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#バズかいま ~ 知らない間に使い魔がバズってました!? ~  作者: 廿楽 亜久
京都編

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46話 狐の小窓(前編)

「これ、ヤバくない……?」


 目森が真剣な目をして、そのくだもの串を見つめていた。


「あとでこれちゃんとお礼に行かないと、バチ当たるやつじゃない!?」

「だねぇ……」


 伏見稲荷大社を出た後、瑞希たちは予定通り観光をしていた。

 昼食を取ったり、他の神社を巡ったり、カフェに寄ったり。

 その先々で、店員から予約してないにも関わらず、事前に連絡をもらっていると言われていた。


 その全てが、どうやら、あの狐の使い魔が連絡をしてくれていたらしい。


「白亜には、お礼言いたいから、あとでもう一回行くって連絡しとくね」


 さすがに、ここまでしてもらって、そのまま帰るのは忍びない。


 瑞希が白亜に連絡している間、目森は、その狐の饅頭がついたかわいらしい串の写真を撮っていた。


「マジかわいい……こういうのって、どう食べるか迷うよ、ねぇ……」


 たい焼きの頭か尻尾か以上に、かわいい動物の見た目の食べ物を、どこから齧るかという問題。

 かわいすぎて食べられない。というほどではないが、どう食べるのが一番きれいかは、考えてしまう。


 しかも今回は、串に刺さっている。

 団子のように半分ずつ齧るというのも、口で咥えて抜くというのも、忍びない。


「え」


 しかし、瑞希は口で咥えて、串から引き抜くと、躊躇なく狐の饅頭を口に運んでいた。


「あ」


 そして、真桐も、手で串から狐の饅頭を引き抜くと、躊躇なく饅頭を口に運んでいた。


「……波奈派!!」


 目森はそう叫ぶと、手で狐の饅頭を引き抜くと、食べる前に一度写真を撮ってから、耳の辺りを齧った。


「耳齧り狐、ちょっとかわいくない?」

「食べ物で遊ばない」

「これは、もうそういうのも想定されてると思うんだよね……!!」


 一応、もう一枚写真を撮っておくと、目森も口の中に、狐の饅頭を放り込んだ。



「――あれ? 陽は?」


 瑞希がお手洗いから、お土産を選んでいる真桐の元に戻ってくれば、そこにいたのは真桐ひとりだった。

 目森の姿がない。


「外で写真撮ってくるって」


 あとでストーリーに上げるための、町並みなどを撮ってくると、店の外に出たのが5分ほど前だから、そろそろ戻ってくるだろうと、真桐も決めたお土産を手に取る。


 会計を終え、店の外で、目森を待っていれば、ぽたりと、鼻先に冷たいものが当たる。


「雨?」


 見上げれば、青空。

 だが、そんな青い見た目とは裏腹に、一気に強くなる雨。

 瑞希と真桐は慌てて、店の中に入れば、天気雨とは思えないほどの強い雨足に、不思議そうに空を覗き見た。


「天気雨って、こんな強くなることあるんだ……」


 雨粒も雨音も、はっきり聞こえるくらいの強い雨だ。

 だというのに、空だけは異様に明るい。


「この辺りじゃ、よくあることだよ。”狐の嫁入り”って言うだろう?」


 店のロゴの入ったエプロンをつけた初老の女性が、外を眺めながら、小さく声を漏らした。


「昔から、天気雨が降ってる時には、外に出るなって言われててねぇ」


―― 晴れ空に 雨音コンコン響くなら コンコン 狐が嫁探し コンコン 人の子頭を垂れ コンコン 屋根に身を隠せ

   濡れた狐を見たもんは 人里遠く 帰れなし ――


「っていう歌があるくらいなんだよ」


 その歌の真偽は、誰も知らないが、どこか嘘ではないような、そんな気がした。


「ま、通り雨みたいなもんだから、すぐ上がるよ」


