22.魔導書11
本日二度目の投稿です。
ゲームではね、誘拐事件が起きるのよ。プレイヤーの行動によって、回避も可能よ。だから、それを助言したの。
アタシのアドバイスに従って、厳戒態勢を敷いているからリディアは無事だわ。
でもね、違う者が連れ去られたのよ。
それが、ア・タ・シ。
ハァァァァ?!
その日、アタシは陰干ししてもらっていたの。乾いた風がぱらぱらとアタシのスカートの裾、もといページをめくっていくのよ。
ああん、心地よいわあ。
陰干しは定期的に必要よ。気が付いたら紙魚がいる、なのよ! 急なの。待ったなしなの。オソロシイのよ!
ところがね、そんなアタシを抱えて行った人がいるのよ。リディアでもセシリアでも、ギルバートでもなかったわ。
見たことがない人だけれど、その褐色の肌から、ダヴェンポートの人間だと分かったわ。
あらやだ、なんでこんな奥まったところにまで来ているのよ。
聞いてみたいのは山々だったけれど、彼ったら、アタシを開くことはなかったの。まあね、ページを繰ったとしても、文字を浮き出させるつもりはなかったわよ。ふつうの本のフリをするつもりよ。
なんかね、ゆったりした服の中に押し込まれて移動したりしていたわ。
で、ようやっと出されたかと思ったら、アタシに触れてきたのは例の王女サマよ。アタシを連れ出した人がそう呼んでいたから間違いないわ。
「これがフェアクロフ公爵令嬢が大切にしているという書ですの?」
「そうです」
「まあ、こんな古ぼけた本をなんて、見る目がないのね。あら、白紙ね。日記でも付けているのかと思えば。こんなもので釣られるかしら」
「そ、そんな、まさか。で、でも、陰干しするくらいですから、」
ふたりでアタシに触れているものだから、会話は聞き取ることができたわ。
後は、ぱたんと閉じたアタシの装丁をなぞりながら王女サマが話すものだから、大体の事情は分かったの。
「それで、公爵令嬢は?」
「そうですの。では、結構ですわ。お下がりになって。ああ、大切にしているというのであれば、取り戻そうとするかもしれませんわ。打合せ通り、呼び出してくださる?」
あら、冷たい。せっかくアタシを持ってきたってのに。まあね、標的はリディアで、警戒が厳しいからそう簡単には手が出せなかったんでしょうね。それで、彼女をおびき寄せられそうな物を持ってこいとでも言ったのね。ほら、あれよ。返してほしくば、どこそこにひとりで来い。警察には知らせるな、ってヤツ。この世界に警察がいるかどうかは分からないけれど。
「ふう。やはり、従者ごときでは荷が重すぎましたわね。アシュリーさまは真面目一辺倒、ルドルフはそっけないことこの上ないのですもの」
あら、アンタ、ダヴェンポートの連中全員にコナかけたの?
「ランドルフ殿下はにこやかですから、いつかはわたくしに振り向いてくださるのでしょうけれど、もう待てないわ。どうしても、あの目障りな女をなんとかしなければ」
あー、これは拗らせているわね。もうね、ムキになっちゃっているのよ。
なるほどね。それで、お色気でダヴェンポートの従者をオトしたのね。ちゃんと自分の立場をわきまえている人って、そうそう甘言にはのらないものね。
んでもって、ランドルフたちがフェアクロフ公爵家にやって来たときにこっそりアタシを盗み出したってワケ。それがちょうど陰干ししているところだったのよ!
ああん、リディアとセシリアのやさしい気持ちがアダとなったのよ。
そんなふうに考えていると、王女サマもなんか回想を語り始めたわ。
「その日もわたくしはルルンタルルンタと散歩をしていたのですわ」
ちょっと待って。
るるんたるるんた―――?
このコ、アタマ、大丈夫なのかしら?
やだ、コワい!
ちょっとちょっとぉ! 相当、ヤバいコじゃない!
イヤァァァァ! 誰か助けてちょうだい!
でも、アタシのタマシイの叫びは誰にも届かないのよ。
「まったく、ひどいですわ!」
なんかいろいろ言っているけれど、結局は「アタシ、悪くない」だったわ。
えー! そこで泣いちゃうのォ?
アタシにウソ泣きもぶりっこも通用しないわよ!
「そうね、あの女の書を焼いてしまえば少しは気が晴れるかしら」
どっちがひどいのよ!
っていうか、ナニ、その低い声! そんな声も出せるのね! つか、そっちが素じゃないの?
ぎゃっ! 背表紙が破損しちゃう! ひっくり返る! 綴じがばらばらになっちゃうわ!
ちょっとちょっとぉ! 手荒に扱わないでよ。古書なのよ?!
ギャクタイ、反対!
せっかく義弟へのギャクタイを阻止したってのに!
な、なによ、その水やらろうそくの炎やらを近づけんの、やめなさいよ!
濡れちゃう! 燃えちゃう! 装丁がばらばらになっちゃう!
耐えるのよ、アタシ!
ああん、リディア、セシリア、ギルバート、助けて!
やだ、ガチで怖いわよ!
「魔導書を震え上がらせる」って単なる煽り文句だと思っていたわよ! 話が通じないコちゃんじゃない! 激ヤバよ!
誰か! 助けて!




