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異世界生活の基礎知識  作者: 彩瀬水流
街であれこれ。
41/57

楽しい楽しいお買い物♪

この話に合わせて、前話でギルドから手持ちとして受け取る金額を訂正しております。

混乱された方は申し訳ないですがちらっと戻って見てみてくださいませ。


 ギルドを出たわたし達は、昨日門番さんのところでもらった地図を片手にルチルに案内してもらっていた。

 まずは鞄屋さん。

 各自で持たないとやっぱり不便だしね。時間が止まるタイプのも欲しいんだけど、買えるような値段なのかな。ってかそもそもあるんだろうか。

「この広場は昼に物を売る露天商が殆どで、隣の広場が飲食関係、市場はその向こうだった」

 なるほど。

「で、ルチルおすすめの鞄屋さんはどこ?」

「あれだ。あの赤毛の小柄な男が店主をしている」

「ハーフリングか。手先の器用な者が多い種族だし、ちょっと(チャラ)いところがあるけど陽気だから接客にも向いてるし」

 納得だよね、とライが頷く。

 (チャラ)いのは創造神ライ譲りなんじゃないのかとチラッと思った瞬間、当のライがいい笑顔で見下ろしてきた。

「おるは、何か言った?」

「いぃえー、まさかー」

「なんか棒読み」

「気のせいですって。さ、早く行きましょう」

「あっ、待って。1人で先に行ったら危ないよ」

「子どもじゃないんですから」

 などと言い合っている間にしれっと横を抜けたルチルが、先に店主さんに声を掛けていた。

「ジャスパー、我を覚えているか。連れの物を買いに来た」

「おー! もちろん覚えてるよー! ほんとに来てくれたんだね、ありがたいなぁ。……っていうか多いね?」

「主も一緒に来てい……おい」

 ルチルの後ろに立っていたわたしの所にするんと近付いて来た様子は、なんか猫っぽい。身長が同じくらいで、少し身を屈めて顔を覗き込んできた彼は、人懐っこくにぱっと笑った。

「わー、あんたが主さん? 従者と違ってかっわいいねー!」

 ……ほんとに軽かった。

「ええと、ルチルがお世話になりました……?」

「あははー、気にしないで! ちゃんと商売はさせてもらってるし、3人もお客さん連れて来てくれたしね! いやーほんと可愛いなあ。俺、人間は範囲外だけどあんたなら良いかもー」

 うーん、本当に残念なくらい軽い。

 なんて思ってたら、そのセリフを聞くや否や

「……別のとこ行く?」

「そうだな」

 ティンとライの機嫌が急降下した。

「わー、待って待って、冗談だから! って言うか主さん褒められて機嫌悪くなる従者ってなんなの! あとあんたらも鞄いるんでしょ?!」

「私は従者じゃないしね」

「別にここでなくても売ってる所は他にもあるし」

「何というかすまぬ……」

「ルチルさん悪くないし」

「わー!? 待って、悪かった! 俺が悪かったから、他に行くのはちょっと待って!」

 ものすごく必死な店主さんに、ちょっと申し訳ない気持ちが。

 だって明らかな軽口にこんな過剰反応されても、ねぇ……?

