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世界樹と生きる  作者: 池田瑛
第2部 軌道エレベーター『コスモス・ツリー』
72/73

71. 17歳、目覚めた古代人

「これだけ魔導具があれば、姫との結婚の結納金で俺が一番だ。むしろ、一回の発掘で見つけ出した最高記録だ」


 アクシオスは興奮気味に、持って来た背嚢に一杯銃火器を詰め込んでいた。


 魔導具として、武器は需要があるのだろう。それは当然だろう。この部屋から持ち出しても稼働するものということが前提だ。コールド・スリープがある部屋には、武器が大量に積まれたコンテナもあったし、腐敗して砂と化した食料などが入ったコンテナがあった。食料は軍用のレーションということで保存が利くようにはなっているけれど、さすがに千年単位での保存は考慮されていなかったのだろう。


 あとは通信器機などが詰まったコンテナ。スマフォなどがあった。起動させてみたら電源は入ったのだけれど、目新しい情報はない。メールとかの履歴を見てみたけれど、なんの情報もなかった。

 電波も受信していないようで、通信インフラがもう存在していないからなのかもしれない。写メを取るくらいには使えるかな? 程度だ。


 パソコン関係にはすべてロックが掛かっていて、まったく情報を収集することができなかった。


 アクシオスは嬉しそうだけど、この部屋は見れば見るほど、私の気分は憂鬱にある。壁に書かれている、今にも剥がれ落ちそうなペイントは、『非常用電源』とか『緊急用』だとか、擦れているけれど日本語で書かれている。


 救いなのは、先ほどからコールド・スリープで眠っている人の脈拍が回復してきたことだ。

 心電を示すモニターが、一分間に一回というペースで心臓の鼓動を知らせるようになった。超長期による冷凍睡眠で、脳細胞とか壊れていなければよいのだけれど。


 一体なにが起こった? いや、起こっているのだろうか。


 彼氏とイタリヤ料理屋さんで喧嘩して、公園で、白髪のお爺さんと話して……。そして気付いたらエルフに転生していた。


 エピソード記憶はある。だけど、前の世界の自分の名前を思い出すことができない。まるで、解離性健忘症だ。前の世界のこと、日本のことも思い出せる。だけど、前の世界で自分がなんという名前だったのか、思い出せない。というか、自分が自分の名前を忘れてしまっていることにすら気がつかなかった。

 家族のことも、喧嘩をした彼氏の名前も思い出せない。日本語は問題なく今でも読めているのに……。転生が記憶に作用したのだろうか? 


「エステル、こっちの魔導具もすごいぞ! ぼーとしていないで手伝ってくれ!」


 アクシオスは二つ目の背嚢に真道具を詰め始めていた。


 私はコールド・スリープのモニターを見つめる。心電は1分間に10回まで回復していた。意外と目覚めるのは早いかもしれない。


 コンテナに入っている機器などの量が多く、私たち二人で一回ではとても持ち帰ることができない。

 

 アクシオスは、コンテナを次々と開けていき、より価値の高いと思われる魔導具を物色している。コールド・スリープの人間が目覚めるかどうかを確認してから、地上へと戻ることにした。

 未発見の遺跡を発見した功績も加味されれば、アクシオスは、ヨラムさんをおさえ、土と火の精霊に愛された民のお姫様と結婚できるそうだ。


 コールド・スリープの中の人の心拍数も70程度に戻って来た。本当に目覚めるかもしれない。ゆっくりと蓋が持ち上がっていく。蓋が開いたということは冷凍睡眠が解除されたのだろう。

 私は、中を覗き込むと、人間は目を開けていた。天井を見上げていた。


 この人にとって、ここの天井は知らない天井なのだろうか。それとも、よく知っている天井なのだろうか。


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