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【完結済】#バズかいま ~ 知らない間に使い魔がバズってました!? ~  作者: 廿楽 亜久
京都編

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49話 解決・百鬼夜行(後編)


 ピクリと白亜の耳が動くと、空を見上げる。

 青空に変わりないが、雨粒は消えていた。


「終わったみたいやな……」


 百鬼夜行を警戒して周囲に集まっていた、使い魔たちの気配も徐々に離れて行っている。


「はぁ~~……大婆様が暴れんでよかったわ……ホンマ……」


 ただでさえ、ぬらりひょんなどという大物妖怪に、龍神や子睦の匂いをつけた巫女との邂逅。

 伏見からすれば、楽しそうなおもちゃを目の前に吊るされては、遊んではいけないと取り上げられているようなものだ。


 味見のひとつ。腕の一本でも構わないと、舌を出さなかっただけ、運が良かった。

 

「陽は、もう少し自嘲しなって……」

「だって、狐の窓で本当に見えると思わないじゃぁん……」

「肝試しの時も似たようなこと言ってなかった……?」


 肝試しの時も、いたら面白いけど、幽霊なんているわけがない。という前提で、話をしていた。


 肝試し以前は、妖怪の存在を知らなかったから仕方ない。

 だが、それ以来、白亜たちを含め、妖怪や使い魔たちに出会ってきたのだから、そろそろ目森も自覚はしてほしい。

 ただ、なんとなくダメそうなことだけは、瑞希も真桐も想像がついていた。


 一応、反省したように謝っている目森に、ふたりは呆れたようにため息をつくのだった。


「そもそも、術のセンスないって言われたし!」

「人のせいにしない」


 子睦の護符があったとはいえ、危険な目に遭っていたはずだが、相変わらず、目森は気にしていないようだ。

 それが良いことかは怪しいが、気にしない程度で留められたというのは、良いことなのだろう。

 少し反省はしてほしいが。


 白亜は、ピリリと耳に感じる寒気を軽く手で払うと、瑞希たちの元に近づく。


「ほらほら、三人共。お土産買うたら、夕飯食べて、ホテルに戻るでー」

「あ、白亜。待って。あの色々よくしてくれた使い魔の方にお礼言いたくて」

「そんなん、僕が言うとくからええよ」


 ピリリ、ピリリと、耳の周りを蚊が飛び交うような感覚。


「あと瑞希たち送ったら、明日の新幹線まで、一緒におれへんけどええ?」


 それを鬱陶しそうに払う白亜に、瑞希たちも訝し気にその様子を見ていた。


「ちゃうねん。さっきから、来夢のやつが、鬱陶しいねん……」

「来夢さんって、さっきの……」

「せやせや。アイツの勝手な用事のクセに、他人のこと巻き込んで……」


 何やら見えないものと戦っているらしい白亜に、三人も苦笑いを溢すしかない。


「来夢さんって、そんな感じの人なの?」

「すごくいい人だったよ……? アタシのこと、助けてくれたし、めっちゃ美人だった」


 瑞希の質問に、全然違うと目森は、首を横に振った。

 しかし、どうにも耳や尻尾を逆立てている白亜の様子は、目森の口にしている様子とは異なる。

 

