24.魔導書12
本日二度目の投稿です。
王女サマ、可哀そうなコね。だれにも愛されていないのね。
そうね、確かにうつくしいわ。でも、内面はどう? 中身は好きになってもらえているのかしら?
たとえば、王女サマ、アンタが今もしかして病に倒れたとするわね。だったら、みんな見向きもしなくなっちゃうんじゃない? だって、面倒だもの。
でも、リディアは違う。どんな面倒ごとを抱えていても、どんな障害があっても乗り越えて見せるってルーファスは言うんだもの。リディアといっしょになれるんだったら、どんなことだってへっちゃらだって。たいしたことないって。そして、きっとそれはジェイラスだって、ギルバートだって同じよ。
そしてね、リディアだってそうするわ。
セシリアもそうよ。現に、ギルバートのために薬まで作っちゃうんだもの。それでもって、ジェイラスの不調だってなおしちゃうんだもの。
面倒ごともね、いっしょに乗り越えていこうって思えるのが愛よ。都合が良いときに心地よい言葉を連ねるのは違うのよ。だって、自分の思い通りにしようってだけだもの。
大体、アタシ、怒っているんだからね!
誘拐なんてとんでもないことをされたけれど、王女サマに反撃する良い機会だわ!
どんだけリディアが傷ついたと思っているのよ。ただでさえ聖女だ何だって勝手な期待を背負わされていたってのに。
リディアが頑張っている間、アタシは話を聞くしかできなかったのよ!
アタシは奇跡を起こしたの。
棚の上に雑に置かれたとき、表紙が三分の一くらいはみ出ていたのよ。
ほら、アタシって本じゃない? 動くことなんてできないハズなのよね。
でもね、がんばってがんばって、なんとか、棚の上から落っこちることに成功したのよ!
うりゃあ! ヒップアタァァァーック!
アタシのすんばらしい背表紙の角がゴンって当たったのよ。王女サマの足に。
チッ! 小指を狙いたかったわ! 甲にサクレツしたってだけでも奇跡なんだけれどね。
ルームシューズの柔らかい布地に多少の衝撃は吸収されたけれど、王女サマ、かん高い悲鳴を上げていたわ。
そりゃあ、そうよね。アタシのエレガントでセクシーな攻撃に敵うモノなしよ!
もちろん、何事にも代償は必要とされるわ。
アタシの背表紙はちょっぴり装丁がハゲちゃったの。
いいのよ! だって、ようやっと一矢報いてやったのだもの!
こらぁぁぁぁ! うちのリディアになにさらしとんじゃぁぁぁぁぁ!
ちなみに、後でリディアが可愛らしくデコってくれたわ。あら、アンタ、なかなかセンスあるじゃない。気分はアゲアゲよ!
「なんだって言うの! なんで落ちてくるのよ! こんなの、燃やしてやるわ!」
王女サマはベソをかきながらアタシを掴んでずんずん外へ出たわ。あら、ヤバい。これは本格的に火を使うつもりみたい。
ああ、燃やされちゃう!
でもね! オネエはしぶといのよ!
なすすべもなかったアタシに救い主が現れたの!
「お待ちください、王女殿下!」
リディア?! なんでアンタ、こんなところに来ちゃってんのよ!
もちろん、アタシに声が聞こえたってことは、魔導書に触れたってことよ。ふたりはもみ合いになったわ。アタシの取り合いでね!
「わ、わたくし、ワガママ令嬢になりますわ!」
はァ?!
それは回避したんじゃ————。
「わたくし、我を通します。必ずや、魔導書を取り戻します!」
ア、アンタってコは!
大好きよ!
「誰か! 狼藉者よ! ひっ捕えて!」
ぎゃーっ! 時代劇でおなじみの言葉じゃない!
逃げて、逃げて、リディア!
でもね、リディアも単身で敵地に乗り込むほど無謀じゃなかったのよ。ほら、リディアって聖女じゃない? つまりね、聖獣をお供に連れて来ていたのよ。まあね、王宮の兵士たちも聖獣には腰が引けるってものよ。兵士どころか暴漢無頼漢ですらも、聖獣サマの神々しさの前にはひれ伏すわよ。アンタたち、怖い者知らずじゃなかったの?
黒鶏にはね、「凶暴で神をも蹴飛ばし突く」なんていう設定があるのよ。
そんなのいつどこで出て来るってのよ! どうでもいいわよ!
プレイヤーたちの間ではそう言われていたわ。
でもね、実際にその設定を目の当たりにしたわ。
カレは番犬ならぬ番ニワトリになったのよ。もちろん、リディアのね。ばったばったと蹴散らしたわ。セシリアに神託のことを聞いたけれど、そりゃあ、神サマも蹴飛ばされるし突かれるわよ。なんなら、むしっちゃうわよ。いやだ、コワイ。
あ、もしかして、神様が神殿に神託を下ろしたのって、黒鶏がお尻をつついて、じゃない、お尻を叩いたからかしら。ううん、そりゃあ、オラクルしちゃうわよね。痔になったらタイヘンじゃない! 座ったとたん、ぎゃっ!てなもんよ。
ちなみに、黒鶏はエクランドって名付けたらしいわよ。格好良いわよね。
ヒョウはヒースコート。
リディアとスイーツ食べたり遊んでいるときは、大きな猫ちゃんくらいなものらしいのよ。戦うとなったらすごいわね。身体能力を活かして縦横無尽よ。体中バネよ。
ゴロゴロ鳴る喉からは威嚇のオソロシイ唸り声が発せられているわ。
え、アタシがなんで見ることができているのかって?
それはね、ワンちゃんの身体に触れていたからよ。そうしたら、ワンちゃんが見ているものが見えて聞こえているものが聞こえているってワケ。さすがは聖獣サマよね!
ワンちゃんはね、始終リディアの傍にいて兵士たちを威嚇していたわ。もちろん、誰も近寄れないわよ。
リディアは縦横無尽に暴れる聖獣に怯える王女サマが手を引っ込めたのを幸いに、アタシを取り戻していたの。
残る聖獣の天馬ちゃんの姿が見えないわね。お留守番かしら。あのコ、寂しんぼうの恥ずかしがり屋らしいから。
なあんて、思っていたらさ。
空の彼方から登場しましたよ。
白馬に乗った王子ならぬ、天馬に乗ったルーファスが! 抜身の剣をひっさげて!
わーお!
ド派手!
奇跡を起こしてやったわよ! フフン。
見たか! アタシのエレガントでセクシーな攻撃を!
って思ってたのに、ちょっとちょっとォ、最後の最後にド派手に登場して見せ場をかっさらっていってくれちゃって!
でも、好きなコを助けにやって来るって王道だもんね!
イイわ、今回は譲るわ。




