九十五話 ミロの精霊魔法
「ゼリーちゃん、ミロさんってば酷いんだよ。好き勝手こき使ってさ」
ミロの一声で突然現れた風?の精霊、性別があるかは分からないが見た目は男だ。ソイツが俺になんか泣きついてきた。
これが精霊.....こき使うって、確か父さんが同じようなこと言ってたな。後、ゼリーちゃんてのは俺のことか?
「って、わあ、すごい格好。ボロボロじゃないか」
俺の姿見てなんか言ってる、この格好は俺自身も恥ずかしい。終わったらすぐ服をどうにかしなきゃな。
「おい、ミロ。この人なんなんだ?」
「ジェリねぇはそこから動かないで。ヒュー、さっさとこっち」
俺の質問に答えは返ってこなかった。後、この精霊の名はヒューとかいうみたいだ。
うわぁ、なんか俺の立場なくね?ま、良いか、初めてミロと会話できてるし。
「はいはい、精霊使いが荒いなぁ。もっと言い方あると思うけど?」
なんかすっごい愚痴を言いながらミロの方へと向かうヒュー。
よくしらねぇけど、この精霊魔法は絶対間違ってる気がする。
「お、来た来た、止めましたよーっと」
そのすぐ後、矢が飛んできた。俺は視認できなかったがヒューが止めたらしい。一様見てたけど突然ヒューの目前に矢が現れたように見えた、つまり俺には矢が飛んできたかどうかすら見えなかった。
これ、ヤバくね?っていうか、俺だけ明らか力不足じゃん。
「ジェリねぇ、ヒューは防御は優秀、でも攻撃も遠距離もない。なんなら索敵も微妙、見つけ出して決めるのは任せる」
「大まかな位置は特定できるんだけどね、正確な場所までは把握できないんだ」
「あれ、俺をあてにしてんのか?」
不意にこちらを振り返ったミロ、その口から発せられた意外な言葉。思わず聞き返してしまった。
「ジェリねぇ、アイツの場所を探す、集中。大丈夫、矢からはヒューが守る」
俺の言葉にミロはそう答えた、若干違和感を感じる言い方だがまっすぐに見つめる目はそこはかとない頼もしさを感じさせる。
なんだ、俺の妹がカッコ良すぎんだろ。
「ミロさん?あなたは何をするんですか?」
「..........」
なんかヒューが異議を唱えたが、それに対しては無言で対応した。
「分かったよ、ミロ。俺が必ずアイツを仕留める!」
俺は全力で視覚を研ぎ澄ます、その間に何度もヒューからの矢の報告が入る。だが、本体は全く見えないし、矢すら視認できないから方向も分からない。
でも、俺は妹に頼りにされてる。なら、必ずそれに答えなきゃいけない。
「見えさえすれば届かせられる、なのに方向すら分からない。どうする?」
どんだけ目に力を入れようが矢は見えない、一体どんな速度で撃ってんだよ。
「焦る必要はない、ヒューは何も通さない、でも他のことはダメダメ」
「言ってくれるじゃないか、言っておくけどこっちはミロさんの命握っちゃってるんだけど?やめちゃおっかな?」
「.....おい、ミロに矢を当てるなよ?」
なんか二人ともふざけてるみたいだがそれは許さない。その言葉は口をついて出た。
「そっかゼリーちゃんにそう言われちゃミロさんも守るしかないじゃん」
ヒューは俺の言葉にそう返す、やっぱり緊張感がない。
って、こんなことしてる場合じゃねぇ。なんとかアイツを見つけないと。どうやったら分かるんだ、周りは木ばっかで見えにくいってのに!
「ん?ていうか、あっちはどうやってこっちを見てんだ?木やら葉っぱやらで狙えたもんじゃねぇだろ」
「分からない、ジェリねぇみたいに特殊な能力があるのかも。でもそっか、てっきり射線は通ってる、と思ってたけどそうじゃないかもしれない。ジェリねぇならできる、そう思って先走ったかも」
焦りから出た言葉、それにミロが反応した。俺を連れてきたのは勘だったらしい。
狙撃ってのはそもそも高いとこからやるものなんじゃ.....いや、待てよ?
「ハハ、そうじゃん。アイツがどうやってこっちを見ているかなんてどうでも良い!ヒューって言ったな、俺を真上に飛ばすことはできるか?」
「.....え?できるけど、まさか!」
俺はヒューに問いかける、なんか気づいたみたいだが答えは聞けた。
「ジェリねぇ、待って、危ない」
「問題ねぇ、やってくれ」
ミロは止めてきたが、俺は今めっちゃ妹にカッコつけたい!
「それは、でも.....」
「ーーー早く!」
「分かった、気をつけて」
渋ったヒューは次の俺の言葉で折れた。次の瞬間、俺を浮遊感が襲う。瞬く間に地面から足が離れ、生い茂る木々よりも何倍も高い場所に到達する。
「やっぱ遠距離狙うなら高所だよな!」
正確な方向はわからないけど大体の方向はわかる、上からならそれくらいでも十分だ。
「見つけたぞ、弓がデカくて分かりやすいな!」
木々の間に明らかに人工的な突起が見えた、そしてしっかりとは見えないが人影も確認。俺はすぐに剣を振るう、確実に当たった感触がした。




