
時は過ぎ、いよいよ一年生の俺たちの出番だ。今の自分のパフォーマンスがどの程度なのかというのは少し興味がある。正直ダンスとかそう言った芸術系は大して興味もなかったし練習もしてこなかった。
だがそれはやらなくてもいい環境下にあったからであって、今のように芸術性が求められるパフォーマンスをしないといけない場合、興味ないからやりませんは通用しない。
なのでそれならいっそ自分がどれほどできるのか試してみたい。そう思った。だから炎魔法特有のパワーと派手さを重視したパフォーマンスを展開し、どこまで上に行けるか挑戦してみようと考えている、というわけだ。
続々と各国の一年生の代表たちが会場に集まってきた。待ちに待った第二戦だ。
思う存分楽しもう。
司会の合図と共に早速第二種目の演武・一年生の部が始まった。みんな各々のやり方で素晴らしい芸術を魔法で生み出している。
空中でただひたすらに電気を迸らせたかと思ったらいきなりその電気を円球に変形させて弾けさせる、なんて真似までした猛者もいた。
ものすごい精度と綺麗さだ。やっぱりこのレベルの生徒になると、初めてやれと言われることでもある程度こなせてしまうものなんだろうな。
(いやまあ他人事みたいに言ってるが、俺もやらなきゃいけないんだけどな?)
そう自分に自分でツッコミを入れる。本当に感心している場合ではないのだ。
しっかりやらねば後のメンバーが苦労する。今回の種目、どちらが早く〜を出来るか! みたいなものではない。
単純に生徒全員が演武を披露して審査員が評価し、最終判断を下す形式だ。
なので前の種目のように誰かが失敗したら他のメンバーがフォローする、なんてこともできない。
しっかりとやるべきことをこなそう! そう認識を新たにし、待ち続けること数十分、
ようやく俺の出番が来たようだ。俺は闘技場に姿を見せる。すると大きな歓声も聞こえてきたが、中にはまだ水の王国の代表なのに炎魔法使いだなんて! と声高に異議を唱えている者も居た。
(ホントよくやるよ……)
そういった感想しか出てこない。これほど俺のことを認めてくれた観客がたくさんいる中で、批判の言葉を述べてくるとは……
むしろその度胸を尊敬するよ。
まあどうでもいいことを考えていても仕方ない。今は演武に集中しよう。
舞台の真ん中に移動して軽く準備運動をする。そして目を閉じてどういったパフォーマンスにしていくか大雑把に頭の中にイメージする。
それらが終わったちょうどその時、まるでタイミングを見計らっていたかのように開始の合図が宣言された。
俺はまず、目の前に青色になるまで酸素を大量に含ませた炎を発生させた。
そしてそれを空中に打ち上げ爆発させる。蒼い花火が派手に咲き誇る。
その後、炎を細い鞭のような形状に変形させ、それを縦横無尽に振り回す。
ただ乱雑に振り回しているように見えるかもしれないが、実は緻密に動きを計算して自分が喰らわないようにしながら立ち回っている。
そのことに観賞者たちも薄々気付いているのだろう、感心するような声が聞こえてくる。
そしてフィナーレには炎の槍の魔法を空中に4本打ち上げ、その後落ちてきたタイミングで爆発させる。
その際に自分は一歩前に出て両手を精一杯広げる。これがかなり受けたようで観客は大興奮の様子。
(なんとかやりきった……か?)
俺は左足を一歩引いて右手を胸に添えるという、前世でよくありがちな紳士がしそうな敬礼をした。
手応えはあった。自分で言うのはなんだが、かなり良かったのではないかと思う。
控え室に戻る時にオーレリアンとすれ違った。その際に『実に素晴らしい演武だった。初めてだとは思えない完成度だったな! これは観客にセドリックの演武の興奮の余韻を冷めさせないようにするのが大変そうだ』とか言って笑っていた。言葉とは裏腹に、態度は気負っている感じはしなかった。
面白いやつだ…素直にそう思った。敬意ってこういう人に対して示すものなんだろうな。
ただ権力や財力に溺れているだけの貴族なんて尊敬に値しないしな。
こうやって平民であっても頑張りを認めてくれる貴族がいるのはありがたいことだ。
俺は丁寧に敬礼を返して頑張ってくださいとだけ伝え、シンプルに挨拶を終わらせてから控え室に戻った。




