337、BBQのお肉は
「うわ……なんか……」
「うん……やべぇな……」
「うん……凄い絵面だな……」
日陰から出て海の方へ向かうと!海には大量の魔物と骸骨が子供達や大人達に混じって泳いでいた。
そう、ゼンとクレイが出した魔物と骸骨だ。
知らない人が見たら、子供達も大人達も魔物やスケルトンに襲われているように見えるだろう。
キャー!ワァー!と楽しそうに叫んでいるのも、絵面からは恐怖で叫んでいるようにすら見えそうだ。
いつだったか、アヒンの街でスタンピートが起きた時もこんな感じだったな……と、怪しい声と共に魔物が街に押し寄せて来ようとしていた時を思い出した。まぁ、あの時は人が混ざっていることは無かったのだが……
よく見ると、ゼンが出した魔物は器用に浮き輪やボールで遊んでいる魔物もいるようだ。子供達と砂遊びをしていたり、年上の子や大人達とビーチバレーをしている魔物もいる。ゼンが召喚した魔物なので危険はないだろうが、馴染みすぎだというほど馴染んでいる。
クレイが出した魔物は陸地にはおらず、みんな海の中を泳いでいるようだ。
今クレイ達が行っているダンジョンが海の魔物ばかり出るダンジョンだからだろうか?
骸骨なのにどの骸骨も泳ぎはとても上手なようだ。
子供達や大人達を背中に乗せて泳いでいたり、滑り台のようにスケルトンの上を子供達が滑ったり、スカイシャークに乗って空を飛んでいたりと、とても楽しそうな雰囲気だ。スケルトンの方は分からないが、子供達や大人達は楽しそうに笑っている。
「でもめっちゃ楽しそう!」
「早くネックレス配って遊ぼうぜ!」
「そうだな、リオがシーサーペントの背中を滑り降りてたのやってみたかったんだよ」
「あれ、めっちゃ良かったよ!あんなに長い滑り台初めて!」
「や、滑り台じゃ無いけどな……」
みんなを呼んでエアロを持っていない人に渡していると白い犬の獣人のケリーが、「ちょうど休憩しようと思ってたんです」と代わってくれた。
箱庭のメンバーよりはっちゃけているデビッドと、デビッドに負けないくらいテンションの高いジオ。
「二人に負けないくらい声出して行くぞー!」
「「おー!!」」
と、近くにいた子供達とランちゃんは乗ってくれたが、サンちゃんは
「部活みたいだな……」
と、苦笑いで冷静に突っ込んでいた。
◇◇◇
「疲れたー」
「いやぁ、遊んだ!遊んだ!」
「お腹空いたー!」
「リオはそればっかりだな」
「さっきなんか食ってなかったか?」
「お菓子……」
「食ってんじゃねぇか!」
「まだお腹すいでるのか?」
「ノアちゃん見当たらなかったけど、お昼の用意してくれてるのかなー?」
「おい、無視かよ」
「ハハッ……昼飯なんだろうな?」
「そうめん流しの竹を組み立ててなかった?」
「え、あれめちゃくちゃ長いのに……持ってきたのか?!」
「まぁ、魔法腕輪に入れれば大変でも無いんじゃないか?」
「そうか……前のそうめん流しも良かったけど、今回は汁は麺つゆかな?」
「ああ、前ん時はラーメンの汁みたいなのだったもんな!」
「うん、あれ美味しかったー!チャーシューもトロットロで!」
話しながら屋台なども置いている海の家の方へと歩いて行く。
「あ!ちょうど呼びに行こうと思ってたんだよ!」
噂をすればなんとやら、ひょっこりノアちゃんが顔を出した。
今日のお昼は、予想通りそうめん流しのようだ。
だが、それだけでは無い。
なんせ人数が多いのだ。
そうめん流しだけでは流すのに時間がかかって、いつまで経っても全員のお腹を満たすまでにはならないだろう。
「というわけで、屋台の方と、あとBBQの準備もしてあるよー!」
「わぁー!!BBQー!!」
「おお!いいじゃん!BBQとかめっちゃ夏っぽいな!」
「うんうん!最高!お肉大好き!」
「お肉いっぱい用意してあるから、沢山食べてね!」
「おお、ナイスー!」
「わーい!楽しみー!」
「朝からしっかり漬け込んである自信作だよ!」
「おお〜!!」
「早く!早く食べよーよー!」
「今日は何の肉だ?」
「スカイシャークだよ!」
「「……え?!」」
「……え?スカイシャーク……は、ダメだった?」
興奮気味に早く食べたいと目を輝かせていたリオ、ラン、サンは、スカイシャークと聞いて動きを止めた。
どうしたの?なんかダメだった?スカイシャーク美味しいからBBQも絶対美味しいと思うんだけど……?と不思議そうな顔をするノアに、今その肉の元持ち主と一緒に遊んでいたのだと伝えると、一瞬で顔を青ざめていた。
「うわー……私もさっき背中に乗せてもらったのに忘れてたよー!」
「うん……いつもは美味しく食べてたもんね……」
「うん……お肉は食材としか見てなかった……」
