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スナック菓子で契約が成立する究極の世界。  作者: 環蝸
第三章 従順で善良で悪逆な市民
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従順で善良で悪逆な市民(3)

 いや、町へと繰り出したと言っても、女性を買うためじゃないよ!? 昨日と同じく散策をするためだからね!?

 せっかくスナック菓子を補充出来たんだ。食事は宿で出来るとしても、見落としていて必要な物があるかもしれない。

 僕は市場を歩いていた。魚、野菜、果物、肉、アクセサリー、包丁、米、菓子。活気付いた空気の中、様々な物とスナック菓子が交換されていく。未だに慣れぬ光景だ。ただ、皆共通して、商品を出す側もスナック菓子を出す側もお礼を述べている。確かスナック菓子は施しのお礼、だったか。本来この国の人は必要な物を必要なだけ人から分けてもらう。そのお礼としてスナック菓子を渡すのだ。勤労し他の人に施しをした分が、巡りめぐって自分に返ってくる。現代の日本では受け入れられない考えだろう。ただ漫然としていて、お金を払えば客は神様だと言わんばかりに振る舞う。店員もマニュアルばかり重視され、個人の性質は蔑ろにされてしまう。それに比べ、この国はなんだ。生きる事、生活する事に何の足枷も無いように見える。自己の利益を優先する日本とは大違いだ。勤労をすればその分は返ってくるし、がんばりや職種に応じて国からスナック菓子も支給される。凄い事だ。

(そういえば、母にお礼を言ったのなんていつ以来だろう......)

 小学4年生くらいから母の日にさえ感謝をしなくなったから、そのくらいかもしれない。それまではチョコボール数粒とか、スナック菓子一つとかを渡していたと思うけど、ぱたりとやめた。母が弟を溺愛していると思ったからだ。

(母に我儘を言う度に、母は自分から離れぬ弟を優先した)

(僕は小学1年で一人で風呂に入ったのに、弟は小学1年生になっても一緒だった)

 まぁ、そんなもんだな。さして珍しくもない。

 そのうち昨日会話をした宝石商の前まで来た。自分には関係ないと思っていたが、スナック菓子と宝石が交換できると知れば全くの無関係ではなくなる。眼前に広がる宝石を見る。色とりどりに並んだ物の中でも、小さな翠玉を下げたペンダントが目に入った。僕は何故だか、それが気になって仕方がない。まぁ、単純に色が好きなんだけど。

「これをください」

 おじさんにスナック菓子(棒状)を渡すと、お礼とともにペンダントを渡してくれた。

「ありがとうございます!」

 本当に交換できた。

 本当だった。

 契約がなくとも交換が出来た。

 僕は歩きながらそのペンダントを身に付けた。紐の感触が気になるが、少しすれば慣れるだろう。これをお守りとして、ビアンカさんのためにも明日の仕事をがんばろう。

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