恐怖の価値は
随分と間を空けてしまいましたが、凄い久し振りに更新しました。
遊園地関連の目玉アトラクションの一つと言えば、皆は何を思い浮かべるだろうか?
一言に遊園地やテーマパーク等と言っても、その殆どが一日では回り切れない程に広大ではあるし、遊びに来た当人によって楽しみ方は千差万別だとは思う。
そんな中で、俺は絶叫系のアトラクションに、一票を投じる。
苦手な人にとっては、本当に駄目な部類にカテゴライズされるジャンルではあると自分でも思うが、大抵の遊園地には最低限としても、そう分類されるアトラクションが一つはあるということは、紛れも無い事実だ。
何故、人は自ら恐怖することを望むのだろうか? と、俺は常に疑問に思う。
だが良く考えてみれば、恐怖とは人にとってとても大切な感情なのでは無いかと、俺は最近になって考えるようになってきた。
恐怖を感じなければ、何が危険なのか本当の意味で理解することは出来ない。
恐怖を伴うスリルこそが快感なのだと、結論付ける人は多いかもしれないが、本当にそれだけだろうか?
我ながら何の根拠も無く、他人に言えば頭がおかしいのかと思う以前に、最近疲れてるんじゃないかと心配されそうな、ただの空想に過ぎない意見なのだが、これは本能的に危機に直面した時に対しての、予行演習になると本能的に理解しているのではないかと、俺は考える。
ほら、俺の意見を述べた瞬間に、何人かが公園の砂場トンネル掘って、バケツで水を流し込むやんちゃな孫を見守るグランマ的なベージュ色のストールを羽織ったおばあちゃんチックな瞳になったけれど、これには俺なりの見解がちゃんとあるのだ。
危険を察知するというのは、本来であればその場に直面した時に限られるだろう。
中には実際に危険な場所に居るにも関わらず、危険を感じられないという場合もあるかも知れないが、それでは危険を回避することは出来ない。
ならばどうするか?
俺自身は別に体育系な人間では無いのだが、答えは一つ。
鍛えれば良いのだ。
しかし危険を予測するのは、あくまで直観的なことであり、ダンベル体操したところで身に付く訳でも無い。
ならば、危険を察知する際の状況とは、どういう時か。
それは間の前に危険があると、一目で理解し、恐怖を感じた時に他ならないだろう。
だからこそ俺は、先人達の暗黙の教えに従い、自らを律するのだ。
……と、無理やりにでも頭の中で理屈を捏ねていないと、やっていられないだけなんだけどな。
「高須君。顔色が悪いけど、大丈夫?」
「……あ、ああ。ちょっと緊張してるだけだから」
「そっか」
俺に声を掛けてくる、美少女こと、音無さん。
その距離。僅か30㎝弱という、危険域。
まるで眉間に、トカレフの銃口を押し当てられているような気しかしないが、現状の俺に抗う術は何一つとして無い。
何故ならば俺は、地上から50mにも及ぶ高所において、その身柄を拘束されている為だ。
それでも俺は、全ての気力を振り絞り、どうにか対応する。
背中に嫌な汗を大量に流しながらではあるが、それでも平面上は、涼しい顔で返答出来た自分を胴上げしたい気分だ。
そもそも、どうしてこんな事態になっているのかだって?
それは……。
「ジェットコースターって、ドキドキするよね!」
……まあ、そういうこと何です。
この仁義無き、キュートな戦いを繰り広げるというゴクドッグランドを回ることになった俺に八郎、音無さんと吉田さんの四人グループは、音無さんの強い要望によって、このテーマパークの看板アトラクションの一つでもある。ブルードコースターにやって来た。
それだけならば、何も問題は無かったのだ。
ブルードコースターは横に二人、縦に15人が搭乗出来る、一般的な形状のコースターとなっていたので、何も考えず俺は八郎の隣に座ろうとしたのだが、そこで俺にとっての不幸が舞い降りる。
俺と八郎はコースターの一番前の列に座る筈だったのだが、其処に来て音無さんがまさかの待ったを掛けたのだ。
何でも音無さんの持論には、初めて乗るジェットコースターでは出来るだけ一番前に乗りたいらしい。
そう言えば、教室で一番好きなアトラクションがジェットコースターだと言っていたことを思い出す。
人間、恐怖に刻み付けられた記憶は、中々忘れられないものだと、思わず自嘲する。
だが、それよりも問題となったのは、その後の顛末だ。
本来であれば、其処ですかさず俺が場所を変わると言えば全ては解決したなのに、俺は唐突な音無さんの声掛けという襲撃に、一瞬だが体が硬直して、声を出すことすら出来なかった。
その隙に、俺の隣に居た八郎が……。
「それじゃあ、俺が変わるよ」
と言って、早々に座ろうとしていた席から立ち上がり後ろの吉田さんの隣へと座ってしまう。
俺が、唖然としながら八郎のことを目で追っていると、何を勘違いしたのか、吉田さんと揃って俺達を見ながら、ドヤ顔で良い仕事をしただろと、アピールしてくる。
本当にもう! 守りたいなこの笑顔! どちくしょおおおおおおおおおおおおううううううううう!
本当の恐怖はここからでした。