「で、どうする?」
「ん〜、どうしよう?」
「いくらなんでもスカイシャークがいる前で、そいつらの肉を食うのは……」
「うん……ちょっと気が引けるな……」
「「うん……」」
BBQはしたい、BBQには肉が必要だ。だが、その肉が問題だ。ほかの肉に変えればいいのだが、他の肉は家の魔法箱に置いてきてしまったそうなのだ。
そこで白羽の矢が立ったのは、リオの所持肉だ。
「リオ、いっつも食いもんのストック凄いしてるから出してくれよ」
ランちゃんに言われて、中身を確認したが、食べ物は確かに沢山、それはもう1人では何十年かけても食べきれなさそうなほど入っているのだが、肝心の生肉が無かったのだ。もう料理され、すぐに食べられる物ばかりが入っており、生肉はほんの少しだけしか無かった。
リオの魔法腕輪に入っている肉だけでは、かなり増えた今の家族の腹を満たす量にはとても足りなさそうだ。
どうしようかと4人で悩んでいると、ゼンがやってきた。
「飲み物はあるかのぉ?」
「あ、ゼン!」
「ふぉっふぉっ、年甲斐もなくはしゃいでしもうたのぉ」と楽しそうに笑っている。
「いや、その見た目だから、年甲斐もなくって言葉がすげぇ違和感あるわ」と、ランちゃんは苦笑いだ。
「確かにな……」
今は20歳くらいの女の子にしか見えない見た目だ。
そもそも喋り方も違和感があるのだが、年齢の話になると違和感しかない。
長寿の種族もいるので、その人達と話している時も年齢的な話になると違和感だらけだが、ゼンの場合もだ。
「あ、そうだ、ゼン相談があるんだけど……」
「ふむ?どうしたのかの??」
リオは先程のBBQの話をゼンに聞いてみることにした。
長く生きているというのなら、何かいい知恵が出てくるかもしれないと思ったからだ。
「ふむ?それの何を悩んでおるんじゃ?」
「へ?」
スカイシャークを召喚しているのに、スカイシャークの肉でBBQをするのは躊躇われて……と相談すると何に悩んでいるのか分からないと言われてしまった。
私達の感覚とゼンの感覚は少し違うのかもしれない。
「だって、自分の肉を目の前で焼かれんのって、なんか嫌じゃねぇか?」
「ふむ、そうかのぉ?まぁ、そういうならそうなのかのぉ?」
「うん……」
「しかしそんな事なら、気にする必要は無いじゃろ」
「えー……」
「ほんとに?」
「魔物じゃからのぉ」
「え、いや、魔物でもさぁ……」
「うん……」
「ふむ、魔物にとって、体とはただの器じゃ。肝心なのは核である魔石の方じゃよ」
「そ、そうなのか?」
「そう言われても、ちょっと気になるよ、ねぇ?」
「ふむ、そんなに気になるなら、本人に聞いてみるかのぉ?」
「ええ?!」
「それもそれで……」
「うん、ちょっと躊躇われるけど……」
だが、ここでいくらはなしていても解決しないので、結局本人に尋ねてみることになった。
「なんて聞くんだよ?」
「え……」
「体食っていいですか?」
「いや、言い方!」
「じゃぁ、お肉……」
「ちょ、変わんねぇって!」
「お肉美味しそうですね?」
「リオ!!!」
「それいちばんダメだろ!」
「でも、美味しいよねー!」
「うん!めっちゃ好き!」
「そりゃそうだけどな!なんて聞くか考えてたんじゃないのか?」
「あ、そうだった!」
「困ったねー」
なんて尋ねるか相談していると、ゼンが呼んでくれたスカイシャークに普通に器であった体の肉を食べてもいいかと聞いてくれた。それはもうかなりストレートにだ。こちらで相談していたのはなんだったのかと思うほど!スパッと聞いている。
だがスカイシャークはコクコクと、大して気にした様子もなく首を縦に振っている。
「ほらのぉ?気にせんようじゃよ」と、ゼンは言った通りじゃろとドヤ顔だ。
そのスカイシャークの反応にみんなホッと一安心だ。
これで心置き無くBBQを楽しめる。
「じゃぁ早速みんなを呼んで始めよー!!」
「うん!」
「おう!」
「だな!」
憂いも晴れ!まだまだ疲れた様子も見せず、元気に海を走り回るみんなを呼びに行くのだった。
ゼン:魔物の肉を本人の前で食べるのは躊躇われる……か
ふぉっふぉっ、なかなか面白い考えじゃのぉ
そんな事、考えた事も、思った事も無かったのぉ……
魔物と人との関係は、強いものが弱いものを食べる、この一択じゃからのぉ……まぁ、テイマーや召喚士などは、別の意図で魔物と関わるが、もう肉になっておる物まで遠慮しようとするとは……
やはり生まれや育ちが違う星なのが関係しておるのかのぉ?
地球……と言ったか?
魔物も魔法も存在せぬ星か、なかなかに興味深いのぉ……
いつも読んでくださりありがとうございます!




