九十話 魔力吸収
「か、体が重い.....」
「始まりましたね、では私はあなたが慣れる前に退かせてもらいます」
「な、待て!チッ、もういなくなってやがる」
儂が現状の理解をできていない間にアキラのそんな声が聞こえたかと思えば、顔を上げた時にはもういなかった。
しまった、逃したか。今回もジンカイの時と同じく研究所があるとみて良いだろう。だが、今はそれよりも!
「ミロ、無事か?.....ん、ミロ?」
儂と同じ様に力が抜けたのだと思い、背後にいるはずのミロに話しかけるも何も返ってこない。後ろを見ると、そこにミロの姿はなかった。
待て、ミロがいない⁉︎さっきまで間違いなく後ろについてきていたはず!
「この状況で動けたのか、それとも.....」
頭に嫌な想像が次々に浮かんでくる、だがそれと同時に否定も入る。ミロがそんじょそこらの連中に連れていかれる様なやつでは無い。
じゃあ、なんでミロはいなくなーーーいや、待てよ?
「そういえばこの感覚、魔力欠乏症と似てるな」
ミロのことを考えていた最中、突然そんなことに気付いた。魔力欠乏症、体内魔力が急激に低下した状態で結構ひどい倦怠感となる奴によっては頭痛なんかも起こる案外バカにできない病気だ。
それに似てるってことはこれは魔力が抜けてる?いや、吸われてるのか!
「う、うぅ、やっと慣れてきた」
しばらくして儂はやっと立ち上がることができた、まだ少しふらついているが動く分には十分である。
アイツのやったことが魔力を吸う類の何かならミロは大丈夫そうだ、気にしなくて良い。
「それよりも新たな問題が出てきたな、儂の魔力が尽きる前に研究所を見つけんとならんくなった!」
それがわかって安心したのも束の間、儂自身がまずい状況に気付いた。魔力が底をついたら身体は一切動かなくなり、死を待つだけになってしまう。
多分これ、この国全体だろうな、周りの植物系魔族も苦しんでる。アイツらにとって魔力は栄養そのもの、このままじゃ枯れてしまう。
「まず探すべきは.....アイツだ!」
気付いたその瞬間には地を蹴り、走り出していた。そして、頭の中で考えを巡らせたのちに一つの答えを導き出す。
それはーーー
「ふわぁ〜、おや、魔王様。今日はなんだか、いつもより眠いですね〜」
ここの管理者、ネミルに会いに行くこと。宿にまだいてくれて助かった。
コイツなら何年もここにいたはず、研究所の場所を知っているかもしれん。そうじゃなくても何かの手がかりは掴めるだろ。少し信用できるか怪しいところだが報告書は完璧だった。
「今は寝てる場合じゃない、最近この辺りで怪しい行動をしてる連中を見なかったか?」
「むぅ、怪しい行動〜ですか〜」
ネミルの反応はいまいちピンときていない様子。
「もしくは新しい建物が立ったとか!」
「そうですね〜、特には見ていない気がしますが.....ふわぁ〜、なんか本当に眠すぎる気が〜」
聞き方を変えてみるも反応は同じ、かなり眠たそうでこっちの声が聞こえているのか怪しいが答えは返ってきている。
「何かあったんですかぁ.....ッハ⁉︎おかしいな、頭がボーッと」
「おい、大丈夫か?起きろ、今は寝たらまずい!これは人間の攻撃だ、詳細は今は省くが儂が巻き込んでしまったんだ」
「ああ、なるほどぉ。そういうことですか〜、それなら眠ってる場合ではない、ですね!」
次の儂の言葉にネミルはゆっくりと身体を起こし、懐から小袋を取り出した。その後すぐに手を突っ込み自分に振りかける、中身は粉状の何かだった。
「.....ふぅ、目が覚めました。魔王様、この不肖ネミル、お手伝いさせていただきます」
粉がかかった後のネミルはさっきまでの眠そうな表情はどこへやら、瞼を開きハキハキと喋る様になった。
「お、おう」
あまりの変わり様にそんな声が出てしまった。そんなことできるなら、最初からやればよかったんじゃ。
「おや、僕のこの状態に何か言いたいことがお有りの様子。残念ながらこの粉はそんなに良いものではなく、我々バク一族に伝わる目を覚ます粉なんですがこれ使っちゃうと翌日から三日ほど眠ったきりに」
あ、結構重めの代償があったらしい。
「ところで、この国を襲っている現象。おそらくユグドラシルによるものかと」
「あの大樹が?」
「はい、正確にはユグドラシルに細工されたのでしょう。あの大樹の能力はご存知のはず、この国の魔力を豊富に含んだ土壌を生み出した言わば生命の源。それが逆転したならば」
なりほど、逆にこの国の大地を介して魔力の吸収を行うようになるってことか。すごい流暢に推測を話してくれるネミル、もはや別人。これは本格的にコイツへの考えを改める必要がありそうだ。
「では話はここまでにして向かいましょうか、この国の生態に致命的な傷を残さないように」




