338、これぞ夏の味
「マジかー!これぞ夏って感じだな!」
「うん、これ食べたら夏が来たなってなるよな!」
「なんで夏になってすぐに作ってくれんかったん?」
「んー!美味しー!!最高だよ」
「「「「冷やし中華」」」」
今日の屋台メニューには、なんと冷やし中華も準備してくれていた。
きゅうり、ハム、卵、トマト、オクラ、サラダチキンのような肉、エビ、ワカメ、海苔がトッピングされていて、見た目にも華やかだ。
この世界、6月から夏だ。今日はもう9月、3ヶ月も夏の期間が過ぎている。
「冷やし中華始めました!って始まるん、なんなら夏前じゃね?」
「確かに、店にその貼り紙あると、もう夏かーってなるよな!」
「わかるー!」
「なんか箱庭の中にいるとあんまり夏って感じしなくて、忘れてたんだよー」
「あー、その気持ちも分からんでもないな」
「うん、こないだお花見とかしてたしね!」
「うーわ、ほんまじゃん!」
「季節感ないな?」
「じゃぁ、箱庭の外に住む?」
「「無理無理無理!」」
「うん、今更外に住むのは……ちょっとな……」
「そうそう!中が快適すぎて、無理だよー」
「そんなに……?」
「「「うん!」」」
今日はそうめん流しの流し役はゼンの召喚した魔物がやってくれている。
猿系の魔物は器用だと言っていたが、本当に器用だし賢く、とても有能だ。
そうめんを一掴みずつ、流していってと頼むと、キッキキッキキー!と、ちゃんとその通りにしてくれている。
そうめん流しの竹の流し台の前では、やった事のある人達が、やったことの無い人達にやり方を教えてあげてくれており、「あー!」「むっずッ」「やった!」「難しいー!」「あ!取れたー!」などと、楽しそうにワイワイ言いながらそうめん流しを楽しんでいる。
今日の屋台は、冷やし中華の他に、焼きそば、お好み焼き、フランクフルト、野菜のテリーヌ、ビシソワーズ、レモネードと冷やしあめを準備してくれていた。厨房担当の人数も増えており、屋台の方も厨房担当の人達が交代で対応してくれているが人手は足りているようだ。
なのでノアちゃんも私も手伝うことは無く、サンちゃん、ランちゃん、ジオと一緒に食べる専門だ。
「今日なんで横文字系の料理、屋台なんかで出しとるん?」
ジオが、ビシソワーズを貰ってきたと、みんなに手渡してくれながらノアちゃんに尋ねた。
「食べた?食べた?美味しいでしょー??」と、自信作だと自慢げだ。
「美味しー!」と、返事をしたのはリオだ。受け取って速攻飲んでいる。
「まだ食べてないけぇ!」と、ジオは貰ってきた俺より何先に食べてとるんよ!とジト目を向けた。
ガンツ達に頼んでいたミキサーがなかなか完成せず、ビシソワーズやポタージュ、コーンクリームスープみたいなクリーミー系のスープが作れなかったそうだ。
それをゼンに相談したら、あっという間に仕上がったのだとか。
「だから、早速作ってみたの!」
「サンちゃんが持ってきてくれた野菜のは?」
「あ、テリーヌ?」
サンちゃんが配ってくれたのはキュウリやトマト、人参なんかの野菜が透明のプルプルとしたゼリー状の物で固められた物だった。
透明のつるんとしたゼリーに色とりどりの野菜が閉じ込められており、見た目にも可愛く涼しい。
「うん、それそれ!」
「食べた?食べた?どぉ??」
「美味いよ!」
「うん!プルプルに包まれてて美味しいー!」
「うん、冷たくて良いな!」
「野菜しか入ってないのにな?」
透明に見えるが、しっかりと味はついており、とても美味しい。ケルピーの骨から取った出汁で味付けしてあるそうだ。
「ジオ野菜嫌いだっけ?」
「あんまり好きじゃないけど、これは美味い」
「でしょでしょ!ちなみに、そのプルプル、スライムなんだってー」
「え?」
「な?」
「は?」
「マジ?」
「ファンタジーって感じだよねー!」
「……食べて大丈夫なのか?」
「スライムって、あのスライム?」
「なんか話には聞いてたけど、マジでいるんだな……」
「ドンテとジャスパーの長寿コンビが街で見つけてきてくれたんだよ」
