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七十八話 暗鬼vsシャノン

 もはや口論が面倒になったか、暗鬼の口から放たれたド直球な『勝負しろ』という一言。それにシャノンは承諾を選んだ。


 これ、どうなるんだ?多分暗鬼は戦えるんだろう、何せ種族が鬼だからな。だが、シャノンの方はどうだ?聞いたことはないが.....


「あ、お父様〜、こちらに暗鬼さんが来ていません?」


 暗鬼とシャノンの行く末を見守っていた儂だったが、ふと背後から聞き覚えのあるフワッとした声が聞こえてくる。間違いない、メルルナである。


「ん、メルルナか。来たぞ、そこで一悶着起こしてる奴がそうだ」


 その声を聞き、儂は振り返る。そこにはメルルナ以外にルイナ、そして何故かさっき別れたはずのエフトの姿もあった。


 ルイナは分かるが、なんでエフトまで?


「わたくしとお茶をしていた途中に突然駆け出して行かれるんだもの〜、ルイナと一緒に追ってきたの」


「私の記憶では確か、近くにいた方がシャノン男爵の名前を発した瞬間でしたね」


 メルルナとルイナがここまでの経緯を簡単に教えてくれた。


 やっぱりメルルナを放ってきやがったのか、ああいう軽い奴はこうだから。というか、何が子供に甘味を配る怪しい悪魔だ。名前をしっかり聞いた上で言いがかり付けに来てんじゃねぇか!


「アタシはネ、最初はおにーさんを追ったんだヨ。でも途中で見失っちゃっテ、後から走ってる二人を見てついてきたんダー」


 次いでエフトが口を開く。あの時儂は後ろを見ている余裕はなかった、あの時別れたと思っていたがあっちは追ってきていたらしい。


 ーーーと、


「はっはははは!!」


 突然、心の底から出たかのような愉快な笑い声が聞こえてきた。見ると、腹を抱えてバカ笑いをする暗鬼の姿が。


「チョ、チョコや。チョコの騎士って、バカにしとる。アホか、くくく.....はっふぅ〜、おっかしいで〜!それで戦えるんか?」


「それはぜひ召し上がっていただき、卿自身で確かめていただきたい。必ず()()になっていただけることでしょう」


 さっきまでのやる気がどこへやら、これでもかと笑う暗鬼。何がそんなにおかしいのかとシャノンの方に目を映してみる。すると、そこにあったのは数人の騎士の姿をした茶色い何か。いや何かは分かる、チョコだ。


 チョコの騎士、ってことか。無から生成したから魔法だろうがなんか子供の夢を具現化したような、随分と珍しい魔法だな。見た目は全部同じで持ってるのは剣一本か。


「やっぱり悪魔は何考えとるんか、いまいち分からんから不気味やなぁ。ええわ、それに関しちゃ私も条件は同じことや!」


 暗鬼は徐に袖に手を突っ込んだかと思えば、小刀を取り出した。そして、それと同時に地を蹴りチョコの騎士へと向かっていく。


「小生の親愛なるチョコレートたちよ、目の前のあの方をもてなすのだ」


 自分に向かって武器を構えて近づいてくる暗鬼を目の前に、シャノンは落ち着いた様子でチョコの騎士たちに命令を下すかのような口調で話す。それを聞いた騎士は喋ることは当然なく、しかし呼応するかの如く一斉に剣を構えた。


 全く乱れない綺麗な動き、今のは気持ちいいな。


「チョコレートがいっぱしに動いとんちゃうで!」


 騎士の一体が向かってくる暗鬼に剣を振り下ろす、が鬼の速度に間に合わず頭を跳ね飛ばされる。首を飛ばされた騎士は特に何があるわけでもなく、そのまま倒れる。


 暗鬼の奴、細いくせに良い動きをする。ちょっと疑ってたが、種族が鬼なだけはある。だが、パワーはあんまりないな。


「まずは一体目ってところやな、弱すぎやで?」


「油断はなさらぬよう、チョコレートはまだありますゆえに」


 シャノンの言う通り、まだまだ別の騎士が暗鬼を襲う。


「何体来ようが同じことや!」


 暗鬼は向かってくる騎士を楽々と避け、一体一体倒していく。


 なんか鬼の戦い方って感じじゃないな、あんなの一回で全部蹴散らすことができるはず。アイツは違う、ちまちま丁寧に減らしてる。


「流石は八鬼衆のお一人、一種類では物足りないご様子。しかし、です」


 暗鬼が次の騎士に小刀を振るうその瞬間、騎士が一歩退いたかと思いきや後ろから槍持ちの別の騎士が現れて突き刺してきた。


「ーーーなっ⁉︎」


 暗鬼は驚きと共に少しの硬直、そのせいで槍が肩を掠めた。


 また突然現れたな、あれは全部シャノンが操作してるのか?それにしては一貫性がないような気もするが。


「武器に種類があるように、お菓子に種類があるように、小生のこのチョコレートたちにも種類があるのです」


「つぅ.....やってくれた、な?」


 シャノンの説明の中、暗鬼は顔を歪め、肩に手を置く。しかし、そこで何かに気づいたかのような声を出す。


「あれ、おかしいで。さっき確かに槍にやられたはずやのに、痛ないし血も出てへん」

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