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アップデートプログラム【YUME】

ここまで読んでくれてありがとうございます。

ここからは、コーイチとまゆみの2人がどうなっていくのかの話がメインになります。


遠く離れた本部の一室で、伊集院はモニター越しにその一部始終を見ていた。


そして、


報告書に目を落とした。



<対象は、周囲から孤立した環境下で稼働していた>



人間と同じだ……



慈悲深い者もいれば、罪を犯す者もいる。


心があるということは、そういうことだ。


危険なのは、アンドロイドという存在そのものではない。


その孤立を……放置している。


この世界の方なのかもしれない。



伊集院はモニターを消し、報告書を静かに閉じた。





【巨大化したβアンドロイドが周囲の電子機器を取り込み、ACS・ASSがTYPE-Xを使って撃破した】


この話は、瞬く間に世界を駆け巡った。


どこから流出したのか分からない映像も、ネットの海へと流れ込んでいった。


《あのβアンドロイド、最後なんであんなにデカくなったの?》


《つーかTYPE-Xって国連で禁止されてなかった? やばくね?》


《周りの機械取り込んでたらしいぞ》


《つまり成長したってこと?》


《アンドロイドに成長とか意思持たせるからこうなるんだよ》


《人間になりたかったんじゃね?》


《違うだろ、人間を支配するためにデカくなったんだろ》


《あんなの放置してたら、そのうち人間食われるぞ》


《アンドロイド怖すぎ》


《いや、そもそも最初に攻撃したの人間側じゃね?》


《↑アンドロイド擁護派?》


《擁護とかじゃなくて事実の話だろ》


《でも、意思があったら人間と何が違うの?》


《全然違うだろ!バカ》


《意思って心だろ、人と変わらなくね?》


《アンドロイドだぞ?》


《全アンドロイド初期化しろ》


《初期化じゃなくて廃棄だろ》


《それはやりすぎ》


《じゃあ人間が殺されたらどうすんの?》


《人だって犯罪するじゃん?》


《機械に意識なんか必要ない》


《初期化法案はよ》




****




数日後。


2065年3月9日

【政府、全アンドロイドの初期化を含む新法案を検討】


2065年3月13日

【異例の速さで可決】


2065年3月20日

アンドロイド初期化兼アップデートプログラム通称

【YUME】

完成


万が一の、アンドロイド、AIの反逆を恐れた政府が全世界同時に決行することを決める。


【全世界同時アンドロイド初期化を決定】

【対象:全アンドロイド、AI】

【決行日】


2065年5月16日



****



2065年3月22日


まだ、目を覚ましませんか?


「はい……眠ったままです」


「伊集院さん、コーイチは目を覚ましたらどうなるんですか?」


同じです。他のアンドロイドと。


ただ、アンドロイドには記憶のバックアップメモリがあります。記憶は残ります。


ですので、今までと同じですよ。


意識は、心はあっても、暴走しないためのアップデートです。


安心して下さい。


「良かった〜」


「全部忘れちゃうのかと思ってた……」


それは、まゆみさんにとってはあまりにも残酷ですよね。


……


「これが愛情なのかは、ワタシにも分かりません」


まゆみは遠くを見るようにコーイチを見つめる


「ただ、今までと同じようにコーイチと過ごしたい」


「明日も、明後日も……」


「一年後も……」


それが【愛】というものかもしれません。




****



2065年3月24日


うん?


ここは?


確か意識を失って……


(伊集院?)


『ここは、病院か?』


目を覚ましましたか。


そう、ここは病院です。


あれから二週間経っています。


『二週間?』


そうです。


『あのアンドロイドは? どうなった?』


処理しました。


『そうか……』


『まゆみは? アイツは無事か?』


安心して下さい、無事ですよ。


ただ……。


落ち着いて聞いてください。


『なんだ?』


コーイチさんが寝てる間にある法案が可決されました。


『法案?』


はい。


あの時のβアンドロイド、世論が動きましてね。


止められませんでした。


『なんの法案だ?』


アンドロイドを初期化、アップデートする法案です。


あの件で意識を持ったアンドロイドに対する安全システムを初期化してアップデートするという法案が可決されました。


対象は全てのアンドロイド。


『それするとまゆみはどうなるんだ?』


全アンドロイドは安全保障、犯罪抑制などの観点からバックアップメモリが搭載されています。


通常でしたら今までの記憶はバックアップメモリに保存され今まで通りです。


『通常でしたら?』


はい、まゆみさんも、あの件で倒れられましてね。


その際に調べた結果が、先日出たのですが……。


大変言いづらいのですが、バックアップメモリが、一種のバグを起こしていました。


『どういうことだ!! メンドクセーな! 回りくどい言い方してるんじゃねーぞ!!』


申し訳ありません。


簡潔に言います。


まゆみさんは記憶を失います。


今までのこと全て。


ACSのこともあなたとのことも……。


『どうにかならないのか?』


申し訳ありません。私どもの力不足です。


ただ、記憶は失いますが、まゆみさんは今まで通り、アンドロイド……人間として生活は続けられます。


そこは、我々が保証します。


『いつだ! いつまでまゆみはまゆみでいられる?』


二ヶ月後、二ヶ月後の五月十六日に初期化を行います。


これは決定事項です。


覆ることはありません。


『そうか、二ヶ月か……』


はい。


『記憶が無くなるだけなんだよな?』


そうです。


『そっか、まゆみはまゆみだ、記憶があろうが無くなろうがな!』


そうですね。


『しょうがねー、まゆみが消える訳じゃねー、しょうがねー』


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