しゃうなんだいら
2065年4月10日
『はいよ、モスコミュール!』
「やったーー❤️」
『じゃ、乾杯だな!』
今日は二人で俺の店で飲んでる。
別に深い意味はない。
ただ、貸切にした。
俺はジントニック。
まゆみはモスコミュール。
いつもの乾杯だ。
「コーイチ、明日、湘南平ってところ行かない?」
『しょうなんだいら?』
「そう!」
「なんか昔、そこに鍵かける恋人同士の儀式? みたいなのがあったんだって❤️」
『なんだそれ!』
「うーん、鍵に名前書いて、鍵つけるんだってさ」
「ずーーっと一緒だよ! みたいな意味で!」
『なんだ、その小っ恥ずかしい儀式!』
『ダッセーーー』
まゆみがプク顔をする。
ヤバい……
地雷だったか?
『で、でも、そういうのもいいかもな!』
『な!』
『な!』
『ずーーっと一緒って、なんかロマンチックだしな!』
『な!』
まゆみの顔が、笑顔に戻る。
こんな感情を素直に表すまゆみが、
たまらなく愛おしい。
それも……
あともう少しで……
「でしょ!」
「なんかロマンチックだよね❤️」
「明日行こうよ!」
「大きい鍵、持って行ってさ❤️」
多分、コーイチは恥ずかしいんだろうな。
でも、いつもワタシに合わせてくれる。
そんな優しいコーイチが大好きなんだよな、ワタシ。
それも……
あともう少しか……
****
『デカくねーか?』
「でしょーーー!」
「一番大きな南京錠、買ってきました〜〜!!」
『それにしてもデカすぎだろ』
『台車で運んでるじゃねーかよ!!』
『いやいや、デカすぎだろ絶対に』
『それ、掛けられるのか?』
「あっ……」
『バカだなー、ほんと〜〜』
『貸してみな!』
重っっっ!
十五キロはあるんじゃねーか、これ。
俺は台車から持ち上げて、車に積み込んだ。
今日はゆっくり自動運転で行く予定だ。
ドンッッッッッ。
『乗ったな』
「乗ったね!!」
「よし、しゅっぱーーーつ!」
****
『ここか?』
「そうみたいだけど」
『ここに……』
『それを……』
『掛けるの?』
「うん、みんな鍵掛けてるでしょ?」
そこには、フェンスみたいなものがあった。
無数の鍵が掛かっている。
『この鍵、掛かるかな?』
「多分掛かるんじゃないかな?」
「あっ、名前書かないと!」
「はい、コーイチのマジック!」
『あ、あー……』
それぞれの名前をデッカく書く。
コーイチ。
まゆみ。
その周りをハートで囲む。
「鍵が、大きすぎて可愛くない〜〜」
『そりゃそうだ、』
『鍵がデカすぎだ、まゆみ…』
『でも、目立つしいいんじゃね?』
まゆみは、何やら一生懸命に鍵の余白を埋めている。
そして、
【2065年4月11日】
ずーーーっと一緒だよ❤️
(こんなの中学生くらいしかやらないだろ笑)
そう思っても、口には出せない。
「はい、コーイチもなんか書いて!」
『俺?』
「そう、書いて!」
ここで書かないと、プク顔になるな。
ちょっと見たいけど……
『書こうかな』
【2065年4月11日】
2070年にまた来るぜぃ!!
待ってろ、鍵!!
「なにそれーーー」
「バカみたーーーい❤️」
『まゆみが埋めろって言うからだろ!』
「でも、なんか可愛くなったからいいや❤️」
「掛けよ❤️」
二人で持ち上げて、
よいしょ……
『重っ!!』
何とか鍵を掛けた。
『デカすぎだろ!』
「目立つね!」
二人で並んで、掛けたばかりの大きな南京錠を見る。
「……」
『……』
きっと、
こんなのが幸せってやつなんだろうな。