ドンテとジャスパーの長寿コンビとは、ドンテという魔人族とジャスパーというエルフ族の男達の事だ。2人とも歳は100をゆうに超えており、ドンテが168歳、ジャスパーが137歳の箱庭の中では最高齢の2人だ。2人ともノアちゃんの激うまレシピに惚れ込み、厨房を担当してくれている……の、だが……
「それが1番信用出来んけぇ!」と、ジオが顔を顰めている。
「え?!」
「へ?」
「酷っ!!?」
「いや、酷っとか言うとるけど、あいつらの方が酷いけぇね!」
「え?そうなの?」
「何がだ?」
「ノアに触発されて、食えるか食えんか分からん様なもん調理しよるけぇ!」
「「「え?!」」」
「ちょっとー!私食べれないような物の調理なんかしてないよー!」
「うん、確かにな」
「うんうん」
「うん、ノアちゃんのご飯はいつも美味しいよ!」
「でしょー!」
「あいつらは違うんよ!ノアみたいに新しいレシピを開発するとか言って、訳分からんもん作りよるけぇね!」
「え……」
「なにそれ?初めて聞いたんだけど?!」と、ノアちゃんも驚いている。
「マジで、気をつけて見とってや、ヤバいけぇ!」
「……ジオはなんでそんな事知ってんだよ?」
「ほんとだ!」
「なんでー??」
ジオは最近は商業ギルドにサンちゃんと一緒に呼び出されて忙しくしているが、そういうことでもなければいつも箱庭の中にいる。
箱庭の中での仕事は気が向けば手伝ってくれているようだが、うちには優秀な奴隷達が大勢いるので特にやらないといけない仕事も無い。
なので、暇な時は昼間から……いや、朝からお酒を飲んで休みの子供達に混ざってゲームをしたり遊んでいることが多かったようだ。
「ジオ、お前そんなことしてたのかよ……」
「ええじゃん!リオの奴隷が全部してくれるんじゃけぇ」
「ダメ人間になるよ?」
「いや、今言ってた感じだと、もうなってるだろ……」
「間違いなくな……」
「ええんよ!ええんよ!2度目の人生じゃけぇね!今度はぐーたらして生きるって決めたんよ!」
「開き直ってる……」
「ぐーたらし過ぎじゃ……?」
「ぐーたらにも限度があるだろ……」
「もう、ええけぇ、続き聞いてぇや!」
「う、うん……」
「お、おう……」
そして、お酒を飲むならツマミも欲しいと、厨房にちょくちょく通っていたようだ。
その時に試作品だと、色々新しく作った物の味見もさせられていたようなのだが、中には街で見つけてきた何かよく分からない怪しい物も混ざっていたのだとか……
「よくそんなもん食べたな?」
「ほんとだよー」
「勇気あるな……」
「知らんかったんよ!知っとったら口にしてないけぇ!」
「変な味だったの?」
「意外と美味しかったり?」
「この世のものとは思えんような味だったけぇ、ノア、マジで頼むで!」
知らずに食べて大変なことになった事もあったようだ。
「そこまで面倒みきれないよー」
「はぁ?!下手したら死人が出るで?」
味見もしないまま人に……主にジオに食べさせていたようだ。味見もせんで人に食わすとか頭沸いとるけぇ!と怒っている。
「リオ!」
「へ?」
「リオの奴隷なんだから、リオが見ててね?」と、話を聞いて、自分には無理だと判断したらしいノアちゃんに言われたが……
「え……っと……約束は出来ないなぁ……」と、苦笑いを返す。
奴隷と言っても名ばかりの奴隷なのだ。あんな自由人共の管理などするのは到底無理だと、一応伝えとくねと言ったものの、ポーションのストックでも増やしておくかと考えるのだった。
そんな話をしながら、焼きそばや冷やし中華、お好み焼き、ビシソワーズにテリーヌを楽しみ、レモネードと冷やしあめの飲み比べをしてお腹いっぱいになると、午後からはゼンとクレイにスカイシャークの飛行テストに付き合って貰えないかと声をかけた。
「うむ、良いぞ」
「はい!私もどのくらい飛べるのか気になっていたんです」
と、2人とも二つ返事で了承してくれた。
スカイシャークは空も飛べる。それは召喚獣になっても変わらなかった。
