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【完結済】#バズかいま ~ 知らない間に使い魔がバズってました!? ~  作者: 廿楽 亜久
京都編

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50話 言霊ってあるやん? それや。(前編)

 ズキリと腕が痛み、つい舌打ちがこぼれる。


 ただでさえ、あの狐たちの中では、自分は妖力も実力も見てくれも下の方。

 純白でもない毛並みは、はっきりとした黒い毛が混じって、ブチ犬の様でかわいいなどとバカにされる。


「……はぁ」


 思い出すだけで腹が立つ。


 意識的に、息を吐き出せば、少しは心も落ち着く。

 全国に分社があるおかげで、身内から離れる理由は簡単に作れる。

 理由がバレているかどうかは、どうでもいい。居心地の悪いところに居座る方が毛並みが乱れる。


「で、自分、何しとん?」


 この辺りが龍神の縄張りであることは知っていた。


 なにより、龍神の匂いが林の中からしていたことも気がついていた。

 ただの氏子か、巫女か。

 どちらにしても、人間かと様子を見に来てやれば、そこにはまだ幼い少女がいた。


「え、っと……」


 その少女は、バツの悪そうに視線を逸らすと、泥だらけの腕を水溜まりから抜いた。


 近づいてより強く感じたが、龍神だけではない。

 狛犬に、鼠の匂いまでする。

 さすがにここまで加護がついていて、ただの氏子ということはないだろう。


「絵の具でも足りひんかった?」

「絵の具……? 今日は使ってないよ?」


 ダメだ。皮肉が通じないタイプだ。


「そんな泥んこで、そちらさんの使い魔には怒られへんのやろか?」

「う゛……」


 どうやら怒られるらしく、肩を震わせて、視線を彷徨わせている。


 だが、少女の目がある場所を見つめると、大きく見開いて、慌てたように立ち上がった。


「怪我してる!! 大丈夫!?」

「うわっ……汚っ……」


 駆け寄ってくる少女に慌てて、身を引けば、その汚れた手に気がついて、じっとその手を見た後、周囲を見渡し、何かを思い出したように目を細めると、スカートの裾で手を拭っていた。


「…………それ、怒られへん……?」

「怒られるけど、カバンないもん」

「カバンて……」


 高い木の枝に引っかかっている、あのカバンだろうか。

 確かに、この少女のカバンにしては、随分高い位置にあり、少女本人が置いたとは思えない位置だ。


「自分、いじめられとるん?」


 仕方なく、そのカバンを取ってやれば、その少女は嬉しそうにカバンからハンカチを取り出して手を拭いていた。


「違うもん。ただの喧嘩だもん」

「喧嘩ねぇ……」


 その割には、少女の方に怪我はない。

 いじめよりも、喧嘩にしておいた方が、穏便に済むのか。


 ありえそうだ。


「あった!」


 嬉しそうに少女がカバンから取り出していたのは、どうやら絆創膏らしい。

 どうやら、自分の腕の怪我に貼るために探していたらしい。


「こんなん、唾つけつけとけば治るて」

「ばい菌入ったらダメだよ」

「ばい菌だらけの手やない? 自分」

「拭いたもん」


 大切なのは気持ちとは言うが、この少女の使い魔は、もう少し物事をちゃんと教えた方がいい。

 その上、絆創膏では塞ぎきれない傷を、困ったように見つめながら、何枚も傷に絆創膏を貼っている。


 シールの部分が、傷に直貼りになってるところがあって、もはやすぐに剥がれてしまいそうだ。

 くっついていても、剥がす時に痛そうだが。


「……随分、かわいらしいテープやけど、こないに貰ってええん?」


 確か、今やっている魔法少女のアニメのキャラクターだ。

 その顔面絆創膏が、乱雑に、とりあえず傷を塞ぐように貼られている。


 本当に、この少女の何とも雑な性格を象徴しているような張り方だ。


「お稲荷様。怪我してるもん」

「そらおおきに」


 気持ちだけしかない。


「カズくんはね、このシール見ると、べりってしてくるから気をつけてね」

「そうなん? そないに好きなら、顔にいっぱい貼らせたれば?」

「あげたことあるけど、いらないってべしってされた」


 ダメだ。通じない。

 これは、使い魔たちも心配することだろう。嫌味も嫌がらせも通じないなんて。


「ま、ええわ。それで、ホンマは何しとったん? 自分」

「え……」

「一応、お稲荷様やし、恩返しせんと放置したら、お稲荷の名が廃るやろ。お水の中で何して遊んどったん?」


 おおよそ、何をしていたかは想像がつくが、もう一度尋ねてやれば、視線を巡らせた後、大きく頷いた。


「遊んでた」


 先程、拾ってやったカバンを、もう一度同じ枝にかけてやった。


 袴を思いっきり引っ張り、首を横に振られる。


「嘘ばっかりの悪い子には、お仕置きもいるやろー」


 その言葉にショックを受けたように口を開けて、半泣きになると、少女はそっと袴から手を離すと、意を決したように腰紐に手を伸ばしてきた。


「ひどいことするなら、これ引っ張る……!!」

「誰や!? こんなアホのこと教えたアホ!!」


 後々、このアホなことを教えたクソ天狗とは、事あるごとに喧嘩することになるのだが、それはまだ先の話。


 まるで、伝説の剣を手に入れたような表情をしている少女に、呆れたようにため息が漏れ出ては、カバンを返してしまった。

 少女はそのカバンを抱きしめて、嬉しそうにしている様子に、もうひとつため息をついてしまった。


「じゃあ、私は鍵探すから、お稲荷様は日が暮れる前に帰った方がいいよ」


 つい、言ってしまったらしい少女の言葉に、反射的に耳が立ってしまった。


「鍵……?」

「……あ」


 思った以上に、この巫女、バカみたいだ。

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