表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
#バズかいま ~ 知らない間に使い魔がバズってました!? ~  作者: 廿楽 亜久
京都編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/47

42話 おいでなさいませ! 伏見様!(前編)

 千本鳥居を越えた先。

 目森たちは、ひと際、人の集まっている場所に目をやった。


「アレじゃない? 願い事が叶うかによって、石の重さが変わるってやつ」


 願い事によって、石の重さが変わるという”おもかる石”。

 瑞希たちもやってみようと、目森がその石に触れる。


「今度のVライブのチケット当選……フンっ!!」


 気合の入った掛け声と共に、勢いよく持ち上がる石。


「フンって言った……」

「残念だったね」


 それでは、重さはわからないだろ。と、瑞希も真桐も、物言いたげな表情で、目森に目をやっていた。


「持ち上がった!! 持ち上がったから、セーフじゃない!?」


 ”持ち上がる” ”持ち上がらない”の占いではなく、”重いか” ”軽いか”の占いである。

 全力で持ち上げてしまっては、占いも何もない。


「力技は良くないよ」

「最後は、実力で手に入れるって言うじゃん……!!」


 占いとは……?


 そんなツッコミは野暮だとはわかっていたが、瑞希と真桐の視線は、言葉以上にその心境を物語っていた。


「神様へのお願い事だって、『お願いします』じゃなくて、『頑張るから、応援してください』の方がいいって、パパ言ってたもん!!」


 願い事にも、挨拶からとか、氏名と住所を伝えろなど、色々こうした方がいいという話はある。


 結局のところは、祀っている神によって、作法が異なることは多いし、一概に言えないのが事実だ。

 ただ、目森のは、ただの占いの信じたい部分だけを信じるタイプのそれだ。


「ええこと言いはる、パパやね」

「へ――?」


 瑞希が呆れたように、表情を引きつらせていれば、突然、寒気を伴うような指触り。

 それに、体が包まれたと思えば、そっと頬に触れる手に導かれれれば、視界に入る特徴的な美しい耳。


「初めましてやね」


 白く、艶やかで、見るもの全てを魅了してしまうような毛並みと、常世と思えない美貌。


「伏見、様……」


 伏見稲荷大社の神代”伏見”だ。


 慌てて瑞希が姿勢を正そうとするが、体に絡みついた、複数の尻尾のせいで、うまく動けなかった。


「あ、あの……! 尻尾を離しては頂けないでしょうか……!?」


 そう声を上げれば、伏見の目はより細まる。


「ん~~? ええ心地やろ。溺れてくれはりませんの?」


 耳障りのいい言葉に、心地の良い肌触りの尻尾だが、どこか心がざわついていた。

 危険だと、瑞希の中の何かが、ざわついていた。


「あら……愚息だけやのぉて、龍に、ネズミ、犬、天狗……んふ、ふふふ……こら、愉し……」


 頬を撫でる指先に、瑞希の喉が跳ねる。


 笑っているのに、その目は、今にでも自分を喰らいそうな、妖怪の目。

 逃げないと。そう思っても、逸らせない目に、喉の奥が震えた。


「瑞希!!」


 そんな中、瑞希の腕を掴む手と声。

 真桐だった。


 真桐の腕に強く引かれながら、絡んだ伏見の尻尾から離れれば、ようやく地に足がつくような感覚がした。


「あらあら……怖がらせてしもたかな。ええ反応しはるから、愉しくなってしもうたわぁ」


 カラカラと悪気なく笑う伏見に、瑞希にようやく大きく息を吐き出すと、半ば反射的に手と首を横に振っていた。


「アンタはんやろ? 白亜がご執心なの」

「は、い……?」

「はい。なんて、自覚おありで、お熱いんやねぇ。妬けてまうわ」

「は、あ、えっと、違います……!!」


 この言葉ひとつで、振り回される感覚。

 白亜そっくりだ。


「白亜のおかげで、うちも大変助かっています。伏見様には、白亜を派遣して頂いたことに、感謝申し上げます」


 こういう時は、相手の調子に合わせないのが一番。

 白亜とのやり取りで、すっかり慣れたものだ。


 瑞希が心の中で、勝ち誇ったように頷いていれば、伏見はまた楽し気に、カラカラと笑った。


「欲しいのなら、どうぞ。お好きに納めてくれはってええよ。アレは、上等な毛皮やさかい、売って良し、夜の供に良し。あぁ……喰ろうても、美味やろなぁ」


 美しい目が、弧を描き、尻尾が心底、楽し気に揺れる。


『いいか。狐の言葉は、信用するな。特に笑ってる時。人間の常識……いや、お前の考えとは、絶対に違う。心苦しかろうが、殴って逃げろ』


 白亜が来たばかりの頃、黒天が何度も言ってきた言葉。

 あの時は、何も理解できなかったけど、伏見を目の前にして、ようやく少し理解できた気がした。


「でもまぁ、隣の芝生は青い。言う言葉もおうてね」


 背筋が震えるような美しい笑みのまま、伏見は、瑞希に手を伸ばし、その頬へ指先が触れた。


 その時だ。


「その子、他所様の子やから!!!! 大婆様!!」


 おおよそ、まともな道ではない道から、文字通り草の根をかき分けながら現れた白亜の声が響いた。


「おわっ……マジでおるやん……大婆様……」

「あれまぁ……なんや、用事がある言うてなかった? ふたりとも」


 カラカラと笑いながら、息を切らしている白亜と麻布留に目をやる伏見だが、また少しだけ目を細めた。


「今、女子トーク中やから、野暮なことはせんといてなぁ」


 瑞希の肩を抱きながら、白亜に目をやれば、白亜は頬を引きつらせ、麻布留も同じように頬を引きつらせた。


「ねぇ?」


 瑞希の首を大切なもののように抱きかかえながら、白亜に微笑む伏見に、白亜は耳をパタリと一度動かすと、大きく息を吐き出した。


「ホンマ……誰彼構わず、手ェ出して……歳考えろや。()()様?」


 全く笑っていない目で、伏見へ反抗的な態度を取った白亜に、麻布留の肩が大きく震える。


「愛い愛い」


 だが、そんな様子すら愉しげに笑うと、笑い声混じりに、尻尾をひとつはためかせると、白亜と麻布留の首元に、青い狐火の首輪が現れる。


「おわっ……!? 巻き込み事故やん!?」

「他人様、笑うなら、笑われるんは、道理やろ?」

「言ってることとやってることが、おかしいねん……!! つか、さっさと瑞希から、手ェ離せや!」

「えぇ~~……こないにかわいらしい子、なんで離さなあきませんの?」

「一ミリも興味ないくせに、瑞希に触るな。言うとるだけや。アホ」


 狐火の首輪を解きながら、白亜が睨めば、伏見も心底楽し気に目元を歪めた。


「あ、あの!!」


 ただならぬ雰囲気が漂う中、瑞希が声を上げれば、自然と集まる視線。


「場所、変えませんか……? 参拝客の皆さんの、邪魔になってますし」


 おずおずと提案する瑞希に、麻布留も指先の熱を払いながら、随分と注目されている状況に、ため息を漏らした。


 伏見稲荷大社は、使い魔がいることで有名な神社ではある。

 だが、伏見が神事でもないのに、出歩いていることも、こうして一般客らしき瑞希たちと仲睦まじい様子なのも、珍しい光景だ。

 目を引いてしまうのは仕方ない。


「まぁ、あんまりちょっかいかけ過ぎて、ネズ公に睨まれても、うっとおしいし……挨拶には、十分やろ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