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八十四話 ヘルクレナ出発

「.....ぐっ、う!なんでこんなに強いんダ」


「別に我は強くないと思うんじゃがな、決して弱くもないが」


 しばらくぶつかり合ったレンセツとエフト、結果から言うなら断然レンセツの優勢だった。レンセツはほとんど動かず吸収に専念、そのため表面上はエフトが一方的に剣を振っていた。しかし、


 時間が経つにつれて攻撃の手が止んで、息切れが激しくなったんだよな。冷気が出てる剣なんて当たったら固まりそうなもんだが、いかんせんそういう攻撃は届くより前に衝撃で防御するもんだから。


「勢いのまま振る剣が届かないことはわかっタ、やっぱり剣だけじゃお前には勝てなイ!」


 エフトはそう、悟ったように呟くと水が流れ出す方の剣をレンセツに向ける。すると次の瞬間、細長い水流が射出される。


 これまでは剣を振ってなんとか当てようとしてたが、やり方を変えたか。


「そんなこともできるのか、面白いのう!まぁ、当たらんが」


 レンセツは楽しそうにそう言ったのち、最低限の動きで避けてしまった。新しい攻撃ではあったが意外というほどではなかった。


「やっぱりナ、お前の魔法は強いけどお前自身は避けられものは自分で避けル。これはこうすることができル!」


 水流を避けたレンセツ、それを見たエフトはしてやったりといった顔で現在ちょうど水流を放出中の剣に冷気の剣を重ねる。水流は一瞬の間に凍り、細長い刃へと変わる。


 そういえば、レンセツに避けられた後も水流は出力を維持したままだった。これのためか、しかもレンセツは最低限にしか避けてない。意外と考えるんだな、アイツ。


「おぉ、怖いのう。こんな近くまで刃を近づけられるとは、しかも小娘に」


 冷気が触れた水流はレンセツのほぼ首元で固まった、だがまだ余裕そうに笑っている。


「この、まだそんな余裕を!.....は?」


 勢いを持っていたエフトの言葉が次の瞬間には驚きに染まっていた、おそらく氷の刃を振り抜こうとでもしたのだろう。


 それは無理なことだ、さっきまでもそうだがレンセツの魔法は衝撃を操ることだ。放出した後の衝撃もある程度は操ることもできる、言うなら衝撃の壁を作ることなんざ訳ない。


「ちとアドバイスじゃ、予想だにしないような攻撃は当てるまでに考える時間を与えるな。過程が予想外でも途中で結末を読まれる隙があっては意味がない。.....さっきまでだって我は剣を空で止めとったじゃろうに」


「この感覚、気持ち悪イ.....っ!動かない、カ。アタシは難しことはできないのニ、結構考えたのニ」


 レンセツの言葉を聞いてか、全く動かない剣のためのか。エフトは氷を解き、水流もおさめた。


 レンセツの方は、予想外の一撃が来ると思ってたからか分かりやすく失望してるな。


「ん、諦めるのか?まぁ、それもーーー」


「ああ、アタシじゃお前に勝てなイ。でもサ、こっちも引き下がれないんだヨ!」


 闘志を失った、しかし諦めてはいない。後ろに下がりゆっくりと双剣、その両方を空に掲げる。一度見た、咆哮(あれ)である。だが、一度目とは違う。同じように流れてきた大波、それが次に起こった巨大な吹雪に包まれ固まる。


「..........」


 水龍と氷龍の咆哮合体技、しかしこれだけではなかった、その巨大な凍りを乗り越えるようにしてさらに巨大な波が現れた。レンセツは静かに目の前のそれを見つめている。


 氷の壁を先に作って自分への攻撃を防ぎつつ、波を送ってくるか。


「それもまた破られた後じゃろうに、ちぃと小細工したところで我に通用すると?はは.....よかろう、その根性を叩き潰してやる!」


 呆れた様子で刀を構えるレンセツ、その構えは突き。波が迫る中、ゆっくりと腕を伸ばして、伸びきったその瞬間ーーー


「ぐっ、うあぁぁぁっ⁉︎」


 目の前の波は弾け、氷の壁は崩壊。巨大な破壊音とエフトの叫びが重なる。


 壊せるだけの蓄積量さえあればそれをどのタイミングで放出するか、それで簡単にこういったことができてしまう。まぁ、才能と努力の両方がないとできないから言うほど楽ではないが。


「さて、もう終わりかのう。死んではおらんだろうが、気絶は必至。それなりに楽しめた、満足としておこう」


 今回は確認するまでもなく、儂らの方へと歩いてくる。が、


「ま、待っテ、行かせなイ!」


 まさか、まだ意識を保っていた。どころかふらつきながらも立ち、剣をこっちに向けている。周りには氷の破片のようなものが浮いている。どうやら、まだやる気らしい。


 ーーーと、


「駄目ですよ、エフト♪」


 そんな声と共に巨大な炎がレンセツとエフトの間を横切った。


「どうぞ旅の方々、ここは私に任せてどうぞ行ってください♪」


 そう言いながらレンセツの前にエルズが現れた。


 なんか聞いたことあるような声だと思ったら、私情で入国拒否してきた奴じゃねぇか。コイツは火龍だったか。


「戻れ、レンセツ。出るぞ」


 気になることは多々あれど、今は助太刀が入ってくれたことを利用しよう。このまま戦わせてたらこっちの命がいくつあっても足りん。


「だ、駄目だエルズ!アタシは君のためニーーー!」


 最後にエフトが何か言っていたようだったが、全ては聞き取れなかった。これにてヘルクレナから離れた。


 あ、そうそう。レンセツ、アイツは四天王補佐だがメルルナの指南係もやっていた。あのバカみたいな威力のハンマー、それを少なくとも十数年は受け続けていたんだ。つまりはそんな簡単に吸収限界に到達しないし衝撃の蓄積が底を突くこともなかった、という訳だ。

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