八十一話 割り込みと連行
「チッ、肩か.....うっ!もう、動けへん」
暗鬼の取り出した刃が二回射出される短剣、その二発目の刃がシャノンの肩に刺さった。しかし肩、決定的ではない。そこで暗鬼は激しい吐き気を受けたか、口を押さえる。
「ぬ、ぬう、うぅぅぅっ!」
シャノンの方はというと、こっちはこっちで何やら呻いている。その手は肩を押さえ、まるで衝撃の痛みだと言わんばかりに。
暗鬼の方はともかく、シャノンはなんだ?今なら勝ちを宣言できるだろうに、なぜしない。
「な、なん、や。私は今動けへんのやぞ、うっ⁉︎さっさとトドメ刺しに、こんかい」
暗鬼も気づいたかシャノンに話しかけた。
「う、うぅぅぅっ!」
だがシャノンには届いていないのか呻き声は変わらず、ついには膝をついてしまった。それと同時に純白の姫君が崩壊する。
な、何が起きてる?ただ肩に一発もらっただけじゃ.....まさか、あの短剣に何かあったのか?
「ホンマになんや、お前?」
「こ、これが、痛み?うぅ、なぜ皆さんは平気で受けられていられるのでしょうか。ぐぅっ!痛い痛い痛い、痩せ我慢などできるものではありませぬぞ」
流石に異様、暗鬼も訳がわからないといった様子。シャノンは痛みを押し殺すような辛そうな声で話す。本当に痛いらしい。
痛覚が敏感なのか、もしくは戦いに出る機会が少なすぎてこういった痛みの経験がないのか?にしても悪魔なのに痛がりすぎな気もするが。
「.....ホンマに言うとんのか?」
暗鬼は吐き気が引いたか、立ち上がる。そして未だ目の前で肩を押さえ、うめき続けるシャノンにそう問いかける。
ーーーと、
「はーイ、そこまでだヨ!」
そこで別の声が割って入った、語尾が微妙におかしいこの声はエフトである。二本の剣を抜き、二人の間に進んでいく。
「エフトちゃん、今取り込み中や。さっきからずっとあっこから見てたやろ、今更出てきて何をーーー」
「うん、楽しかったヨ。でももう終わリ、今度はアタシが仕事をする番ダ。この国では喧嘩や揉め事は終わるまでは放っておくけド、終わったらしっかり取り締まるのサ」
暗鬼の言葉を遮るようにしてそう話すエフト、ずっと傍観してたのに急に出てきて仕切り出した。
「こういう場合って大体どっちもしょっぴくんだけド、君がケチをつけたんだってネ。じゃあ、君だけきてもらおうカ」
「ちょ、ちょっと待ってぇな。冗談キツイて」
さらに続けて話すエフト、なにやら暗鬼が連れていかれる展開に。たじろぐ暗鬼、シャノンはずっと肩を押さえている。
「ではやりますカ?アタシとしては暴れてくれたほうが大歓迎だけド」
「や、やらへんやらへん。龍なんかとやり合える訳ないやろ、ついてきゃええんやろ?」
龍族とは流石にやり合いになりたくないと、すぐに暗鬼は承諾する。
なんか結構あっさり連れていかれたな。
「う、うぅ、可愛い子らよ。すまない、今回は帰らせてもらう。この袋は置いていく、ちゃんと分け合うのだぞ?他に調味料も入っているがそれは親御さんにでも。では、また来る時まで待っていてくれたまえ」
ようやく痛みに慣れてきたのか、シャノンは立ち上がり袋を置いて去っていった。
悪魔だから大丈夫だろうが.....そういえば部下を連れていなかったな。他で待機させてるのか?
「まあ良いか、じゃあ行こうか。そろそろこの国からは出るとしよう」
シャノンを見届けた後、儂は周りにいるジェリエとメルルナ、ルイナ、ニュイに話しかける。
一様うちの連れが不祥事を起こしたからな、ちょっと居づらい。
「ん、もう出るのか?」
ジェリエからは結構普通な返しが返ってくる。あれ、さっきからそうだが儂何か関係が改善するようなことをしただろうか?
「はい〜、お父様の決定なら賛成ですわ。わたくしはルイナと楽しめましたし〜」
「はい、依存はありません」
メルルナとルイナの二人も承諾してくれる、ニュイはしゃべれない状態なのでもちろん答えは返ってこない。
「分かった、良いぜ。言ってみただけだしな」
二人の意見を聞いてジェリエは意見を変える、やはり言葉から鋭さが嘘のように消えている。
「じゃあ、後はアイツだけだな」
儂は目線を少し遠くのミロにやる、何やら菓子を選別しているようだがすぐには話しかけにいく。ミロはすんなり承諾し、儂らは国を出るため馬車に戻った。
暗鬼は、あれは自業自得だし置いていこう。まぁ、アイツはここまでの護衛役だった訳だから特に気にすることでもないんだが。
「ところで暗鬼のやつとは何をしたんだ?」
ヘルクレナを出ていく馬車の中、儂はふと頭に浮かんだ質問を投げる。
「普通のことでしたよ〜。お茶をしたり、お土産を見て回ったり」
儂の質問にメルルナが答えてくれる、どうやらおかしなことはされていないらしい。
ーーーと、
「そこの馬車、止まレーーー!!」
後方からそんな声が響いてきた。