「あのー。わたし、中に入れた物の時間が止まる鞄が欲しいなって思ってるんですけど、そういうのあります?」

「あるよっ!」

 不機嫌な二人は置いといて話しかけたら、ものすごい勢いで食いつかれた。

 危うく引きそうになるくらい。

「ちなみにおいくらくらいです?」

「小さ目のやつなら15~20ステラ程度かな。大きいのは天井知らずだけど、流石にあんまり大きいのはうちでも受注生産になるし、他のどこでもそうだと思うよ」

「小さいのって、どれくらい入るんですか?」

「これとかどうかな」

 と言って奥から出してくれたのは、良い感じにシンプル可愛いベルトポーチだった。

「これでもあんたら全員分の1日から2日の食料くらいなら楽に入るよ。調理済みのモン皿ごと入れて弁当箱代わりにする奴も多いね」

 なるほど、確かにそれは良いかも。じゃあそれにしよっと。

 わたしがそれを買うと伝えると、店主さんはにまっと笑った。

「で、にーちゃん達はどうする? 言っとくけど、ここらで俺んとこより上の店は無いよ」

 誇りに満ちた職人らしい目を見て、ライとティンはようやっとツノを引っ込めた。

「僕はルチルさんのやつよりもう少し大きな物が良いな。体格もあるし」

「私はサイズ的にはルチルのと同じくらいでいい。ただ、普通に腰につける物が欲しい」

 要望を口にすると、ふんふんと頷いていた店主さんは

「じゃあ、あんたにはコレ。あんたはこれがいいかな。水袋は前回2つ買ってもらってるけどあと2つはいるだろ。で、財布も全員分、と」

 ぽいぽいぽいと無造作に渡してきた。

 ティンにはワンショルダーのバックパック的な物、ライにはわたしの買った物より一回り大きい、なんとなく長財布に形の似たベルトポーチ。あとそれぞれの色彩を彷彿とさせる刺繍と飾り紐が綺麗なお財布。

「我は前にもらった財布があるが……」

 戸惑ったようなルチルの声にも笑いながら

「それは返してくれたらいいぞ。どうせならお揃いで持つのが良いだろ? 1人だけ違うの持つなんてつまらないじゃないか」

 そう言い放った。

 それは確かにありがたいんだけど……。

「中古品になるのに良いんですか?」

「それはそれで市場があるから気にしなくていいよ」

「そうなんですね。じゃあ遠慮なく……じゃない。共有用のお財布別にした方がいいよね?」

「それは織葉さんが持ってていいと思う」

「織葉殿が稼いだに近いのだから問題ない」

「大体、どうせ殆どが食糧に費やされるでしょ。君が持ってて問題あるとは思えないよ」

 ぐう。

 3人に言い負かされるわたしを見る店主さんの視線が居た堪れない。

 き、気を取り直して。

「えっと、水袋は2つじゃなくて3つお願いします。あと布袋がとても便利だったので、それも欲しいんです。穀物類用の大きめのと中くらいのを4つずつと小さいの2つ、全部で10枚くださいな」

「毎度あり。ポケット沢山買ってくれたし、全部で締めて40ステラで良いや」

 随分な丼勘定だな。助かるけど。

 40ステラを払って、その場で小袋から財布にお金を入れ替える。全員が5ステラずつ出して、共有の方で残りを払う計算にした。その方が気にしなくていいでしょ。

「今度は破損する前に買い換えるか補修するかしなよ。うちは当然補修も出来るし、買い替えの相談にも乗るからさ」

「はい、気をつけます」

 腰にベルトポーチをつけて、財布は中に入れるなという忠告に従ってベスト裏の隠しに入れた。飾り紐が丁度ボタンに引っ掛けられるようになっていて、考えられているんだなと思う。

「さ、他のお買い物行こうか」

「鞄も買えたし、先に市場行く? まだお腹空いてないよね」

「そうだねぇ。まだそこまでじゃないし、市場向かいながら、気になったのがあったらつまむくらいで良いかも……っとと」

「おるは、潰されたり流されたりしないように抱っこしとく?」

「遠慮します」

 自分の足で見て回れないなんて面白味半減するじゃないか。

「じゃあ、手繋ごう」

「えー」

 ……そんな情けない顔しないでくださいよ。なんか悪いことしたみたいじゃないか。

「………面白そうな物見つけたら振り解くかもしれませんよ」

 諦めてそう言うと、にっこり笑って手を取られる。

「その時はその時だよ」

 あ、機嫌良くなった。チョロくないか。いやでもこれって抱っこのフラグ……?


