九十九話 アキラ
「倒せたか、かなり時間をくったな」
二人がかりで筆鬼を退場させた、しかしそれにかかった時間は少なくない。魔力が吸われ続ける状況でこれはかなりの痛手。
「おわっ⁉︎とと.....」
体内の魔力量が少なくなってきたか、儂は一瞬ふらついてしまった。
まずいな、まだアキラとかいう元凶が残ってるってのにここまで消耗したら。
「主よ、お前は魔力の質はともかく量はそこまでないんじゃから気をつけぇよ。それともう一つ、そんな主じゃが残念な知らせじゃ。あんのジジイにやられ過ぎた、我はちと休ませてもらうぞ」
「おま、こんな状況で休むのか?」
「あんな弱い小娘一人、なんとかできるじゃろ。我は十分働いたぞ」
まだ相手が残っているというのにレンセツがそんなことを言い出した。筆鬼のことがあるのは分かるが、なんかまだ余裕がありそうなところが引っかかる。
まぁ良いか、メルルナのこともある。コイツと問答をしとる時間はないか。
「分かった、一様周りは見といてくれよ。アイツの仲間とか現れるかもしれんからな」
すっかり座り込んで終わった感を出してくるレンセツにそれだけお願いしておいてアキラの方を向き直る。長い時間ほったらかしにしていたが、その間一切の邪魔はしてこなかった。だからといって逃げているというわけでもなく、大樹の前で静かに佇んでいる。
何のつもりだ、筆鬼が乱入してきた時に妨害でもしてればもしかしたら勝てていた可能性もあっただろうに。
「どうやら終わったご様子ですね、では再開いたしますか?」
「ああ、そうだな。さっさと終わらせよう」
気になることはあるが、悠長に問うている時間はない。それに無力化した後でゆっくり聞けば良い話だ。
「私はどれほど長引いても構いませんよ?」
アキラはまた白衣のポケットに手を突っ込んだ、種を出す気だ。もうジョウロはもう片方に握られている。
この距離じゃ妨害は無理か、あの根だか何だか分からん植物は危険。くそ、剣さえあれば。
「マジでレンセツには後で言ってやらんとな」
「よそ見ですか、この子たちは待ってはくれないですよ?」
儂がそんなことをぼやいている間にアキラは種に水を掛けていた。種から伸びる根が儂にめがけて伸びてくる。
ずっと思ってはいたが、どんな成長速度だよ!
「避けるか、でも意味がーーー」
「魔王様、こちらを!」
眼前まで迫る根をどうするか頭を回転させていたその時だった、ネミルの声がその場に響いた。そして、飛んできたのは、
「パパ、大丈夫!」
「ニュイ!」
ニュイが儂の手に飛んできた、そしてその手に確かな感触。
次の瞬間、儂に向かってきていた根は悉く切り刻まれる。
「助かったぞ、これでやれる。ニュイは下がってろ」
儂の剣が届いたのだ、これで殴るだけじゃどうしようもなかったあの植物を何とかできる。
「そこは植物、刃には勝てないですか。ならばせめて、密度を増やす!」
アキラはそう言い、一度に大量に種を前方へ。ジョウロも大きく振り抜き、水をかける。それによって向かってくる根は何倍にも増える。対応し切れなくする作戦らしい。
「ーーーっ!」
しかし所詮は自分で把握できない攻撃、コントロールも効いていない。
確かにそんじょそこらの奴なら対応し切れんだろうが、儂には通用せんな。そんなものをいくら増やしたところでこの剣だけですべてーーーなっ⁉︎
「ぐ、うぅ.....っ!」
儂に伸びてくる根を斬りながら進んでいた、そして気づいた時にはアキラの苦悶の顔が目の前にあった。見るとアキラの片腕を斬り落としていた。
儂が無意識に斬ったのか、ここまで簡単に刃が届くとは。気づかなかった理由はアイツの抵抗を感じなかったからだろう、うっすら思い出したがアイツは儂の剣を見ていながら体が動いてない感じだった。コイツ、戦闘慣れをして無さすぎる。
「レンセツの言っていた意味がよく分かる。おい、アキラだったか?これで終わりだろ、もう降参しておけ」
「あ、がっ!はぁはぁ、あなたはやさ、しいのでしょうね。ただ私たちにとっては残酷なのです、やはり考え方が根本から違うご様子で」
アキラは腕を押さえ、もう限界と言わんばかりのつらそうな表情でそう話す。
「こうなってしまったからには一度も二度も同じ、最期の抵抗を」
「ん、何を.....なっ⁉︎」
アキラの答えは否、腕を押さえて動くないのにこれ以上何をするのかと思ったが、斬り落とされた腕にジョウロの水をかけた。
「あ、があ、ああああああっ!!」
腕から発芽、アキラの絶叫と共に複数の根が生えてきた。
自分の体内に種を⁉︎自殺行為だろ、コイツは何がしたいんだ。.....てか、あれ不味くないか。
「もはや私の命は尽きる、頑張ってくださいね魔王様」
発芽は腕からだけではなく、腕から生えたのを皮切りに身体中から発芽、肉体を貫いて根が飛び出してくる。たった数秒で元の形がわからなくなる。
命を切ってでもやりたいことか、これが。




