次の種目
俺たちは取り敢えずは雷の帝国との試合に勝てた。みんな嬉しそうでよかったよかった。
やっぱり何事にも勝つって嬉しいよな。次の種目までは時間もあるし、みんな各々ここが良かっただとか、ここが悪かっただとか話し合ってる。
そしていつもよりにこやかだ。
そしてそんな戦勝ムードの中、俺はとあることに気づいた。アランが試合中に身体強化系の魔法を使っていたことだ。一般客の多くは試合に夢中で気づいていないようだったけど、何名かの鋭い大会関係者たちはこのアランの稀有な才能に気づいているようだった。
何故こんなに大げさに話題に出しているかと言うと、以前俺が序列決闘をフランツに申し込まれた時、俺は身体強化系の魔法を使った。
しかしバスチアン教授はそれに対してとても驚いていたようだった。それもそうだろう。
何故なら本来、強化系魔法は高学年で習い始める魔法だからだ。故に相当裕福で良い家庭教師がいる、とか言うような家じゃないと普通は教えて貰えないし、と言うかそもそも原理が難しいので、低学年には習得は困難なんだそうだ。
だけどそれが出来ていると言うことは紛れもなくアランは凄いのだろう。
俺は単に前世のイメージからなんちゃって身体強化を使ってみたらマジで習得しちゃったってだけだから才能とは言えない。ある意味ズルだ。
けど、アランは本当に凄い。実際、他の観客席で見ている大会関係者たちの目はアランを慎重に品定めしている感じだ。
(アランはこの大会後、かなり引く手数多になりそうだな。父親が引退して騎士爵を継いだ後、学園トップクラスの成績を買われて内政に向かうか、このままの流れで父親と同じ近衛軍に所属するか、ってのが1番可能性が高いか)
まあどんな道を選ぶにせよ、俺は1人の友人としてアランをずっと応援する。
そんなことを考えながら闘技場付近に出された出店をブラブラしているとふと誰かにつけられているような気配を察知した。俺は何となくそうしているという様子をしっかりと演出しながら出店地帯を抜け出て路地に入った。
流石にここまでくると向こうも俺がお前らに気づいているぞと暗に警告しているのを悟ったのか、変に慎重に近づいて来ずに普通の足取りで近づいてきた。
「何か用か?」
俺は後ろに振り向くことすらせず背中を向けたままつけてきてた奴らに声をかけた。
「ははは、流石この学園の一年生最上位の生徒だ。いつから気づいていた?」
「出店がたくさん出てるあたりからかな?」
「まさかそんな前から見抜かれていたとは……なあ、お前たち。これは私の腕が落ちたのか? それとも彼が凄いのか?」
俺をつけてた男は後ろにいた付き添いらしき人物たちにそう尋ねた。
「後者以外の理由があり得ましょうか。貴方が尾行でバレるところなんて見たことがありませんよ」
「あ、そっか。言われてみればそうだな。なるほど、ありがとう」
なんかものすごい情報が今耳に入ってきたぞ……今まで一度も尾行がバレたことがないだと?
そんな人物の気配に気づくことができたのを喜ぶべきなのか、はたまた凄腕の暗殺者か回し者か何かかと警戒すべきか……と言ってもそんな輩を送り込まれるような悪いこととか危ないことをした覚えはないけど。
「それで? 結局あんたらはなんのようなんだ?」
「おお、そうだった。忘れていたよ。要件はね……」
男はそこまでいうと、ボッ! っといきなり人差し指の先に火種を作った。
俺はすぐさま後ろに飛び退いて、剣の柄に手をかける。そして少しずつ魔力を放出する。
大丈夫だ、人のいるところからはちゃんと離れてある。この学園は私的な決闘などは禁止だけど、正当防衛に関しては絶対的に保護される。
なのでここで魔力を使ってもいきなり処罰されたりはしない。よし、冷静な頭でそれらの重要事項を判断していざ! と思った時、
「あ、ちがうちがう! 戦うとかそんなんじゃないよ?」
「へ?」
俺は意味がわからず、無意識のうちに間の抜けた声を出していた。
「ならどういうつもりだ?」
自分でもかなり驚いている。俺はまだ10歳なのに大人がビビる雰囲気を出しているようだ。
現に俺がそれ以上来たら剣を抜くという意思表示をしながら問いかけるとあからさまに俺に声をかけてきた男たちは一歩後ずさった。
「驚いたね、子供でそこまでの威圧力を纏うとは……。いいだろう、結論から言おう。君、炎の王国に来ないかい? 見てわかると思うけど、我々は炎の王国の者だ」
「それ、国際問題になるやり方じゃない?」
「おっと、そこにまで気づく? 君本当に子供?」
「ご想像にお任せするよ」
実際のところ、この男の指摘は的外れじゃないからな。俺は前世も含めるととっくの昔に20歳を超えてる訳だし。
でも俺としては普通に思いついたので指摘しただけなのだが……。そもそもだ、いくら俺が彼らと同じ炎属性使いだと言っても、大会中に他所様の国の戦力を引き抜くなんて真似は御法度中の御法度だ。
俺らくらいの子供でも考えれば、教えられればすぐにわかるような範疇でやばいことをこいつらはしている。
まあ、中には鈍い子もいるかもだけどな。
「とにかく、あんたの提案は受けられない」
「そうなのか……こんなことを言うのは失礼かもしれないけど、てっきり複雑な立ち位置だから周りから爪弾きにされてたりするんじゃないかと思っていたんだけど。そして私の主人がそれなら生き生きと暮らせる国の方がいいだろうと言うことで君の保護を申し出ているんだけど?」
「つまりあんたらの所属を教えたのも、後ろに誰かいるというのを教えたのも、全部自分達が間違ったことをしている訳ではないから隠す必要もないと思っているわけか。それにしては無茶しすぎじゃない?」
「いや〜、あははは。それを言われるときついなあ」
まあ、なんとなく話はわかった。俺は将来冒険者になるのもいいかもとか思っているので、炎の王国は悪そうな国じゃない(?)とだけ頭の中に記録しておこう。
「とにかく今のところはその気はないとだけ言っておくよ。もしかしたら今後なんらかの理由でそちらにお邪魔するかもしれないけど」
「こちらとしてはそれでも歓迎さ。取り敢えず勧誘は失敗ということだけ主人に伝えておくよ。ああ、それと……」
「このことは黙っておくよ。俺も無駄に危険に飛び込む気はないんでね」
「言わなくてもわかってる、か。流石だな。ならこれで要件は済んだのでお暇させてもらうよ」
「お好きにどうぞ」
なんか凄い事態になったな。まさか他国から勧誘されるとは思ってもいなかったよ。
でも今のところこの国で出て行きたいほど不満なこととかはないから誘いに乗る気はないんだよな。
まあ今は取り敢えず、将来何か国を出ていかないといけないほど困ったことがあったら、炎の王国なら身を寄せることができるかもしれないということだけ覚えておけばいいだろう。
さてさて、次の種目が始まる頃だし、そろそろ控え室に戻りますか。
確か次の種目は、演武だったな。魔法や武器を使った武のパフォーマンスでより早く運営側が設定する合格点に達した方が勝ちというものだったな。
結構面白そうじゃんか。今から楽しみだ。