 その後は人波に流されることもなく屋台をひやかしつつ、果物を串刺しにしたもの(甘酸っぱくて美味しかったので種を取っておいた)を食べたり、ルチルが美味しかったと言う肉の串焼き(コカトリスなんだって。ファンタジー食材だ!)を食べたりして小腹を満たし、市場へと足を進めた。

 米に蕎麦、大麦小麦といった基本的な物はもちろん、キビに似た粒の小さな穀物を見つけたので、それも買ってみた。アマラというらしい。……キビっていうよりアマランサスか。

 それからオリーブ。

 ものすごく油分たっぷりで、実を割るとじわっと滲み出てくるらしい。

 精製しなくてもそのまま使えるということで、こちらも購入。

 これは2~3個庭に埋めてみようかな。新鮮なオリーブオイルっていいよね。

 なんて思ってたら見抜かれたらしく、ライに

「やりすぎないように見張っとくからね」

 と囁かれてしまったけど。前科持ちなので何も言えません、はい。

「あ、これ大豆っぽい」

「ホントだ。でもちょっとぷにぷにしてる。干してないのかな」

「これは干してもこんな感じなんだよ。表面が弾力のある硬い殻みたいになってるけど、中は水分が多くてね。喉が渇いた時にこれを噛んだりすることがあるんだ。栄養もあるし」

 とはお店のおじさんの説明。

「へぇ……」

 面白いから買っちゃお。豆乳っぽいの飲めるかもしれないし。

 買ってすぐに、一粒口に放り込む。

 なんだこの感触。プチって弾ける感じが何かに似てる。ぶどうじゃなくて。

 で、中から出てきたのは。

「うーん、豆乳っていうより豆乳ゼリー……?」

 真似して口に入れたティンが、しばらく口をもごもごさせていたかと思えば、ぺ、と皮を吐き出した。

「この皮硬い。食べられなくはなさそうだけど、口当たり悪くて美味しくない」

「そうだね」

 あっ、わかった! 楊枝刺して割るまんまる羊羹だ!

 あれは外側の膜はそもそも食べられないものだったけど、似てる。

 でもコレ一応豆乳っぽいし、豆腐もどきは作れそう。ニガリは流石に売ってないだろうから、ゼラチンか何かで固めればいいかな。

「海水から作れば?」

「そもそもこの地域で海水手に入れるのが難しそうだからねぇ……」

「確かにそうかも」


 ……なんて話してた時がありました。

「……もしかして、これ、味噌」

「ということは、この瓶の黒っぽい液体は醤油」

 この大陸の端っこ、海に面した地域の特産品を扱ってる露店があったのですよ!

「織葉さん良かったね……って聞いてないなコレは」

「完全に自分の世界に行っておられるな」

 聞こえてはいるよ!

 まぁ、醤油がちょっと甘い九州系だったり、味噌が梅干しかと思うくらい塩っぱかったりしたけど、その辺は加減すれば良いし味噌は次から自分で作るさ!

 どうやら味噌はこの世界では野菜の保存用というか、糠床みたいな扱いらしい。そりゃこの塩っぱさにもなるか。

 で、この品揃えということで、聞いてみたらありました。麹にニガリ。

 この辺りの人には使い方を今ひとつわかってもらえなかったようで、露店の女将さんは

「この地域じゃ売れなくて。でも販路ができるかもしれないから持ってこないわけにもいかないし」

 とのこと。

 ええ、もちろんしっかり買わせていただきましたとも。

 味噌、醤油、麹にニガリ、隣の同じ地域の物を売ってる店でワカメと昆布、出汁用の小魚と干した貝、お魚の干物等々がっつり購入。

 おかげでお小遣いかなり飛ばしたけど、後悔はしていない!

 すごく喜んでもらえたけど、わたしも嬉しい。

 彼らは祭りの時期にだけ行商でやってくるらしい。

 ということは、次は秋の収穫祭だね。

「ほくほく顔ってこういうの言うんだよね」

「絵に描いたようであるな」

 なんか言ってるけど、聞こえてはいるんだからね!(二度目)






お買い物って楽しいですよねぇ。


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