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第7話 波紋

数日後、私は教皇からの招集を受け謁見の間に入った。そこには教皇と「三星」の面々以外は誰もいなかった。

「来たか。座るがよい。」

ラシュディ卿が私に言った。国の行く末を決める重要な軍議に私が呼ばれる、、私は少し意外だった。

「話は聞いておろうな。」

教皇の言葉に私は頷いた。

「運の悪いことにジュヌーンが重傷を負わせた使節の一人がハイランド帝国の王族の一人だったのだ。」

カミュ卿の言葉に私は愕然とした。よりにもよって王族に路上で斬りつけるとは・・・

「この事はハイランドの諜者によって皇帝の耳に間もなく入るであろう。対策を講じねばなりますまい。」

ラシュディ卿が静かに言った。すると事件の当事者であるジュヌーン卿が声を荒げていった。

「ふん、かくなる上は先手を取ってハイランドに攻め入ればよい!このジュヌーンが先手をうけたまわる!」

「そんな!」

自分の立場というものをまったくわきまえていないその発言に私は思わず言った。

「他国の使節を路上で斬殺し、その相手国になんの釈明もせずに攻め込むだなんて!いくら戦でも大義は必要だわ!」

「大義など!」

ジュヌーン卿はせせら笑って私を見た。

「いくらでもあとで作ればよいわ!どの道事を構える相手なのだからな!」

「ジュヌーン卿」

静かに場を見守っていたカミュ卿が口を開いた。

「少し立場というものをわきまえることだな。卿の短慮ゆえにこの国は今亡国の窮地に立たされることになっているのだぞ?」

「ほう!これは神将の言葉とも思えぬわ!」

ジュヌーン卿はぎらついた目でカミュ卿を睨んだ。

「戦う前から敵を恐れておられるのか?」

「ジュヌーン・・・言葉を慎まぬか。」

教皇が苦々しく言った。

「確かにハイランドと手を携える気は余にはない。しかし開戦の原因がこれでは大義はハイランドにあり我々はハイランドのみならず周辺諸国すべてを敵に回すことになるのだぞ?」

めずらしくといってもいいほど的を射た事を言うと、教皇は私を見た。

「お前はどう思う?」

意見を求められたことにまたしても驚きながらも私は言った。

「正直なところ三星の方々のお力を持ってしてもハイランドの侵攻は防ぐ事はできないと思います。」

「なんだと!?」

いきり立つジュヌーン卿をラシュディ卿が押さえた。

「理由を伺えるかな?ザナドュにこもればいかに精強を誇るハイランド軍といえどもこれを陥落させることはできないと思われるが?」

鉄壁の守備を属性とする将軍らしい意見に私は頷いた。

「確かにラシュディ様のこもるザナドュはハイランド軍といえども力では落せません。しかしラシュディ様の鉄壁の用兵も兵がいてこそのもの・・・」

「なるほど。」

さすがに私の言葉の意図を悟りラシュディ卿は小さくため息をついた。

「列国の海上封鎖は目にみえておるゆえ持久戦は不可能ということか。」

「私もクランと同意見です。」

カミュ卿が重い口を開いた。

「正直私はハイランドと事を構えることに反対でした。ハイランドを相手にするには周辺諸国を我が方につけあらゆる方向から連合軍として攻め入るほかはありません。しかし今回は・・・」

カミュ卿は言葉を区切り切れ長な瞳をすっと細めた。

「周辺諸国がハイランド側につく事は火を見るよりも明らか。我が方に勝ち目はありません。」

ローディス教国を長い間他国の侵略から守ってきた神将の言葉に教皇は色を失った。

「ではどうすればよいのだ?カミュよ。」

「事態を耳にしたハイランド皇帝からおそらく使者が来るでしょう。その口上に無念なが

ら極力従う姿勢で臨むしかありません。」

「あきれたものだ!ハイランドごときの下風にたてというのか!」

ジュヌーン卿が大声を上げると足音荒く部屋をあとにした。

この行為はある意味教皇への明らかな侮辱ともとれる。なぜなら教皇の許可を得ずに謁見の間を退出するという行為をジュヌーン卿は行ったのだから。しかし教皇自身が目の前の大きな問題に心を砕いていたので彼はジュヌーン卿の行為の持つ意味に気付かなかったようだ。

いや、正確に言うとジュヌーン卿の内心に渦巻く野心という名の黒い竜に、私を含めたこの場の人々は気付いてはいなかった。


そしてカミュ卿の言葉どおり、程なくハイランドからの使者が王都ザナドュを訪れた・・・


そして時代の歯車は誰もが思いもしない形でその回転をはやめることになる・・・



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