九十四話 回復役の弓兵
あ、あれ、俺どうなって?
俺は何かに包まれた状態で目を覚ます、ピンク色のヌルッとしたもので包まれていることに気づく。さっきまでの熱はもうない、むしろ心地いい感覚が.....
「ハッ!はぁはぁっ!」
次の瞬間、俺はそのピンクから吐き出される。背後を見るとそこにはニュイの姿。そして俺は自分の格好にまた驚く。
うわ、ちょっと破れすぎだろ⁉︎
「あ、ありがとな、ニュイ」
ちょっと恥ずかしいが、今はそれより大切なことがある。ニュイへの感謝、これは言っておかないと。ニュイがいなかったら多分、俺は死んでた。
「チッ、クソが!やったと思ったのによぉ、冷めることすんじゃねぇよスライムぅ!」
怒り心頭な声が聞こえてきた、そうだロイだ。俺はすぐに剣を手に取り、そっちに目を向ける。
「まぁ良い、あの魔法は何回でも撃てる上に必中!もう一回やりゃ良い話だろぉ!」
「っ!そうはさせません!」
もう一度地に手をついたロイ、それを見たルイナはすぐに阻止しようと走る。俺はさっきの恐怖で思わず目を瞑ってしまった。だが、
あ、あれ?何も起きない.....
「ぐっ!くそ、魔力切れか。やべぇ、頭がクラクラしてきやがった」
ルイナが止める必要もなかった、ロイはもう魔力がほぼ残っていない様子。多分あっちも魔力を吸われてるはずだから何とかなったって感じだと思う。
「そうですか、では覚悟してください」
その様子を見たルイナは静かにそう言い、ロイに近づいていく。
ーーーと、
「.....なっ⁉︎」
ルイナの歩みはロイに辿り着く直前で止まる、どこからともなく飛んできた矢がロイの背中を射抜いたから。
何だ、味方か?
「.....ククク、ハハハハハァッ!」
俺がそんなことを思っていたのも束の間、それは間違いだったと知らされる。ロイが矢を引き抜き、高笑いと共に立ち上がる。同時に大きな火柱が上がった。
コイツ、射抜かれたはずじゃ!
「っ!そういうことですか、今のは攻撃ではなく回復。あなたの底をつきかけていた魔力の」
「やぁっと回復したぜ、アイツがいる限りオレの魔力が尽きるこたぁねぇ!もういっちょいくぜ!」
ルイナはロイから離れることを余儀なくされる。ロイの方は今ので調子づいて炎の魔法を構え始める。しかし、
「そうか、じゃあお前は飛んでけ」
「は?何だテmーーー」
その時、突然現れた誰かにロイは吹っ飛ばされた。見るとそれは、
「み、ミロか?」
「ん、ジェリねぇ。良かった、無事」
ミロ、俺の言葉を聞いて振り返りそんなことを言う。
「お、お前今の.....」
「ああ、精霊魔法。知らなかった?」
精霊魔法、聞いたことはある。魔力を代償に精霊とかいうよく分かんないのを喚び出して、代わりに戦ってもらう。そんな戦い方をする奴らが使ってるのが精霊魔法って名前だったような。
それも気になるけどさ、ミロがお菓子食べてないのやっぱりすごい違和感。この国に入ってからミロの奴全然お菓子食べてねぇ、そこが気になって仕方がねぇ。
「まぁ、良いや。聞きたいこと、今はなし。行く!」
「ちょっ⁉︎おまっ、待て!せめて少しくらい説明しろぉ!」
いきなり現れて助けてくれたかと思いきや、突然手を掴まれて有無を言わせない勢いで走り出したミロ。コイツ、マジで訳わかんねぇ!
しばらく走ってたどり着いたのは広大な森の前、このユグドラルの周りを囲ってるって父さんから聞いていたあの森。
「こ、こんなとこきてどうすんだよ?ニュイもルイナも置いてきちまったし.....」
「あの炎の男、回復させた奴」
「ああ、あの矢を撃ってきた奴か?」
ロイに刺さったあの矢、あの状況とロイ自身の言葉からもあれが回復目的で放たれたものなのは間違いない。
って、もしかしてミロの奴!
「まさかあの矢が飛んできた方向が分かったのか?」
「簡単、精霊に探らせた」
さも当然のようにミロの口からは精霊というワード、もしかしたら世間一般だと知れ渡ってんのかもしれないが俺からすれば全く分からん。
なんかやってもらってる風なのに目線が上からだな。
「的増やす、出てこい」
次にミロがそう言うと、周りになんか強めの風が吹いてくる。
「何だ、風魔法?」
「..........」
俺が狼狽える中、ミロは微動だにせずそこに立っている。しばらくすると、ミロの正面に風が集まっていきやがて人型のなにかが現れた。
「ミロさん、少しもっとこうあるでしょ?」
聞いたことのない声と共に白い布を纏った男が現れた、緑の髪と輝く肌。人間とも魔族ともとれない神聖さ?みたいなのを放ってる。後なんか足の方が透けてる。
「魔力を払ってる、文句を言われる筋合いはない。良いから、従って」
開口一番に不満を漏らした精霊、ミロは知ったこっちゃないみたいにあしらった。




