第六話「お魚ですわ、おほほほほ」
ハルカが風邪をひいてデュアルタウンの宿で寝込んでから3日目のこと。
仲居がハルカのために料理を部屋まで運んできた。
「この料理、栄養、多い。
仲居、食え、言ってる」
どうにか体調も戻ってきて食事もできそうになってきたため、体を起こしてテーブルの料理を見たハルカだが、その瞬間に表情が曇った。
漬物とお粥と…。
鮎の塩焼きとワカサギの天ぷらである。
山岳地帯なので渓流もあるだろう。
鮎はまだいい。
ワカサギ…湖にいるやつだ。
この盆地に降りてすぐ見た景色、この街の先は細い谷である。
「まさか、この谷の途中に湖が…?」
弱った消化器が「揚げ物かよ」と文句を言ってくる中ワカサギを食べた。
普通に美味しかった。
食事を摂ったら急に体調不良を上回る気になりに突き動かされて測量用飛行魔道具「はかるぞ」で先行して上空から測量した時のデータを見る。
居た。
湖が。
谷の横幅全部を塞ぐように陣取っていた。
街道は山と湖のわずかな隙間に通っている。
「……………。」
「どうした、料理、まずい?」
「おほほほほ、大変美味しゅうございましたわ…。
あの魚の産地が気になっただけですの…」
夜。
ガイドが寝た後で再び測量データと睨めっこする。
例の湖の場所を鉛筆で何度もぐりぐりと丸囲みしながらハルカは呟いた。
「おほほほほ…ワカサギが憎いほど美味でしたわ…」
諏訪湖
岡谷と茅野の間に、諏訪湖が谷を塞ぐように広がっている。
国道20号も中央本線も、湖と山のわずかな場所を通ることを余儀なくされている。
中央道に至ってはもう平地を諦めて山になりかけの斜面に通されている。