 それまで雨宿りしていくといいと言った女性に、瑞希たちも礼を言いながら、まだ止みそうにない空へ、つい目をやってしまう。


 なんとなく携帯に視線を落としても、天気アプリは快晴のマーク。

 空模様と同じ、雨雲は存在しないようだ。


「陽も、看板の屋根で雨宿りしてるっぽいね」

「これじゃあ、濡れてそうだけどね……」


 グループSNSで、雨に降られたらしい目森のスタンプと、看板についた小さな屋根の写真が載せられていた。

 この屋根では、きっとあの雨は防げないだろう。


 走って戻ってくるだろうかと、視線と外へやれば、道路に下りてきた見覚えのある姿。


「後鬼さん……?」


 晴明神社にいた、式神のひとり、後鬼だった。


「知ってる気配があると思ったら、貴方たちだったのね。ひとりいないみたいだけど」

「陽は、ちょうど外で写真撮ってて……」


 後鬼も、瑞希と真桐に気が付くと、店の中に入ってきては、周囲を確認するように見渡してから、問いかけてきた。


「あら……そう。狐は?」

「白亜は、神社の方で、用事があったみたいで」

「ふぅん……なら、駆り出されてるのかしら」


 少し目を細めるように瑞希を見下ろす後鬼は、ひとつ頷くと、すぐに踵を返した。


「雨が止むまでは、外に出ないようにしなさい。あと、貴方たちふたり。入口の両端に立っていてくれると、助かるわ」

「え……」


 それだけ言い残すと、後鬼は、足早に店の外に出ると、また姿を消した。

 残された瑞希たちは、なんとなく言われた通りに入口の両端に立ってしまうが、真桐は不思議そうな表情で、瑞希の方へ目をやっていた。


「あのさ、これって……」


 百鬼夜行が来ているのでは?


「……」


 瑞希の少し強張った表情に、真桐も答えを聞かなくても、察せてしまった。

 突然降ってきた天気雨も、現れた後鬼に頼まれたことも、百鬼夜行が来たからなのだろう。


 自然と視線は、携帯の画面に落ちる。

 そこには、先程、目森から届いた雨宿りをしているらしい看板の小さな屋根の写真。


「瑞――」

「瑞希! 無事やな!?」


 真桐の言葉と被るように聞こえてきた白亜の声に、ふたりは驚いたように白亜の方へ顔を向ける。


「そうやとは思ったけど、陽おらんな……」


 そして白亜も、その場に瑞希と真桐しかいないことを確認すると、顔を覆った。


「白亜……! これって……!!」

「せやせや。百鬼夜行や」


 「空気読めや」とイヤそうな表情をしている白亜は、瑞希を安心させるように、肩を軽く叩くと、真桐の方にも視線を向ける。


「とりあえず、ふたりはここで大人しくしとき。護符もあるし、木っ端共は手ェ出せへんから、安心し。僕は、あの(アホ)拾ってくる」


 慌てている瑞希とは対照的に、めんどくさいという表情を隠さず、携帯を見せては、目森を探してくると言う白亜に、瑞希も頷く。

 その様子を確認すると、白亜も本当にめんどくさそうにため息をつくと、また携帯に視線を落とすと、外に走って行った。


「陽、大丈夫だよね……?」


 グループメッセージには、白亜から『その場所から動かないように』というメッセージが送られている。

 おそらく、目森のいる場所もわかっているのだろう。


「一応、護符はあるし……」

「護符?」


 先程、白亜の口からも”護符”という言葉は出ていた。

 だが、真桐はそんなものを持っている覚えはない。


「あぁ……お守りの中にいれてあるんだよ。ほら、これ」


 そう言って、瑞希が新幹線の中で渡されたお守りの中身を開いて、折られた小さな紙を取り出した。


「子睦の護符だから、相当力はあると思うんだけど……」


 それでも心配なものは、心配だ。

 瑞希の心配そうな表情に、真桐も同じような表情をしながら、未だに雨の降る外へ顔を向けた。


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