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#バズかいま ~ 知らない間に使い魔がバズってました!? ~  作者: 廿楽 亜久
京都編

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45話 お山めぐり(後編)


 百鬼夜行のことは気になるところだが、そんなことよりも――


「待って! ここ頂上でしょ! ちょっと休憩しよ!!」


 目森の必死な声に、瑞希も真桐も頷いた。


 白亜から、伏見稲荷大社の”お山めぐり”と呼ばれる参拝ルートは、ほとんど登山だと言われていたが、実際その通りだった。

 多少、山歩きには慣れている瑞希や、運動部の真桐でも、さすがに少し疲れていた。


『推し活とバイト三昧で鍛えた体力あれば、いけるっしょ!』


 と、豪語していた目森は、この有様だ。


「降りたところにカフェあるし……! 行ける行けるとか、思ってたよ……!! だって、高尾山は登ったことあるし!!」


 ここまで来る観光客は少ないからか、周囲も気にせず、大声を上げている目森の気持ちはよくわかる。


「これもう、明日、筋肉痛じゃない……?」


 軽く足を延ばしたり、水を飲んで息をつきながら、振り返れば、京都の街が広がっていた。


「いい景色だねぇ」

「わりと現代的だよねぇ」

「京都だって、普通に大都市だし……」


 景観を守るための条例があるとはいえ、人が多く行き交うのだから、想像する古都のような街並みだけではない。

 この街に、百鬼夜行がやってくる。


「……」


 白亜は気にしなくていいと言っていたが、完全に気にしないこともできない。

 瑞希は、静かに目を凝らしてみるが、もちろん、妖怪たちが見えるわけもない。


「瑞希? 大丈夫?」


 ふと、真桐に覗き込まれ、慌てて頷く。


「気分悪かったら、白亜さんに連絡するけど……」

「大丈夫大丈夫! 少し疲れただけだから」

「もしかして、さっきの話?」

「”百鬼夜行”ってやつ?」


 目森も、思い出したとばかりに声を上げるが、瑞希も困ったように視線を巡らせてしまう。

 これでは、さすがにどう繕っても、嘘だとわかってしまう。


 諦めたように、ため息を共に頷いた。


「なんか、白亜さんの家族がすごくて、全然、印象に残ってないんだよねぇ……」

「それもそれでどうなの……でも、白亜さんは大丈夫だって言ったし、そこまで気にしなくていいんじゃない?」

「ま、まぁ、そうなのかもしれないけど……」


 百鬼夜行の話は、伏見たちが白亜をからかっていたおかげで、うやむやにされてしまった。


 だが、確かに、伏見の力は大きい。

 それこそ、千年以上も、神として祀り上げられる程度には。


 その上、国内でも有数の使い魔数を誇る神社なのだから、瑞希が心配する方がおこがましいのかもしれない。


「……」


 なにより、自分だけが浮かない顔をして、真桐や目森を巻き込んでしまうのは、申し訳ない。

 せっかく、一緒の旅行に行こうと言ってくれたふたりに、それは悪い。


 瑞希は一度、ゆっくりと深呼吸をすると、頷いた。


「そうだね。今日明日で来るって話でもないみたいだし……とりあえず、何かあったら、手伝うって感じで!」

「そうだね。瑞希と違って、私たちが何か手伝える気はしないけど……」

「でも、モフモフ祭りだったりする……?」

「陽……」


 それはそれで見たい。と溢す目森に、瑞希だけではなく、真桐までもが、呆れたような視線を目森へ送ってしまうのだった。


「――疲れたァ!!」


 人通りが増えてきた参道で、目森は疲れたような声を上げると、すぐに寂しそうな表情をしていた。


「もう一回、モフを見たいと思っても、奥社が遠い……ムリィ……」

「残念だったね」


 さすがの目森も、もう一度、奥社参拝所に行く元気はないらしい。


「白亜さんのモフで我慢するしか……いや、全然、白亜さんのモフでいいんだけどさ……! でもさ……そういうことじゃなくて……」

「お迎えモフとかもあるで?」

「”お迎え”モフってヤバい造語、どんな――って、うわぁ!?」


 顔を上げれば、千本鳥居のところであった使い魔が手を振っていた。


「おかえりぃ。茶屋に寄るんやろ?」

「は、はい」


 また変なことを言いに来たのだろうかと、三人が疑いの目を向ければ、使い魔は笑いながら手を横に振った。


「そんなに警戒せんといて。白亜さん、もう少し時間かかるて、言伝頼まれただけやねん」


 「あと、使い魔特権で茶屋に並ばず入れるから、案内したるよ」と付け足された言葉は、疲れた体には嬉しすぎる言葉だった。


「それから、言伝やけど『自分のことは気にせんで、観光してき』やって」


 麻布留に連れて行かれた時は、自分と嫌がっていた様子だったが、何か用事を頼まれているらしい。

 白亜が言わないというのは、少し気になるところだが、


「俺が言うのもなんやけど、関わらん方がええんやない? 来夢さん関連っぽいし、正直、俺も関わりたない」


 そう、同じ狐の使い魔にすら言われる用事に、瑞希も何とも言えない表情で頷くしかない。

 内容はわからないが、百鬼夜行関連ではなく、その”来夢”という白亜の姉に当たる使い魔の個人的な用事のようだし、瑞希の頭の中で、黒天を含めた鎹杜神社の使い魔たちも、放っておいて良しと頷いている様子が想像できた。


「案内でついていこか?」

「さすがに悪いので……」

「えぇて。別に」

「また、変な豆知識出されるのヤダなぁ……」


 先程の千本鳥居のこともだが、伏見と麻布留の言動も、似通ったものを感じていた。

 今まで会ってきた使い魔たちが、軒並み狐を嫌っている理由は、おおよそあの雰囲気が原因なのだろう。


「えー……おもしろいやろ? 地元トークみたいなもんやん。しかも、無料」


 この悪びれていないどころか、楽しんでいる様子もなおさら、善意として受け取りにくい。


「あ、ダメっぽい? なら、しゃーない……諦めるわ」


 うんうん。と勝手に納得した様子で、茶屋の扉を開けた。


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