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ティータイムから仁義無き遊び場へ

十日ほど前に我が家のPCが完全に御臨終いたしました……。


二日前から新たに稼動してくれていることになった、知り合いから貰ったPCには暫く頑張って欲しいものです。

 俺達が住む隣町には全国的にマイナーだが、周辺地域ではソコソコ名の知れた遊園地が存在する。


 ただ、純粋な遊園地というよりは、世界的に有名な某赤ズボンの乾いた笑いをするネズミさん的なテーマパークに近い作りとはなっているのだが、その個性的なマスコット達に心酔するコアなファンを多く獲得している。


 遊園地の名前は、ゴクドッグランド。


 大人気の親分ブルドックのブルードと、反勢力組織を率いるダックスフンドのワルスギドッグが仁義無き、キュートな戦いを繰り広げるという素敵な遊園地だ。

 

 本日、土曜日の午前十時前。


 俺はクラス親睦会の会場である、ゴクドックランドの待ち合わせ場所である入り口付近に、他のクラスメイト達が来るのを、向かい側に建てられた喫茶店で紅茶を飲み、優雅な時を過ごしつつ待っていた。


 今、俺が居るこの喫茶店はランド内で経営されている店舗の一つで、良く待ち合わせにも利用されている。


 何故本来の待ち合わせ場所に行かず、こんな場所で優雅に紅茶を飲んでいるのに一つの理由が存在する。それは勿論、お隣に住む、美少女おおいなるさいやくこと、音無さんとの不要な接触を最大限回避するためだ。


 本来の待ち合わせ時刻は十時半、その時間に間に合う家の近くのバス停の時刻は九時半となっている。


 俺たちの住む街は完全に田舎というわけでは無いが、数分置きにバスや電車が来るほどに発達していない。


 なので、俺の家の近隣に住む住人が、十時半に近い時刻でゴクドックランドに向うとすると、ほぼ九時半のバスに乗車するのが確定するわけだ。


 それはお隣さんである音無さんも例外ではない。


 同じ乗車時刻になることを回避する為に、俺は念には念を入れて、二本分時間の早い、朝七時五十分のバスに乗って来たのである。


 家を出る際に、遊園地が待ち遠しいからってこんな早い時間から行くなんて、まだまだ子供だなという生暖かい両親の視線に去らされるという、取るに足りないエピソードがあったりはしたが、それで大きな悲劇を回避出来たのだから、俺は正しい選択をしたのだと胸を張って叫びたい。


 だから目から零れるこのしょっぱい液体は、ただの汗だと断言出来る。


 つまり端的に言うと、早く来過ぎて暇だったので喫茶店でお茶をしていたというわけだ。


 モーニングタイム限定のブルードの顔を模したホットケーキセットを食べて、食後の紅茶を楽しんで暫くすると、午前十時を回った頃、ちらほらと入り口前に見知った顔が増えてきた。


「そろそろ俺も行くかな」


 待ち合わせの時刻が近くなってきたということもあり、俺は喫茶店を出て悠々と皆が集まるランドの入り口付近へと向った。


 











「それにしても、まさか全員が参加するとはな……」


「皆それだけ、英太と音無ちゃんの仲が気になってるってことだろうよ」


 俺が呟いた愚痴に対して、律儀にも八郎が返事を返す。


 最初はクラスの半分も来れば、親睦会としては集まった方に入るだろうと俺は考えていた。


 折角の休みなのだから、既に予定を入れてる奴だって多いだろうと……。


 だが結果はこの通りだ。


 待ち合わせ時間の五分前には既にクラスメイト達全員が、無遅刻無欠席で集合するという、小学校の遠足でも稀な集団による結束力を発揮したのである。


 普通はこれだけの人数がいれば、一人か二人は遅刻する奴が出たり、そもそも自由参加なのだから、参加を辞退する奴が出ても良いだろう。


 遊園地がそんなに楽しみだったのか?このクラスの連中は?


 まあ、正直に言って別にクラスメイト達が遊園地を楽しみにしていることは構わない。


 この中には、純粋にゴクドックランドの仁義無きキュートなアトラクションを楽しみにしていた奴だっている筈だ。


 ……だが大半の連中の視線は、俺と少し離れた場所で吉田さんと歓談する音無さんに対して集中している。


 しかもその視線の殆どが、野次馬根性丸出しの興味津々な視線だと感じるのだから、そんな視線に晒されているこっち側としては堪ったもんじゃない。


「おい。八郎」


「だって、しょうがないだろ。元々今回の親睦会はお前と音無ちゃんの今後を暖かく見守ろうって趣旨で開催したんだし」


「それは誤解だって、俺はちゃんと説明したよな」


「確かに俺と吉田ちゃんは、それで納得してるけどさ。一人か二人ならまだしも、こんだけクラスの連中に話が浸透してるのに、実はただの噂ですって言ったって誰も納得しないだろう」


「本当にそうか?」


 そんなことを言って、ただ面白がってるだけじゃないだろうな。


「集団意識ってのは一度根付くと、中々覆らないもんだからな。まあ、噂は七十五日って言うし、英太がそれなりに音無ちゃんと仲が良いってのは周知の事実なんだから、暫くは我慢しとけって」


「他人事だと思って適当なことを言うなよ!」


「そもそも何がそんなに気に入らないんだよ英太は?音無ちゃんみたいな可愛い子と付き合ってるかもしれないって噂されるなんて、事実はどうあれ男冥利に尽きるってもんだろうが?」


「えっと、そ、それは……」


 確かに八郎が言う事はもっともかも知れないが、美少女恐怖症の俺にとってそんな噂は無用なトラブルの元でしかない。


 もしもこの話が音無さんの耳にでも入って、変に意識されでもしたらどうなる。


 これ以上の接点を過度に持つことは、俺の寿命を減らすことになりかねないんだぞ!?


 美少女恐怖症を悟られる訳にはいかず、八郎を睨み付けるだけに留めるが、当の本人は何処吹く風といった感じで、集まったクラスメイト達に集合を掛ける。


「それじゃあ、入園後は各自のグループに分かれて行動します。集合時間は夕方の五時半に再びこの入り口広場前ですから」


 八郎の言葉を皮切りに、入園を果たしたクラスメイト達は、各々のグループを作り園内へと散っていく。


「さてと、せっかく来たんだし俺も適当に何処かのグループに混ざって遊ぶかな」


 中学時代にも同じクラスだった連中の何人かが、丁度グループを形成していたので、俺もその中に混ぜてもらおうとしたのだが……。


「何処に行く気だ英太?」


「は?何処ってこれからあっちのグループに混ぜてもらうとこだけど」


 突如として呼び止めてきた八郎に、俺は当然の返答をするのだが、どうにも嫌な予感がしてならない。


「じゃ!そういう事で!」


「待てってば」


 勢いに任せて八郎の手を振り解き撤退しようと試みるが、がっちりと肩を捕まれ逃げることは叶わなかった。


「お前は俺達と一緒に行くんだよ」


 そう言った八郎の後ろには、吉田さんと音無さんの姿が見えた。


 どうやら俺の仁義無き恐怖の休日は、始まったばかりのようである。 

家族兼用で使っている為、感想へのご返事はもう少々お待ち下さいませ。

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