「まぁ、あの場にいなかっただけで、伏見さんたちと似たような感じってことだよね……?」

「さすが。波奈。よぉわかっとる。あの中で、一番まともなの、僕やからな」

「なんか張り合ってきた……」


 何故か、張り合ってくる白亜に、三人は何とも言えない表情を返すしかなかった。


「来夢さんの用事ってなんだろうね?」


 言葉通り、瑞希たちをホテルに送った後、白亜は足早に部屋をあとにした後、目森が首を傾げる。


「神事的な何か?」


 神社の大切な行事だろうかと、瑞希の方に視線をやるが、瑞希は難しそうな表情で、首を斜めに傾けていた。


 白亜が、鎹杜神社に来てから、伏見稲荷大社に戻るのは、本当に数年ぶりなはずだ。

 神事で手を貸してほしいとも言われていないらしい。

 以前に、白亜に話を聞いた時も『僕の手すら借りたい言うたら、ホンマに都落ち寸前やから、尻尾巻いて逃げるわ』と笑っていたくらいだ。


「だから、たぶん本当に、くだらないことだとは思うんだけど……」

「くだらないこと……」

「なんだろう……なんか……考えれば考える程、頭の中の黒天が『やめとけ』って止めてくる……」

「なにそれこわ……」


 頭を抱える瑞希に、目森は少し引いた表情で見下ろし、真桐は少し想像がついたのか、そっとまるもちを差し出した。


 そんな瑞希たちが、残り短くなった観光を楽しんでいる頃、白亜は麻布留と共に、頭を抱えていた。


「ホンマ、いい加減にしてほしいわ……そっちのVの収録だけならまだしも、なんで夏コミの駆け込みの手伝いまでせなアカンねん……」


 もはや、事の始まりだった麻布留のVactorのオリジナルソングの収録が、かわいく思えてきたレベルだ。

 今は、来夢の別名義の同人誌のペン入れの手伝いをさせられていた。


「夏だからって、水着グラだの、浴衣グラだの、一枚絵だの、発注が増えるのが悪いねん」

「これ趣味(どうじん)やろ」

「それはそれ。これはこれ」


 相変わらず、話を聞く気すらないらしい。


「あ、これ、白亜のVの皮と設定」

「いらん」


 手元に置かれた資料に、白亜は一瞬だけ目をやっては、舌打ちと共に無視した。


「ネットの名義の2個や5個なんて余裕やん」

「人に手伝わせとるやつに言われたないわ」


 想像はしていたが、来夢も含めたこの狐たちが、どれだけの名義を使って、インターネットで暴れまわっているのか。

 正直、関わりたくないが、麻布留のVactorについても、その存在は知っていた。

 狐たちが行う芸事だ。売れていないわけがない。


 先程から、静かにしている麻布留にそっと目をやれば、いなり寿司くつろいでいたため、手元に置かれた資料を投げつけておいた。


「なにすんねん。お色気担当 未亡人が嫌やったん? あの子も見ないタイプって配慮しとるやん」

「そこやないわ。アホ」

「バリキャリ配信は、女性人気もあるもんなぁ……それとも、チキンレースで興奮するタイプやった?」


 視界の隅で興奮したように、尻尾を振って別の資料を持ち上げている来夢に、白亜はもう口を開くまいと、眉間にしわを寄せるだけだった。


 結局、白亜が解放されたのは、予定通り、帰りの新幹線の直前だった。


「なんか、疲れてない? 大丈夫?」


 瑞希が心配そうに見つめる中、白亜は無言で瑞希の頭を撫でていた。


「白亜が壊れた……?」

「壊れとらんわ。アホ共の相手に疲れただけやわ」

「いやぁ、ホンマにおつかれさまです」


 その声の主に、白亜もじっとに不満気に、その狐の使い魔へ視線を向ける。

 瑞希たちが、お礼を伝えたいと言っていた使い魔だ。


 ちなみに、白亜は礼を伝えていなければ、呼んでもいない。

 どこからか情報を掴んで、白亜の反応を楽しむためにやってきたのだろう。


「そんな顔されても、ほら、自分が来たおかげで、白亜さんも感謝されとったんやからええやないですか」

「裏が透けっすけやねん」

「そんなこと言うて……また数日後に会うかもしれへんのですよ?」


 眉を下げて、そんなことを口にする使い魔に、瑞希たちも何かあるのかと首を傾げ、白亜の眉間には静かに皺が寄る。


「お前がくるん?」

「一応、マネ役なんで。伏見様にもつきますし、祭りにも替え玉で」

「祭り?」


 神代が来るような祭りがあるのかと、瑞希もつい白亜に目をやってしまえば、ものすごい勢いで手を横に振った。


「趣味や趣味。真面目な祭りやないし、お忍びやから」


 今回の白亜のように、少し出かけるのかと、瑞希も納得しながら、また使い魔に視線を戻す。


「ま、また東京で会うたら、よろしゅう」

「はい。是非、お時間がありましたら、うちに寄ってください」


 瑞希の隣で白亜は、静かに冷たい視線を使い魔に送っていたが、使い魔はその笑みを崩すことなく、言葉を返していた。


「はぁ~~楽しかったぁ……モフモフ祭り……写真はないけど」


 新幹線の席で、スマホを見つめながら、少しだけ寂しそうな表情をする目森に、真桐も苦笑いを溢してしまう。


「波奈は、明日は部活だっけ?」

「うん。八ッ橋も早いうちに渡しちゃいたいし」

「アタシもバイト先に持っていくの忘れないようにしないと……明日忘れると、Vイベあるし」

「体力あるなぁ……」


 相変わらず、予定の詰まっているらしい目森に、瑞希も苦笑いを溢してしまうのだった。



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