なので、この機会に何処まで飛べるのか確認したい。
もし、かなりの高度まで飛行可能なら、虹の島に行くのに乗せていってもらおうと思ったのだ。
「リオ、もしスカイシャークを召喚できるようになっていなかったらどうするつもりだったのですか?」
クレイが不思議そうな顔で尋ねてきた。その言葉にゼンも同じ事を思ったのかコクコクと頷いている。
「飛行用の魔道具を作ろうかなーと思ってたよ」
「魔道具ですか!」
「ほぉほぉ、リオは魔法陣も使いこなしておるようじゃのぉ」
「そんなに使いこなせてはないけど、ゼンに貰った知識は活用させてもらってて、凄く助かってるよ」
「それは良い事じゃのぉ、ちなみに、どんな魔道具にするつもりだったんじゃ?」と、興味津々だ。
ゼンは最近、地球の文化にかなり興味を示している。
ノアちゃん、ランちゃん、サンちゃん、ジオからも色々聞き出しているようだ。
この世界では見た事も聞いたことも無いような物が沢山存在する。それを聞くのが楽しいようだ。
特にノアちゃんが作るご飯には毎日感動している程だ。
あ、あと、ゲームにもハマってたっけ?こんな面白い遊びを思いつくなど、チキューの人々は天才揃いじゃ!と、興奮していた。
確かにこの世界の遊びは、あまり発展していないもんね……
「空を飛ぶって言ったら、やっぱ絨毯だよねー!」
「……え?」
「……絨毯……じゃと?」
「そう!絨毯!」
「リオ?絨毯とはなんですか?」
「え?クレイ、絨毯知らない?」
「絨毯とは、あの絨毯かのぉ?」
「そうそう!家の床に敷く、敷物だよ」
「リオの以前居た世界では、絨毯が空を飛ぶのですか?」
「え?飛ばないよ?」
「……へ?」
「それなら、何故絨毯なんじゃ?」
「私の大好きな物語に、空飛ぶ絨毯が出てくるんだよー」
「ほぉ、またもや物語……のぉ」
「へぇ……」
「そのお話がめっちゃ良くてねー!ラーララーララーラー♫」
「あ、それは、オルゴールにもしていたメロディですね!」
「そう!クレイよく分かったね」
「よく食堂で流れてますからね!」
「ふむ、やはり興味深いのぉ」
「ふふふ」
ということで、実験開始だ。
グレイグ:(クンクン)…………
テルゾ:何してんだ?
グレイグ:んー……
アッシュ:(クンクン)いい匂いだけどな?冷やしチューカって言うんだろ?
テルゾ:ああ
グレイグ:なんか酸っぱい匂いもすんだよ……
アッシュ:酸っぱい匂い?
テルゾ:言われてみたら、するか?
グレイグ:酸っぱい匂いがするもんは、だいたい傷んでたり腐りかけだったり……
アッシュ:でも、みんな食ってるぞ?
テルゾ:そうだぜ、それにここで出たもんで傷んでたり腐ってたりした物見たことねぇぞ?
グレイグ:んー……
アッシュ:俺ちょっと食べてみるわ!
グレイグ:え?!
テルゾ:んじゃ俺も!
グレイグ:ちょ……
アッシュテルゾ:(スゾゾゾゾ)んーーーーー!!!!
グレイグ:(ビクッ)お、おい、大丈夫か…?
アッシュテルゾ:うっめぇぇぇぇぇええええ!!!!!
グレイグ:…………は?
アッシュ:マジうめぇ!!
テルゾ:美味すぎるわ!
アッシュ:確かに少し酸っぱい味もする!
テルゾ:うん、だがそれが良い!
アッシュ:やべぇ、病みつきになるわ!
テルゾ:うんうん、手が止まんねぇ!
グレイグ:そ、そんなにか……?
アッシュ:早く食ってみろよ!
グレイグ:お、おう……(パクリ)
テルゾ:どうだ?
グレイグ:んんんんんーーーー!!!!
アッシュ:うお?
テルゾ:フハッ
グレイグ:うっめぇ、やっべぇ!なんだこりゃー!!酸っぱいもんが美味いなんて!!!
アッシュ:あはは、尻尾、今までに無いほどブンブンに振ってんじゃん!
テルゾ:フハッ、耳までピコピコ揺れてんの初めて見たぜ!
グレイグ:う、うっせぇ!(ブンブンブン)
アッシュ:俺、これオカワリしてこよー
テルゾ:あ、俺も俺も!
グレイグ:待てよ!
アッシュテルゾ:ん?
グレイグ:……俺も……
アッシュテルゾ:食うぞー!
グレイグ:おう!!
いつも読んで頂きありがとうございます!




