八十三話 レンセツvsエフト
衝撃魔法、通称風魔法の劣化版。表面上の性能は風魔法にかなり似ているが、大きな違いは魔力によって生み出すわけではないということ。衝撃の操作、具体的には『吸収・蓄積・放出』である。
この魔法の問題は蓄積量が使い手の魔力じゃなくて肉体の強度に依存することなんだよなぁ、魔法使いが魔力以外に体まで鍛えんといかんなんざ効率が悪すぎる。使える奴自体は少なくないが、誰もこれを敢えて鍛えようとはせん。
「お前がなんの魔法を使ってんのか知らないけどサ、今ので終わりじゃないヨ?」
おっと、エフトが話し始めた。
「ほう、脅しか?くだらんこと言うとらんでさっさときぃや、こっちはそんなもんにビクつく歳はとっくに過ぎとるんじゃ」
エフトの言葉にレンセツが答える、脅しに挑発で返した。
おいおい、あんまり怒らせるようなこと言うんじゃない。余裕の態度でさばいてくれるのは良いが、それを露骨に表面に出すな。
「へぇ、そうなんダ。じゃあ遠慮なくやってやル!」
若干の怒りと共に剣を構えるエフト、次に地を蹴りレンセツに接近してきた。
「そうくるか、良いぞ!我はその方が好きだ!」
自分に向かって突っ込んでくるエフトを見たレンセツ、楽しそうに刀を構えた。次の瞬間、剣と刀がぶつかり合う。しかし、その勢いとは裏腹に周りには一切の衝撃がない。
レンセツのやつ、本格的に魔法を使い始めたか。本当に強者を相手にする時しか使わない吸収を使ったな、そういうことか。
「止められるのカ、それにこの変な感覚はなんダ?」
「ぶつかった感触がない、か?」
不思議そうにするエフト、それに対して意味ありげに問いかけるレンセツ。
衝撃の吸収、だな。蓄積量の限界、魔族の中ですらこの問題を解消できる種族は少ない。というか、ほぼ二つ以外は全滅と言って良いだろうな。それくらいにはハズレの魔法。だが、
「さぁて、お返しをしてやるとするかのう。十倍でも耐えれるか?ちゃあんと防御することを勧めるぞ!」
レンセツは困惑しているエフトにそう言い、刀を振るう。すると、今度は地を揺らすほどの衝撃が辺りを襲う。エフトは一瞬にしてその場から姿を消す。
それを使いこなせるほどの強靭な肉体を持ってる奴なら、それはどんな魔法をも凌駕する衝撃を放つことが可能.....って!馬鹿か、アイツ⁉︎
「ぐっ、くそ!馬車のこと忘れるの早過ぎだろ」
辺りを襲った衝撃はエフトを一瞬の間に見えない速度で吹っ飛ばすほどの勢いを持っていた、当然ながらこっちにも被害が出る。儂は即座に馬車へと走り、掴んで耐える。もちろん儂が、ではなく馬車が飛んで行かないように。
ま、間に合った。気づけてよかった、まさかこんなに早くこっちに被害を。そんなお構いなしになるくらいエフトに闘志が昂ったのか?
「あの娘、しっかり反応して我の刀を防御しよった。して、どうかのう?」
なんかレンセツにはもう後ろが見えていない様子。エフトが飛んで行った方向を見つめ、呟いている。その視線の先には、本来岩山が聳え立っていたが三分の一くらいになっている。流石にああなったら防御していたとて.....
ーーーと、
「よくもやってくれたナ!」
怒気のこもった声と共にエフトがこっちに飛んでくる。外傷は見受けられない、鎧にヒビが入っている以外はあまり変わっていない。
「生きとったか、流石は龍の肉体じゃのう。言っとくが、我の持っとる衝撃はまだまだある。やろうと思えば先の日にならんもんも出せる、まだやるか?」
「想定外だったガ、アタシはここで引けなイ!それにもう分かっタ、勢いを生み出すって魔法だロ。だからってどうすればいいかはわからないけド、こうすル」
今度はレンセツからの脅し、しかしまだエフトはやる気の様子。双剣を前にかざす、片方には絶え間なく水が流れ出し、もう片方からは白い霧のようなものが吹き出す。
.....待て。もう片方から出てる白い霧、いやあの感じは冷気か。てことはアイツ、氷龍種との混血か。
「遠距離は効かんから接近で、か。やってみるのは良いことじゃが、さてどうなるかのう」
レンセツはそんなエフトを見て楽しそうに言う。龍種は細かく分ければもっと種類がある、その一つが冷気を出すことができる氷龍種。そして龍は咆哮を己の武器に纏わせることができる、意味がわからないかもしれないがそもそも咆哮とは龍の特異の能力に対してつけられた名前に過ぎない。
まぁ、こういうことは深く考えるもんじゃない。違和感は無視してそういうものとして考える、それが楽だ。
「アタシの使えるのは水だけじゃなイ、この氷の力でその勢いがなくなるまで耐えてやるヨ」
「そうきたか、枯渇させれば確かに我に攻撃は通るじゃろう。無論、できればじゃがのう」




