神の迷宮
更新遅れてすいません…
リアルが忙しく、ペース落とすと思いますが用事終わったら毎日に戻す所存です。
白い床に高い天井、ステンドグラスから朝日が降り注ぎ、教会の中を明るく照らしている。
次の日の朝、創也達は先日召喚された場所として記憶に新しい、教会へと案内されていた。
「それでは、始めましょうか」
鈴を転がしたような声で、聖女セイラは沈黙を破った。振り返る時に靡いた長い金髪が、光に透けて反射する。
あまりの美しさに息を呑むも、生徒達は緊張した面持ちで頷き、セイラの後に続いた。
「皆さん、準備は大丈夫ですか?」
本日数回目となる確認を行い、セイラは生徒達全員と数名の兵士達を見回した。
その言葉に創也は覚悟を決め、手にした剣を握りしめる。
他の生徒も各々の武器を手に、セイラに真剣な視線を向けて肯定を示した。
皆の様子を見たセイラは微笑み、そして手を組んで祈りを捧げるかのような姿勢をとった。
「神よ、セイラの名において道標を【転移】」
セイラの足元が光ったかと思うと、徐々に視界が白く染まる。
浮遊感が体を包み込み、平衡感覚が失われていく。
薄れる視界の中、創也は初めての転移——つまりは異世界召喚されたときのことを思い出していた。
あの召喚も、このようにして行われたのだろうか。
その問いに答える者はおらず———
異世界召喚から12日、遂に実戦が始まった。
▼ ▼
再び目を開けると、そこは薄暗い洞窟だった。
空気は湿っぽく、風はない。
創也達の足元には大きな紋章が掘られており、仄暗く発光していた。
壁は土や岩で覆われ、坑道のように作られた一本道が更に奥へと続いている。
道の終点は見えず、長い道は暗闇へと伸びていた。
「ここは、神の迷宮と呼ばれる特級ダンジョンです。」
セイラが生徒達へ説明を始める。
「この迷宮に発生する魔物は比較的弱く、倒すことで大量の経験値を得ることができます。今日1日、皆さんにはここでレベル上げと実戦訓練を兼ねて魔物と戦ってもらいます。」
事前に教わっていたことを確認し、それぞれのグループへ散る生徒達。
生徒5人に対して兵士2人が護衛についてグループを作り、各グループがある程度の間隔を保って洞窟の中を進んでいく。
洞窟内は広く、若干の下り坂になっているようだ。
一本道に見えた洞窟は、十数分も歩くと横道が現れ始め、それぞれのグループが別の道へと入って行く。
創也も自分のグループに続いて横道へ進み、兵士の指示に従って隊列を組んだ。
創也のグループは、戦闘が苦手な女子3人と創也、涼川麗、剣を携えた兵士2人で構成されている。
前衛に麗と兵士1人、中衛に創也と 《槍術師》の女子1人、後衛に《魔術師》の女子2人と兵士1人という編成で少し狭くなった道を進んだ。
横道に入ってから数分、先頭の兵士が手をかざして進行を制し、指で道の先を見るように示した。
指の示す先には動く生物が数匹。
背丈は子供ほどだが、その顔は醜悪で腹が大きく膨れている。手には錆びた剣のようなものを握り、辺りを見回していた。
余り目は良くないのか、まだこちらの存在に気づいてはいない。
「ゴブリンだ、先手をとるぞ」
兵士が後衛の女子生徒に詠唱を促し、創也達は突撃の体制に入る。
「「風よ、黒岩美奈(白井愛菜)の名において球となれ、【風球】」」
創也達は詠唱と同時に駆け出し、既にゴブリンとの距離は20mを切っている。
詠唱の声と揺らいだ空気に気付き、ゴブリン達が顔を上げるがもう遅い。
走る創也達を追い越してゴブリンの体に命中した風球は、その勢いでゴブリンの体勢を崩し、創也達に有利な状況を作りだした。
のけぞって腹を晒したゴブリンに先頭の麗が槍を横に一閃、槍と共に鮮血が舞う。
「Gugya!?」
麗は痛みで怯んだ隙を逃さず、さらに振るった槍を腰に溜め、力を込めて頭部に突きを放った。
槍はゴブリンの額に易々と刺さり、その命を刈り取る。
麗の隣に着いて走っていた兵士も、もう一匹のゴブリンに重い剣での一撃を見舞い、刺さった剣を倒したゴブリンから引き抜いていた。
2人が再び武器を構えるのと同時に、残り3匹になったゴブリンが襲いかかる。
「GyaaaAAAAaaa!」
仲間を殺されて憤慨したのか、1匹のゴブリンが錆びた剣を振り回しながら麗に突進を仕掛けた。
大きく振られる剣は一見隙だらけに見えるが、体のどこに当たっても致命傷になるだろう。
「朧よ、天原創也の名において球となれ【操朧】」
麗を援護するため、創也は手の平に朧を生成して球体に固めた後、ゴブリンの顔に向かって投げつけた。
勢いよく飛んでくる球に反応し、剣で叩き落とそうとするゴブリン。
「解除」
ゴブリンの振るう剣が朧に当たる寸前、創也は朧の形を球体から元の姿である粒子に変える。
(目へ!)
中空で分裂した粒子状の朧はその速度を落とさず、ゴブリンの目へと吸い込まれるように飛んでいく。
朧を捉えていたはずの剣筋は空を切り、その剣の遠心力に振り回されて、走る速度の落ちたゴブリンの左目に朧の粒が命中した。
目を庇うように顔を背けたゴブリンに対して麗は体勢を低くして駆け、スライディングの要領で剣を避けると同時に足を刈り取る。
麗は素早く起き上がり、地にひれ伏すような体勢で転んだのゴブリンの背中に勢いよく槍を突き刺した。
ゴブリンの体が一瞬跳ね、そして脱力した。
その目からは光が消え、腹の下から血溜まりが広がっていく。
ゴブリンの背を足で踏み押さえ槍を引き抜こうとする麗は、魔物とはいえ生物を殺したことに感傷を覚えたのか、少し疲れたようにも見える。
——しかし、戦場にそんな暇はない。
「涼川!」
槍をゴブリンに刺したまま、創也と向き合うように——つまり残り1匹となったゴブリンに背を向けるかたちで立っている麗には、背後のゴブリンが投擲の姿勢に入っていることに気付いていない。
麗は創也の声に驚き顔を上げるも、投擲を避けるにはもう遅い。
戸惑う麗に向かって、ゴブリンは振りかぶった腕を振りおろした。




