九十三話 vs炎使い
「嬢ちゃんたちが何者かはしらねぇが、植物ばっか燃やしててちぃっと飽きてたとこなんだ。そろそろ味を変えてみるってのも悪くない」
出てきた時からやたらとやかましかった男がやる気満々で近づいてきやがった、手からは炎がチラチラ出てる。赤い髪の目つきの悪い男だ。
なんかコイツ、変な格好してんな。白の下真っ黒だし、鎖みたいなのがやたら垂れ下がってるし。確か名前はロイとかって呼ばれてたっけ。
「勝手にやるのは構わないが、私は手を貸さないぞ」
もう一人の方の、えっとグンザだっけ。ソイツがロイに対してそう口にした、こっちの髪は白い。
こっちはなんか所々破れた服着てんな、白衣は綺麗なのに。
「やっと分かったみてぇだな、手出しなんざ最初からいらねぇよ!」
「そうか、せいぜい死なないように」
グンザの方は加勢してこないみたいだ、なら相手はこっちの炎のやつだけか。こっちはルイナにニュイもいるし大丈夫だろ。
「ジェリエ様、後ろに。私が前、ニュイ様はジェリエ様の守護を」
「.....(コクリ)」
ルイナの言葉に答えるようにニュイは俺の手から離れ、前に出る。
「ピンクスライムか、おもしれぇ!」
何だアイツ、ニュイを知ってるのか?
「.....(プイ)」
俺がニュイの方を見たらあっちも気づいた、かと思いきやバツが悪そうにそっぽ向かれた。
何かやったのか?そういえば昔はずっと一緒だったが四天王に選ばれてからはあんまり遊べてなかったな。嬉しかったような、悲しかったような.....いや、今はそんなこと考えてる場合じゃねぇ!
「それにも驚きだが、お前たちは聞かないのか?この場所で起きているこの異変について、気づいていないわけじゃないだろう」
「もちろんです、しかしそれは別の方が解決してくださる。ゆえ、戦う気がそもそもなかったのですが.....」
「魔族のくせにあめぇこと抜かしてんじゃねぇよ、人間と魔族が出会えば殺し合い以外に選択肢なんざねぇんだよ!」
ロイはそう言い、徐にこっちに手のひらを向けてきた。そして次の瞬間、その手のひらから勢いよく炎が吹き出した。
ーーーちょっ⁉︎待て、いきなり!
「..........っ!」
俺は反射的に手を前に向け、目を瞑った。すぐに炎が来る、そう考えていたがいつまで経っても熱すら感じない。
「あ、あれ?」
ゆっくりと目を開ける、すると目の前には巨大なピンク色の壁が建っていた。そして俺が見たすぐ後にそれは小さくなり、やがて丸っこくなった。ニュイだ、守ってくれたんだ。
「チッ、避けてんじゃねぇよ!」
ニュイの壁の奥からロイの声が聞こえてきた。
「ん、避けた?あ、ルイナか!」
「左様です、ジェリエ様」
俺の言葉に答える声が空から聞こえる、上空に飛んで避けたみたいだ。
「なかなかの火力ですが、当たらなければ意味はないのですよ!」
「バカが!空中じゃ避けられねぇだろ、くらえ!」
空にいるルイナへ向け、手を向けるロイ。
「ーーーさせるかよ!」
「なっ⁉︎痛った!」
俺は即座に手に持つ剣を振った、奴の手に向けて。ギリギリ炎が出る寸前だった、ロイが手を引いたことで炎の噴出は防げた。
ふぅ、間に合ったか。
「ありがとうございます、ジェリエ様。では、今度は私から」
俺へのお礼の後、音もなく静かに地に降りたルイナ。それが一瞬だけ見えた後、その場から姿が消える。
「「.....え?」」
癪にも俺はロイの奴と同時にそんな言葉が漏れた。何故かは簡単だ、次に現れたのはロイの目の前だった。音すらない静かな早技。
「くそっ!なんつぅ速さだ、このっ!」
「遅いですよ、もう間に合わない」
ロイの方も多分俺と同じ見え方だったんだろう、焦った様子で手を構えようとするもルイナの方が速かった。手にいつの間にか握られていたナイフによって肩を斬られた。
は、はやっ!今までルイナの戦いはあんまり見たことなかったけど、スゲェ!
「ぐっ、うっ!この、離れろ!」
「おっと、一回だけでしたか。貴方、案外慣れてますね」
ロイは斬られた肩を手で押さえながらもう片方で目の前へ炎を出し、ルイナを追い払った。そして、その目線は何となくこっちに向いているような。
え、今アイツ俺を見た?
「テメェは強いみたいだがよ、この炎の魔法はこんなこともできるんだよ!」
そんなことを叫んだロイ、次に地面に勢いよく手をついた。
「アイツ、いったい何をし.....て?」
何だ、突然地面が熱くーーー
「あ、がああああっ⁉︎」
あつい、あついあついあつい.....っ!
「ハハハハ!頑張って守ってたとこ悪いけど、この魔法には意味がねぇんだよなぁ!」
熱いものに包まれた中、ロイのでかい笑い声が耳に届く。しかし、反応はできない。
やばい、なんか意識が.....




